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超Q探偵  作者: XI
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44.『狼の微笑み』 44-1

 狼が街にカムバックしたからだ。メイヤ君には常に事務所で待機しているよう命じている。万一のことがあってはならない。幸い、ウチの出入り口の鉄扉はかなり分厚い。鍵をあけたとしても太いチェーンロックがある。まさか工具を持ち歩いてまでそれを切断しようとは考えないだろう。


 ミン刑事に近所の喫茶店に呼び出された。


「狼はまだまだ絶好調だよ」

「また死体があがったんですか?」

「ああ。女とその子供が殺された」

「子供、ですか?」

「息子でな。まだ五つだった」

「なんとも苦々しい話だ」

「相変わらず、ニュースでも新聞でも散々注意を喚起しているんだがな」

「網は?」

「常にはっているに決まっているだろうが」

「街を出た可能性は?」

「そこんところに期待するのは不毛だな」

「ふむ」


 私はアイスコーヒーを口にして、それに倣うようにしてミン刑事もアメリカンをすすった。丸まったままのおしぼりを額にぽんぽんと当てる彼の仕草はいつものことだ。


「協力、しましょうか?」

「おっと、ここに来てキラーパスか。いいのか?」

「無論、それに見合うだけの報酬はいただくつもりですが」

「おまえはとことん鼻が利く。だからそう言ってもらえると喜ばしいんだが」

「何か、危惧することでも?」

「メイヤがいるだろう?」

「万が一に備えて、彼女には事務所から一歩も外に出るなと強く言ってあります。現状、何が起きてもおかしくはないですから」

「それだけで言うことを聞く女かねぇ」

「そこが悩みどころです。彼女は彼を捕まえてやると息巻いています」


 私はもうひと口アイスコーヒーを飲むと、パーマのせいでひらひらになっている長い前髪をもてあそんだ。最近、そうすることが癖になっていることは自覚している。


「おまえさんには助けてもらってばかりだ。で、アテでもあるのか?」

「そんなもの、あるわけがない。だが、なぜかですね、彼とはまた会うような気がしてならないんですよ」

「予測ではなく予感で動くのか。おまえさんらしくもない」

「そんな私もいるということです」

「言っておく」

「なんでしょう?」

「おまえなら一対一でもやれると思うんだよ。鉄砲がなくたって、やれると思うんだ」

「体術の心得なら多少はありますが」

「おまえに欠けているのはなんだと思う?」

「わかりませんね」

「執念だよ」

「個人的な怨恨があるわけでもない。そうである以上、執念をもってまで彼を追う必要はないんですが?」

「力を貸してくれるってんなら、それくらいの気概を持て」


 また何かあったら連絡すると言って、ミン刑事は腰を上げた。伝票は持っていってくれなかった。どうやら今日は私がおごるしかないらしい。


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