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超Q探偵  作者: XI
169/204

37-3

 私は焼酎のお湯割りをすすり、ミン刑事はジョッキを空けた。


「テイ氏がヒトを殺めた事件からまだ五年です。なのにもう刑期を終えたというんですか?」

「だから、そう言っている。裁判記録は閲覧していないのか?」

「わざわざそんなことはしませんよ。死刑以外はありえないと考えていましたから」

「テイの実家は『郊外の丘』にある。やっこさんは大した資産家の息子だよ。それすら知らないのか?」

「知りませんね。聞いたことすらない」

「野郎についたのは、親父が雇ったふだきのヤメ検弁護士だった。その親父殿は裁判官にもいくらか握らせたんだろう。だから、くさいメシを食うのはたったの五年間で済んだ」


 私は小さく鼻で笑った。


「それで? そんなことを今さら私に知らせてどうしようっていうんですか?」

「警告だよ。おまえに対するテイの復讐は、まだ終わっちゃいないことだろうからな」

「私を殺しに来ると?」

「あるいはな」

「だったら受けて立ちますよ。私にはもう、失うものなどありませんからね。相打ちでもかまわないくらいだ」


 ミン刑事がすーっと右手を伸ばしてきた。何をするのかと思っていると、その手でいきなりほおを軽く張られた。煙草をくわえた彼は一つ煙を吐くと、「阿保抜かせ」と言った。


「失うものなんてない? おまえには義務がある。メイヤのために生き抜くっていう義務がな」


 張られたほおをさすってから、私は改めてお湯割りを口にした。


「まあ、そうですね。ミン刑事、貴方のおっしゃることはもっともなのかもしれない」

「だろうが」

「ええ。となると、彼は彼なりに私の身辺を調べた上で、メイヤ君を狙ってくる可能性がある。私に苦い思いをさせようと考えているのであれば、彼は手段を選ばないでしょう」

「冷静なおまえさんに戻ってくれたようで助かるぜ。そこで相談だ」

「相談?」

「メイヤのことは俺に預けたらどうだ? 『こと』が片付くまで、ウチで面倒を見てやる」

「ありがたい申し出ですが、いいんですか?」

「かまわんさ。のっぴきならない理由があるってんなら、メイヤだってわかってくれるだろう」

「確かにのっぴきならない理由ではあります。その点の説明についてもお任せしても?」

「ああ。俺から話しておく」

「手間をかけて申し訳ない」

「いいから上手いこと処理して戻ってこい。死体袋を用意しておいてやる」


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