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超Q探偵  作者: XI
193/204

42-2

 まただ。

 また起きた。


 アパート暮らしの若い夫婦が揃って殺害された。


 現場を見ると、やるせなさを覚えると同時に、舌打ちせざるをえなかった。血まみれの夫と妻が手をつないで死んでいたからだ。


「犯行の手口についてはどうお考えに?」


 私がそう尋ねると、ミン刑事は「なんらかの手段で玄関から押し入り二人を殺害した。それしかわからんに決まっているだろうが」と腹立たしげに答えた。


「まったく。実に胸糞が悪くなる事件だ」

「同感です」

「マオ。おまえが昨日、言った通りだよ。未然に防ぐことは難しい。やはり警察は対症療法しかできないってことだ」

「またガラス戸に指紋が残されている。捕まえてしまえば、一発だと思うのですがね」

「ゆるせませんよ!」メイヤ君が大きな声を発した。「死の淵にあっても二人は愛を確かめ合った。だから手をつないだのです!」

「そいつは見りゃわかる」

「でしたら!」

「メイヤ」

「なんですか!」

「少し静かにしてくれ」

「うっ、ごめんなさい……」

「いや、謝ることはないんだ。俺が悪い。キツい言い方をしてすまなかった」

「いえ……」


 私は言う。「他者に絶望を与えることを良しとしているのかもしれない。現状を分析すると、それは事実なのかもしれない」と考えを述べた。


「でもっ、そんなの!」

「メイヤ君。だからといって、あとを追うのをやめるわけにはいかないんだ。彼の起こしている事件は完璧に近いものだけど、追跡をやめることは悪手でしかない」

「いつか、捕まえられますか……?」

「それがわからないから、警察は頭を悩ませているんだよ」

「少なくとも言えることはだな、現状の戦力じゃあ、対処しきれないかもしれないってことだ」ミンは刑事はぼさぼさのうしろ髪を掻いた。「そうである以上、警察はぼんくらの集まりだと言わざるを得ないな」

「そんな……」

「やっこさんからしたら、俺達は非力なんだよ、メイヤ。嘲笑するに値するくらいな」

「それじゃあ間違いなくこれからも殺人事件は起きるということですか?」

「俺達が追いつけないとなれば、そうなるだろう」

「そうなんだよ、メイヤ君。そういうことなんだ」

「白い髪をしたポニーテールの男については、相変わらず、単発的な目撃情報が寄せられるだけだ。現場近くで見たなんて証言もなけりゃ、悲鳴や物音を聞いたって話も出てこない。とにかく天才的なんだよ、ヤツの犯行は」

「ミン刑事、狼さんを捕まえてください。なんでしたら眉間に銃を突きつけてやってください。お願いします」

「メイヤ君、しつこいようだけれどね」

「理解しています、常に冷静であれとおっしゃるのでしょう?」

「わかってくれているのであれば、それでいい」

「ですけど、私は犯人がゆるせません。出くわすようなことになれば叩き潰してやります」

「やっぱり落ち着きにか欠けているじゃないか。見つけ次第逃げると約束してくれたはずだ」

「今のわたしは、犯人を野放しにするつもりはないということです」


 悲しみが消えないからだろう、メイヤ君は潤んだまなこを寄越してきた。

 それほどまでの正義感は、私にはないものだった。


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