表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超Q探偵  作者: XI
197/204

43-3

 人出の多い大通り。

 根城がある方向、『フートン』へと足を向けた。


「わたし、決めました。なんとしても、狼を捕まえてやります」

「だからね、それは君の仕事じゃないんだよ」

「だったら、誰の仕事だっていうのですか」

「ミン刑事をはじめとする警察の仕事だ」

「知り合いが殺されてしまいました。わたしにとって大切な友人が殺されてしまいました。確かにミン刑事は犯人を追っているのかもしれません。だけど、わたし達が捜査に加わってもいいはずです」

「良くないね、それは」

「でもっ」

「とにかく、私達は自衛を徹底すべきだ」

「それって、ミン刑事は危険にさらされてもいいってことですか?」

「そうは言ってない」

「おっしゃられていることが良くわかりません」

「今のところ、私には犯人の思考がまるでトレースできない」

「だからって、狼を放っておいてもいいってことにはなりません」

「私はただの探偵だ。そうである以上、関わる理由はない」

「うっ、うぅぅ……」

「泣くのはもうよしなさい」

「わたし、狼のことがゆるせないのですよぅ。本当にそれだけなのですよぅ……」

「深入りするのは良くない。私の勘がそう言っている」

「だけど、尻尾は掴めたわけじゃありませんか」

「尻尾ぐらいじゃなんともならないよ」

「ですけど」

「以前、ミン刑事も言っていた。この街で『こと』を起こされないのであれば、それでいいって」

「そんなの、あまりにも無責任な考え方じゃありませんか」

「そんなに正義感をむきだしすると、いつか痛い目を見ることになる」

「わたしを狙ってほしいです。絶対に負けませんから」

「冗談でもそんなことは言わないでほしい」

「でも、みんながみんな、逮捕することに及び腰であるのなら、わたしがなんとかするしかないじゃないですか」

「考えすぎだよ」


 暗い『フートン』を進む。メイヤ君が隣にいる。この心強さはなんだろう。この安心感はなんだろう。


「私なら狼に銃を向けられる。その実績があるわけだから」

「だから、『あの時』、マオさんを止めたことについては、多少ならず、後悔しています。マオさんになら絶対に仕留めることができたはずですから。今となっては、強く強くそう思うのです」

「あえて言うけれど、それは君の期待値に過ぎないのかもしれない。トリガーを引いていれば、君の予感通り、私は『あの場』で殺されていたのかもしれない」

「マオさん」

「なんだい?」

「お願いです。わたしにも拳銃を買ってください」

「ダメだよ、それは」

「どうしてですか?」

「君には必要のないものだからだ」

「私はもう大人です」

「肉体的にはそうかもしれない。けれど、精神的にはまだまだ子供だ」

「あまりあなどらないでください。わたしはマオさんがいるから子供をやっているのです。マオさんがいなくなるようなことがあれば、いつでも大人になってやるのです」

「不吉なことを言うね」

「……そうですね。ごめんなさい」

「でもね、その意気込みはあっていいんだよ。君には君の選択があるわけだから」


 メイヤ君が足を止めた。だから私も立ち止まった。

 薄暗い『フートン』にあって、私達は向かい合う。


「マオさん、わたし……」

「君がなんと言おうと関係ないよ。君が幸福を得るにあたって、私は必要ないはずだ」

「ですから、わたしを幸せにできるのは、マオさんだけだって言っています」

「その考えを改めてほしいと言っている」

「どうしてそんなことをおっしゃるのですか……?」

「私ほど君の幸せを願っているニンゲンは他にいないからさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ