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超Q探偵  作者: XI
60/204

15-2

 翌日のやはり十八時頃。


 私は暗い路地に身を潜めていた。今の位置から『フートン』を覗き込めば、問題のコインランドリーが見渡せる。適当に見繕った着衣を乾燥機に放り込んできたらしいメイヤ君が戻ってきた。私達は早速、壁の陰から様子を窺う。


「『不審なやから』とやらは来ると思うかい?」

「きっと来ます。来ますですよ」

「そうかなあ」

「まあ、見ていてください。仕掛けに『ぬかり』はありませんし」


 まもなくして、『不審な輩』とおぼしき男が姿を現した。コインランドリーの出入り口の前で左右をせわしなく確認する。それから店内へと消えた。


「ほらほら、今の男のヒト、怪しいのが見え見えじゃありませんか」メイヤ君はほくそ笑む。「犯人はあのヒトですよ」

「決めつけるのは良くない」

「いいえ。犯人は絶対にあのヒトです」


 そして、『不審な輩』が店から飛び出してきた。


「逃がすもんですかっ!」


 そう言うなり、メイヤ君は『フートン』に躍り出て、勢い良く駆け出した。私はその行動の素早さに、思わず「メイヤ君っ!」と声を張り上げた。「やめなさい! 何か凶器を持っていたらどうするんだい!と彼女のことを呼び止めた。


 そんな制止の声もむなしく、メイヤ君は追いかける。出遅れながらも私も続いた。彼女は走るのめっぽう速い。あっという間に目当ての人物にまで達した。うしろから飛び付き、二人一緒に前へと倒れ込む。いち早く立ち上がったメイヤ君は、『不審な輩』の背にドンと右足を置いた。


「捕まえましたよーっ、変態さん」メイヤ君は勝ち誇ったように言う。「御用だ御用だですっ」

「メイヤ君、君ねぇ」私は吐息をついた。「あんまり無茶をしないでほしい。知っての通り、この街はあまり平和だとは言えないんだから」

「ともあれ、捕獲に成功しました。ほら、見てください。とっつかまったというのにショーツを手放さないわけですよ。まったく、しんの変態さんじゃありませんか。いい加減、握り締めていないで返してください!」


 メイヤ君が真っ白なショーツを取り返した。

 私はというと、うつ伏せに倒れている犯人の前で腰を屈めた。


「こんばんは。はじめまして。『不審な輩』さん」

「こ、こんばんは」律儀に挨拶を寄越したのは、でっぷりと太った背の低い男だった。「す、すみません。謝ります。ごめんなさい」

「謝ってもらって済む話じゃありませんよ!」


 メイヤ君がブーツの靴底で「おらおらおらぁっ」と男の背をぐりぐりと踏みつけた。「ぎゃああっ!」と醜い声を発した男である。


「やめなさい、メイヤ君。彼にも何か言い分があるのかもしれない」

「下着ドロの何を聞けっていうんですか。おらおらぁっ!」

「ぎゃああっ!」

「よしなさい。騒がしくすると近所のひとが集まってくるから」私は手を貸し、男を立たせた。「ちょっと事務所までおいでいただけますか?」

「じじ、事務所っ!?」

「安心してください。私はヤクザではありませんから」

「だ、だったら、貴方は一体……?」

「探偵です」

「た、探偵?」

「まあ、ついてきてください」

「そうです。さっさと立ち上がって、さっさと前に進んでくださいっ」


 せかすようにして、男の尻に右脚で蹴りを入れたメイヤ君だった。


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