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超Q探偵  作者: XI
163/204

36-2

 あいにく、三日間、ミン刑事は非番らしい。まあ、そんなことがあってもいいだろう。


 警察に事件を引き継いでから事務所に戻ると、ソファに座ったメイヤ君が、「どういうことでしょうか?」と問いかけてきた。「ちょっと異常です。たかがミスコンごときに爆発物を仕掛けるだなんて」

「参加者の誰かになんらかの恨みを抱いていたんだろう」彼女の向かいで私は答えた。

「恨み、ですか?」

「ああ」

「だとしたら、標的だけを狙えば良かったのでは?」

「刺殺や銃殺という手法を使ってかい?」

「はい」

「でも、それだとすぐに足がつく」

「それはまあ、その通りだと思いますけれど……」

「君はどうしたい?」

「どうしたいって、何がですか?」

「事件を追いたいか追いたくないのか、そのへんを訊いている」

「それはもう、すぐにでも追いたいのですよ。わたしは正直、ミン刑事以外の警察官はあまりアテにはできないと考えています。ですから、ミン刑事が席を空けている間は、わたし達が速やかに初動捜査をする必要があると思うのです」

「ミン刑事のフォローをしようというわけだ」

「平たく言えば、そういうことなのです」

「穴を埋めたところでギャラをもらえるという保証はない」

「良い働きをすれば必ずもらえるはずです。ミン刑事は律儀なかたですから」

「ふむ。ところで、例えば亡くなった被害者、クイーン候補だった彼女に親族はいるのかな」

「どういうことですか?」

「いや。いないのであれば、真っ先に『剥製屋』に売り飛ばされることだろうと思ってね」

「警察はそこまで腐っているのですか?」

「それこそミン刑事は別だけれど」

「でも、事件の引き継ぎについてはマオさんがされたわけです。であれば、ご遺体の横流しなんて、そう簡単にはできないはずです。マオさんは警察に一目置かれていることでしょうから」

「その反面、私のことをうとましく考えている警察官も多くいる。彼らは私の存在など認めていないことだろう」

「質問です」

「なんだい?」

「親族の同意を得た上で、警察が遺体を『剥製屋』さんに横流しすることもあるのかなあと思いまして」

「結論から言うと、ありうる。『剥製屋』から受け取った金を関係者で山分けするんだよ」

「ヒドい話です」

「そうであることには違いない」

「で、まずはどう動きましょうか」

「爆弾を仕込んだのは、舞台を設営したバイトだろう。その仕事の性質上、履歴書のやりとりが行われたとは考えにくい。運営者側からすれば、単に人手が欲しかっただけなんだから」

「裏を返せば、必ず主催者側に犯人がいるということですよね?」

「でも、手をくだしたニンゲンを探すのはナンセンスだ。捕まえられるとも思えない」

「だったら本件についてはお手上げなのですか?」

「正直なところ、そう判断するしかないと思う」

「無情です、本当に、この街は……」

「事象を安易かつ感情的に解釈することは良くない。真っ向から現実を直視した上で答えを導き出すしかないんだよ。君の価値観は尊いものだけれど、もう少しシビアになったほうがいい」

「むぅ、努力はしますけれど……」

「とはいえだ、明日にでも『剥製屋』を訪ねてみよう」

「おぉ、なんだかんだ言っても捜査開始ですか」

「やれることはやっておこう。探れるものは探っておこう」

「そうしましょーっ」


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