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超Q探偵  作者: XI
26/204

6-2

 事件後、すぐにグエン氏の住まいであるらしい古びたアパートを訪ね、私は玄関口で自らが探偵であるとまず名乗った。その上でエレクトラという女性のいまきわに偶然居合わせたことを伝えた。短髪のグエン氏の体は大きい。肩幅が広い。見るからに頑強そうな体躯だ。「エレクトラが死んだ……。それって本当ですか?」と問われ、「本当ですよ。嘘を言う理由がない」と答えると、グエン氏はぽろぽろと涙をこぼした。


 彼に「詳しく話を聞かせてください」と言われ部屋の中へ。彼はリビングの黒いソファにつくよう勧めてくれた。私とメイヤ君は二人掛けのソファに並んで座った。向かいの一人掛けのソファにはグエン氏が着く。彼はうつむき、涙を拭うべく、目元を右腕でこすった。


 グエン氏はまさかいきなり探偵が訪れるとは思っていなかったはずだが、そのことについて驚いている様子はあまり感じられない。ただ、エレクトラ氏の死を悼んでいるだけのように見える。


「察するに、エレクトラさんはグエンさん、貴方の婚約者か何かであられたのでは?」

「はい、そうです。婚約者です。それで間違いありません」


 私の隣に腰を下ろしているメイヤ君は、ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、やはりメモを構えている。この期に及んで、何をメモしようというのか。彼女にとって、メモをとるという行為は、もはや習慣なのだろう。


「エレクトラさんを殺した男について、心当たりは?」

「ありません。誰かに付きまとわれている。彼女から、そんな話を聞かされたこともありませんし……」

「だとしたら、誰が彼女を殺したのでしょうか」

「わかりません……」

「この街の警察は、あまり優秀ではない。犯人を見つけるにあたって彼らを頼ることは心許ないということです」

「だから自らを頼れ。探偵さんはそうおっしゃりたいんですか?」

「そうとまでは言いません。ただ、そこらの警察官よりは役に立つと自負しています」

「……いいです」グエン氏は小さな声でそう漏らした。「犯人を捜していただかなくても、かまいません」

「捜さなくてもいい。それはどうしてですか?」

「だって、犯人を捕まえたところで、彼女が戻ってくるわけではありませんから」

「かもしれませんが、罪人は罰する必要があるのでは?」

「繰り返しになりますけれど、犯人を捕らえたところで、彼女が私のところに帰ってきてくれるわけじゃありませんから」

「ふむ」

「話は以上です。すみませんが、もう帰ってください。私から話すことはもう何もありません」

「わかりました。引き上げましょう」


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