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超Q探偵  作者: XI
164/204

36-3

 翌日、『剥製屋』を訪れた。


 相変わらず、店内には犬や猫、加えてちょっと珍しい動物の死体がホルマリン漬けにされ、展示されている。


「どうしたね、探偵さん。何か欲しいものでもあるのかね、いーっひっひ」


 そうやって気味の悪い笑い声をあげるのが『剥製屋』である。丸坊主で背丈は低いものの、非常に筋肉質な体つきをしている。あるいはヒトの死体を扱って商品とするわけだ。それ相応の腕力が必要なのだろう。


「ご主人。私はここに一つの遺体が寄越されたのではないかと疑っています。昨日の、まあ夜のことでしょうが、美女がここに運び込まれたのではありませんか?」

「いーひっひ。確かに昨日、女を仕入れたね。世間一般では美しいと呼ばれるニンゲンね。イイ女だということね」

「警察官が流してきた。そういうことで間違いありませんか?」

「黙秘するね」

「間違いないんですね?」

「いーっひっひ」

「そのイイ女とやらは、やはりホルマリン漬けにして売り出すんですか?」

「いや。より生身に近い剥製にするね。プラスティネーションね。手間がかかる分、コレクターには高く売れるね」

「その遺体は貸し倉庫に保管しているのですか?」

「そうね」

「そもそも、そんな商売を知っていながら見咎めないあたり、警察はどうかしていると言わざるを得ない。とはいえ、そんな警察が管轄する地域に私も腰を据えているわけですが」

「なんとでも言うがいいね。ワタシは品物を仕入れて売るだけね、いーっひっひ。だけど、どうにもミンのヤツだけは邪魔ね。ヤツがその気になれば、私はしょっぴかれるね。そうであることがわかっていても、ワタシは『剥製屋』を続けるね。やめたくないね」

「それはどうしてですか?」

「決まっているね。物言わぬ死体にこそ美学を感じるからね」

「なるほど」

「死体はいいね。美しいね」

「あえて言います」

「なんね?」

「貴方は多分、くそったれだ」


 すると、『剥製屋』はやっぱり、「いーっひっひ、いーひっひ」と、可笑しそうに笑ったのだった。


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