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超Q探偵  作者: XI
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7.『誰も悪くない』 7-1

 デスクに突っ伏して気持ち良く眠っていたらしい私は、ゆっくりと目覚め、ゆっくりと上半身を起こした。「あっ」と声を上げたのはメイヤ君である。彼女は真っ白なブラジャーにショーツ、それに黒いソックスというあられもない姿で、いままさに服を着替えているさいちゅうだった。


「ラッキーですね、マオさんは」

「何がラッキーなんだい?」

「だって、美少女のお着換えをおがめているわけですよ?」

「いいから、さっさと着替えてしまいなさい」

「そうしまーす」


 メイヤ君は私に言われた通り、ソファに置いてあった茶色いミニスカートをはき、白いブラウスに袖を通してボタンをしめた。彼女は私のデスクの前まで来ると、改めて「おはよーございます」と慇懃に頭を下げて見せる。


「おなかがすいているのです」

「じゃあ、屋台にでも行くかい?」

「それも良いのですけれど、その前に少しお話しをば」

「ん?」

「昨日の晩、ちょっとした事件に遭遇しましたですよ」

「昨日の晩って、君は私が眠ってからも行動しているのかい?」

「はいなのです」

「それはちょっとやめてくれないかな」

「心配だからですか?」

「そうだよ」

「おぉ、マオさんってば、やっぱり優しいですね」

「君もいい加減、わかっただろう? このあたりはおっかないんだ。忠告のつもりで言うけれど、夜に出歩くことはオススメできないよ」

「まあ、その旨はわかっているつもりなのです」

「本当にわかっているのかい?」

「わかっていますよぅ。さて、ではご飯を食べに出ましょうか」


 椅子から腰を上げ、私は歯を磨くべく洗面所に立った。


 私が歯ブラシを口にすると、メイヤ君もすぐ隣で歯ブラシをくわえた。二人一緒に洗面台に向かいながら歯を磨くのである。メイヤ君がプラスティック製の黄緑色のコップを口にする。くちゅくちゅぺっと水を吐いた。「はい、どーぞ」と言って、彼女はコップを私に手渡してくる。私もくちゅくちゅぺっとした。個人的にはあまりそうは思わないが、二人並んで歯磨きをする様子は、客観的に見るとそれなりに微笑ましいのではないか。



 朝の屋台に出て、食べるのはやはり粥である。メイヤ君の粥にはボイルした海老がのっていて、私の粥には梅干しがのっている。


「マオさん、マオさん」

「一度呼んでもらえれば返事をするよ」

「『リンリー』にまで足を伸ばしてきたのです」

「『リンリー』って、君はついに隣の街にまで行ってきたのかい?」

「タクシーを使って行ってきました。近所の『フートン』は隈なく回りましたので、言わば、ここいらはわたしの縄張りです。もはや、わたしは、ここいらの顔役と言っても過言ではないのです。ですので、よりテリトリーを広げてやろうと考えているという次第なのです」

「だとしてもだね」

「あ、マオさんってば呆れてます?」

「ああ。君の行動力には正直まいっている。で、その『リンリー』で何があったんだい? 事件に出くわしたみたいに言っていたように思うけれど」

「『サンキン・マンション』ってご存知ですか? 結構大きなホテルなんですけど」

「いや、知らないな。そこで何か起きたのかい?」

「集団自殺です」

「自殺なら事件とは言わないね」

「四人でチェックインして、亡くなったのは三人だそうです。なんでも、部屋で練炭を炊いていたとか」

「一人は助かったのかい」

「みたいです。その一人の行方はわかっていないみたいですけれど、考えるに、もくもくと煙に巻かれる中で死ぬのが怖くなって、部屋から飛び出したのでしょう」

「そういうことなんだろうけれど、ところでメイヤ君」

「なんでしょうか?」

「お粥の上の海老、もらってもいいかい?」

「ダメです。最後に食べようと思って取ってあるのですから」

「ふむ。まあ、梅粥も美味しいんだけれどね」

「今日はどうしましょうか?」

「どうするって?」

「仕事の話です」

「依頼が来るのを事務所で待つつもりだけれど?」

「いつもいつも思うのですけれど、どうにもマオさんって積極性に欠けますよね」

「せっかく訪ねてきてくれたのに留守中だなんて良くないことだろう?」

「じゃあ、やっぱり、わたしが営業してきますね?」

「メイヤ君」

「なんでしょうか、マオさん」

「できるだけ私と一緒にいるようにしなさい」

「えー、外を出歩かないと暇ですよぅ」

「じゃあ、とりあえず、今日は私といなさい」

「毎日そう言われそうな気がするんですけれど?」

「言うことを聞きなさい」

「はーい」


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