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超Q探偵  作者: XI
175/204

38-4

 夕刻、事務所近くの喫茶店。


 ミン刑事に時間をとってもらって、少女の失踪事件に関する話をした。


 彼は丸まったままのおしぼりで、ぽんぽんぽんと額を拭うと、「悪いが、その件には協力できない」と言い、「早々に、はずされちまったんでな」と続けた。


「ほぅ。なるほど。はずされてしまいましたか」

「そうやってとっとと納得できるあたりに、おまえの優秀さを感じざるを得ない」

「要は、貴方の上役連中は、貴方に捜査をされると面白くないということでしょう?」

「そういうこった」

「では、それはなぜなのか」

「もったいぶるなよ。わかってるくせに」

「ええ。わかりきっていることです」

「上から釘を刺された以上、動くに動けん。身軽な立場なら聞く耳を持たないっていう選択もアリなんだが、あいにく俺には可愛い部下達がいる。トップダウンで捻じ込まれたことに反抗しちまうと、やっこさんらにまで被害が及ぶことだろう。最悪、揃って解雇なんてこともあるかもしれん」

「となると、いよいよこちらで請け合うしかありませんね」

「乗り気なのか?」

「乗りかかったなんとやらですよ」

「らしい物言いだ。一度食らいついたらはなさない。おまえさんにはそんなところがある」

「はーい」メイヤ君が挙手した。「次のアクションを明確にするためにも、現状をわかりやすくまとめておきましょーっ」

「そうしようか。うん。順繰りに整理しよう。メイヤ君、ミン刑事が、いや、彼をはじめとする警察官が、正しく、またあるべき姿で働けないのはどうしてかな?」

「その理由は単純明快です。警察の上層部が賄賂ばかりもらって腐っているからです。すなわち、そうであるからこそ、捜査をするなとミン刑事達に厳命したということです」

「今回の一件について賄賂を渡した可能性があるのは、どういったニンゲンだろう?」

「パッと思い浮かぶのは、『人売り屋』さんに『剥製屋』さんといったところです」

「正しい推察だ」

「おぉ、軽く褒められちゃいましたね」

「なあ、メイヤ」

「なんですか、ミン刑事」

「いや、あらためて、おまえは成長したなと思わされてな。まるでみたいだよ」

「なんと、と来ましたか」

「ああ。だが、純真極まりないな娘っ子が、どんどんタフになってくってのは、なんだか寂しくもあるもんだ」

「まだまだ可愛げはあると思いますけれど?」

「まあ、そうなんだが。ああ、茶々を入れちまって悪かった」

「話を戻しますです」

「そうしてくれ」

「『人売り屋』さんに『剥製屋』さん。彼らが怪しいのは確かなのです」

「だったらだ、メイヤ、おまえはどちらから洗うべきだと考える?」

「『人売り屋』さんという業者はいくつかあると聞きます。だけど、『剥製屋』さんは街に一件しかありません。なので、答えは自明の理だと考えます」

「異論はねーな」

「私もだ」

「てへへ。お二方から同意を得られると、とても嬉しいのですよ」

「続けようか」

「どうぞどうぞ、ご主人様」

「新聞報道にもあった通り、くだんの少女、カン氏が行方をくらましたことが判明したのは二日前だ。朝礼に姿を現さないことをきっかけに、失踪したことが明らかになった。となると、少なくとも三日前の終業までは、彼女は学校内にいたということになる」

「被疑者がいると仮定した場合、その人物は、三日前の放課後から翌朝までの間に犯行に及んだということですね?」

「そうだ。そして、今、机上にある情報から考えるに、犯行とは殺人に他ならない。カン氏は誰かに殺害された上で、『剥製屋』へと運び込まれたんだ。これは私見ではなく、物事を客観的に分析した上での結論だよ。まず間違いなく『剥製屋』が関わっている」

「ちょっと話がジャンプしましたですね。マオさんっぽいのです」

「そうかな? シーケンシャルに組み立てたつもりだけど」

「被疑者は『剥製屋』さんの『裏の商売』を知っていたのでしょうか?」

「知らなくても差し障りはない。この街に『剥製屋』という商売が存在していることを把握していて、かつ彼の連絡先を入手すれば何も問題はない。まずは匿名で電話をかけて訊けばいいんだ。貴方のところはヒトも扱うのか、ってね」

「その質問に対して、『剥製屋』さんは正直に答える、と?」

「答えるよ。警察が黙認している以上、この街における『剥製屋』は合法なんだから。大っぴらにすることじゃないけれど、かたくなに隠すことでもない。彼の仕事とはそういうものだ」

「では、そもそもどうして被疑者はカンさんを剥製にしたいと考えたのかということになるわけですけれど」

「今、それは考えなくていい。いずれわかることだからね。自ずと解は得られるよ」

「でしたら、やっぱり『剥製屋』さんに突撃ですね」

「そうだね。アタックしてみよう」

「まったく、本当にいいコンビだよ、おまえ達は」


 最後にそう締めくくると、ミン刑事は穏やかに微笑したのだった。


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