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超Q探偵  作者: XI
24/204

5-5

 事務所への帰路。


 早速、茶色いボルサリーノを奪われてしまった。


「えへへ。やっぱりこれがないとしっくりこないのですよ」

「やっと返ってきたと思ったんだけどなあ」

「もうダメです。絶対に返さないのです」

「『海老剥き屋』の仕事はどうだった?」

「どんな職業でも、やっぱり笑顔は大事ですね。わたしのおかげで売り上げが伸びたって、ご主人は喜んでくださいました。いい社会勉強になりましたですよ。跡取りの息子さんには悪いことをしてしまいましたけれど」

「それはやむをえなかったということだね」

「そう考えて、割り切ることにします」

「ああ、そういえば」

「なんですか?」

「ミン刑事はえらく君のことを買っているようだった」

「知っていますよ、そんなこと」

「知っているのかい?」

「はい」

「だったら今度はミン刑事のコネで警察に就職してみればどうだい?」

「賄賂だけで食っていけるからですか?」

「うん」

「マオさんって懲りませんね」

「ん?」

「マオさんが今度、わたしをどこかに寄越そうとしたら、わたし、滅茶苦茶泣いてやりますからね」

「それは少し困る」

「私はもう、マオさんからは離れないのです」メイヤ君が私の左腕にしなだれかかってきた。「一生、よだれのようにへばりついてやるのです」

「君は探偵に永久就職したいのかい?」

「マオさんが探偵をずっとお続けになるのなら、わたしはずっと助手をやって差し上げます」

「誰かと結婚して子を産んで、家庭に入るほうが幸せだと思うんだけどなあ」

「マオさん、それってセクハラです」

「セクハラだなんて、良く知っているね」

「セクハラは厳禁なのです」

「気をつけよう」

「あっ、そうでしたそうでした」

「なんだい?」

「私服、『海老剥き屋』さんに置いてきちゃったな、って」

「明日にでも私が回収してこよう。君はもう、あの店には顔を出しづらいだろうからね」

「そうしていただけると助かるのです。おっ、マオさん、いい匂いがしてきましたですよ」

「うん。この匂いは麻婆豆腐だ」

「食べて帰りませんか?」

「高いからダメだよ。節約が私のモットーだから」

「じゃあ、晩御飯はどうしますか?」

「漬物でも買って帰ろう。米はあるから」

「あっ、だったらわたし、キムチがいいです」

「それくらいなら買ってあげるよ」

「やったーっ!」


 メイヤ君がばんざいをして、ぴょんと跳ねた。麻婆豆腐がキムチに化けてしまっても、喜んでもらえた。なかなか微笑ましいリアクションだ。思わず口元が緩んでしまう。元気いっぱいの彼女のことが、どうやら私は結構好きらしい。


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