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超Q探偵  作者: XI
42/204

10-4

 後日、トラちゃんのもとに、メイヤ君と二人でお参りに訪れた。


 トラちゃんを埋めてやったところは土がこんもりと盛り上がっている。細い木の札も立ててある。札には『トラちゃんのおはか』とあって、その字はメイヤ君自身が墨でしたためたものだ。彼女は埋めてやったときに手向けたやった、すでに枯れてしまったコスモスの花束を回収し、それをビニール袋に詰めると、新しいコスモスに取り換えた。


 メイヤ君が両手を合わせて小さく頭を下げる。私も彼女の隣に腰を下ろし、目を閉じ、合掌した。


 私は目を開けた。メイヤ君も。


「トラちゃんは本当にかわいい猫ちゃんだったのですよ?」

「そうなんだろうね」

「涙が出ます」

「君が泣いてあげるのだから、トラちゃんは幸せだと思う」

「わたしは一生、トラちゃんのことを忘れません。何があっても、忘れたりしません」

「君がそうあることが、何よりの弔いになる」

「はい」

「ダイヤを飲み込んで一目散に逃げたのは、トラちゃんからすればちょっとした『いたずら』のつもりだったんだろう。男に追いつかれたとき、トラちゃんはきっと自分からおなかを見せたんだ。おなかを撫でてもらいたかったんだ。かまってもらいたかったんだ」

「そういうリアルな想像はやめてください。どんどんどんどん悲しくなっちゃいますから」

「そうだね。すまなかった。謝るよ」

「お金よりずっと大切なものが、この世の中にはあるってことですよね?」

「うん。そうだよ。それは間違いない」

「オッケーですっ」白いブラウスの袖で涙を拭ったメイヤ君である。「しょげてばかりもいられません。ならいっそ、景気良く見送ってあげましょう!」


 メイヤ君は両手でメガホンをこしらえて、空に向かって、「バイバーイ、トラちゃーん!」と叫んだ。「ほら、マオさんも一緒に!」とせっつかれたので、私も彼女と声を合わせて、「バイバーイ、トラちゃーん」と大きな声を出した。


 すっくと立ち上がったメイヤ君に続いて、私も腰を上げた。彼女がこちらを見上げてくる。目にはまだ涙が混じっている。それでもにこっと笑って見せた。優しい女のコだ。強い女のコでもある。


「さあ、帰ろうか」

「シャオメイさんのお墓参りはしなくてもいいんですか?」


 シャオメイとは私にとって唯一だった女性の名だ。

 私が愛した唯一の女性の名だ。


「彼女の墓参りは先日済ませたからね。弔うのは来年の命日でいいよ」

「マオさんがそうおっしゃられるのであれば、何も言いません」

「そうしなさい」


 私が身を翻して歩き出すと、メイヤ君も並んでついてきた。


「肉体は墓の下に眠っていても、魂は天に召される……」


 メイヤ君は呟くようにそう言うと、私の横顔を見上げてきた。


「そうだよ」私は口元を緩めて答えた。「前にも言わなかったかな? 天国はあるんだ。私はそう信じることにしているよ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 太ったオスのねこが、私も好きなんですよ… もう動くのもめんどくさいみたいな感じで、ででんとしている、顔の大きなオスねこがかわいくて仕方ないのです。 [一言] 最近はあんまり野良猫も見なくな…
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