12-2
翌日、昼間。
外に出ていたメイヤ君が戻ってきた。
彼女は新聞を眺めている私のデスクの前にまでやってきた。
「例の件ですけれど、ミン刑事いわく、秘書の女性のご実家は『魚屋』さんだそうです」
「ふむ。『魚屋』かい」
「『魚屋』さんだという情報だけで、何かわかるのですか?」
「『魚屋』だという情報には意味がない。秘書の女性にはきょうだいがいたかどうか。その点だけ、私は知りたい」
「わぉ。きょうだい、いらっしゃいますですよ。お兄様がいらっしゃるそうです。スゴいですね、マオさん。どうしてそんな見当がつくのですか?」
「さあ、どうしてだろうね」
「はぐらかさないでくださいよぅ」
「ともあれ、警察だって馬鹿じゃない」
「どういうことですか?」
「そのお兄様とやらを、警察は『洗った』だろうってことだよ」
「『洗った?』?」
「すなわち、お兄様に事情聴取をしただろうってことさ」
「えっ、そうなのですか?」
「ああ。きょうだいというのは、ある意味、伴侶よりも結びつきが強い間柄だからね。だから、普通に思考すれば、その結論に辿り着く。本件の担当はミン刑事かい?」
「だ、そうです」
「ミン刑事の性格からすると、犯行の実態を知った上で見過ごすという可能性も考えられる」
「それって、どうしてですか?」
「彼は警察の中では実質的にいっとう高い身分にあるわけだけれど、基本的には優しいんだ」
「お優しいことは重々承知しつつもりですけど……」
「こちらから、ちょっと動いてみようか」
「えっ、良いのですか? ミン刑事から正式に依頼がない以上、お金にはなりませんよ?」
「たまにはそういうことがあってもいい」
「ホント、気まぐれですね、マオさんって」




