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超Q探偵  作者: XI
194/204

42-3

 現場からの帰りしな、大通り。


 何を思ってか、メイヤ君が「ピッチを上げていきませんか?」と発案した。


「なんのピッチだい?」

「ですから、犯人を捕まえるにあたってのピッチです」

「私は正式に捜査に参加すると表明したわけじゃない。そもそも影もかたちも見えない犯人をどうやって追おうというんだい」

「それはわかりません。マオさんが考えてください」

「他力本願、ここに極まれり、だね」

「でも、マオさんにとっても、ゆるしがたい事件なのではありませんか?」

「そりゃあね。何も悪さを働いていないであろう人物が次々に殺されたことについては残念だと考えている。私だってニンゲンだからね」

「マオさんはおっしゃっていましたよね? 犯人を組み伏せた上で警察に、果ては法廷にまで突き出したいって」

「突き出したいとまでは言っていない」

「ですけど、そんなふうに思われているのは事実ですよね?」

「否定はしない。法で裁くのが適切だと考えているから」

「私はマオさんのことを聖人君子だと感じているのです」

「何度言わせるんだい。私が過去に手をよごしてきたことは、君も良く知っているだろう?」

「マオさんがやったのは正しい殺人です」

「一概にそうとは言えない」

「じゃあ、マオさんはどうしてトを殺されてきたのですか?」

「その理由も君は把握しているはずだ。やむをえない事情があったりだとか、私怨だったりだとか、色々だよ」

「わたしはマオさんのことを信じます」

「盲目的に信奉するのは良くない」

「マオさんは唯一です。わたしにとってのオンリーワンなのです」

「私が今でもシャオメイを愛していると言ってもかい? それでも、私のそばにいたいのかい?」

「いたいのです」

「まっすぐだなあ」

「いつまでもマオさんにとっての二番目の女でいるつもりはありません。いつかシャオメイさんにとってかわってやるのです」

「君にはもっとふさわしい男がいると思う」

「ほら、またそうやって悲しいことを言うー」

「何より君は私とひと回りも違うしね」

「ほら、また歳の話を持ち出したりするー」

「犯人に天罰がくだるといいね」

「はいなのです。わたし達の新婚生活を充実させるためにも、この世界は静かでなければならないのです」

「新婚生活?」

「狼さんの件が片付いたら、結婚しましょう」

「またえらく話が飛躍したね」

「とっととウエディングドレスが着たいのです。だって、裏を返せば、生きているニンゲンの中では、わたしが一番だってことでしょう?」

「まあ、そういう見方もある」

「シャオメイさんは確かに不幸でした。マオさんが今でも愛してやまない気持ちわかります。でも、亡くなってしまったからこそ、マオさんの中でシャオメイさんは美化されているのだとも思います」

「そうなのかもしれない」

「きっとそうなのですよぅ」

「ところでメイヤ君」

「なんですか?」

「腰を抱かせてもらってもいいかい?」

「なな、なんですか、突然」

「抱かせてもらってもいいかい?」

「も、勿論ですけれど……」


 遠慮なく左手を腰に回した。刹那、ビクッと反応したメイヤ君である。彼女は大事そうにボルサリーノを両腕で抱えると、やがて私に身をゆだねてきた。細い腰だ。ほんの少し腕に力を入れるだけで折れてしまいそうだ。


「なんだかくすぐったいです」と言って、彼女は照れくさそうに笑って見せた。


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