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超Q探偵  作者: XI
183/204

40.『インスタント・ネクロフィリア』 40-1

 本日の外回りを終えたらしい。メイヤ君は夕方になって帰ってきた。


 彼女は「今日も収穫ナシなのでーす」と放り投げるように言った。「うーん、最近、ダメですねぇ。以前にも増して仕事が得られないのですよぅ」と続けた。それから私のデスクに乗り上げた次第である。


「メイヤ君、いい加減、デスクに座るのはやめなさい」

「気にしないでください」

「礼儀の話をしている」

「今日の夕刊は面白いですか?」

「今日も面白くない」

「だったらどうしていつも時間をかけて目を通されているのですか?」

「他にすることがないからだ」

「多額の貯金がある。ゆえの物言いですね」

「何度も何度も、繰り返し繰り返し、重ね重ね言っているけれど、探偵の出番なんて、そう多くないほうがいいんだよ」

「それはわかっています」

「なら、怠惰な日々を満喫しなさい。それはそれで悪いことではないはずだ」

「でも何せ、わたしは若いので」

「暇を持て余していたくはないってことかい?」

「そうなのです。働かざる者食うべからずなのです」

「それは私が好きな言葉じゃない」

「どうしてですか?」

「あまりに稚拙な考え方だからだよ」

「そうでしょうか?」

「ああ。それを言い出したニンゲンは、きっと心が豊かではないんだろう」

「ヒドい言い方をされますね」

「食つなぐために働かないといけないというのは、まあ、わかる話だ。この世の多くのニンゲンはそうだろう。でもね、そういった論理を万人に当てはめるわけにはいかないよ」

「そうかもですけれど」

「その格言について、私が思うところをもっと詳しく説明してあげようか?」

「難しい話になりますか?」

「多少はね」

「でしたら結構です。マオさんのご高説は、正直ちょっと聞き飽きていますし」

「それこそヒドい物言いだ」


 黒電話がジリリと鳴った。デスクに腰掛けたまま、右手でひょいと受話器を取り上げたメイヤ君である。


 彼女は「はーい、こちら、マオ探偵事務所でーす」と応答し、「おぉ、お久しぶりです。なーんて、昨日もお会いしましたけど、あはははは」と笑った。受話器を左肩と首の間に挟んで、ジャケットの胸ポケットにさしていたペンを手にし、サイドポケットからはメモ帳を取り出す。


「それでご用件は? ふむ、ふむふむ。なるほど。で、依頼料は、はずんでいただけますか? ふむ、ふむふむ。まあ、そうですよね。要は私とマオさんの働き次第ってことですよね。わかりました。早速伺うことにします」


 メイヤ君はチンと受話器を戻した


「例によって、ミン刑事からかい?」

「はい。女性のご遺体が見つかった模様です」

「場所は?」

「とあるアパートの一室です。四階だそうです」

「一人暮らしかい?」

「そうらしいとのことでした」


 メイヤ君は「はい」と言って、メモ帳を見せてきた。住所が記されている。相変わらず彼女の字は綺麗である。


「比較的、近場だね」

「向かいますよね?」

「君は受けつけてしまったわけだ」

「だったらとっとと出動しましょーっ」


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