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超Q探偵  作者: XI
161/204

35-5

 ミン刑事が我が事務所のソファの上にて言う。


「プロのわざだろうが、どうしてただのフリーランスのニンゲンを消したのかね。闇献金の件が明るみに出たところで辞任すればいい。余生を過ごすにあたってはたっぷりすぎるくらいの資産があるはずなんだからな」

「そのあたりの事情は訊き出すしかありませんね」

「本人は何も吐く素振りは見せないようだが」

「だとるすと、代議士という職業に執着があるということなんでしょう」

「政治家を生業にしている連中からは、どぶくさい匂いしかしないんだがなぁ」

「同感です」

「形式的な尋問はウチでやったが、代議士先生の犯罪ともなると、到底、俺達の手には負えない。この国でいっとう力のある同僚連中に引き継いで、それでしまいだ」

「いつか逮捕できる日が来ることを祈るしかありませんね」

「まったくだ」


 ミン刑事はソファから腰を上げ、紙幣を幾枚かテーブルに置くと、静かに事務所から出ていった。


「マオさん?」隣からメイヤ君が声をかけてきた。

「なんだい?」と訊き返した私である。

「改めてなのですけれど、代議士先生が記者さんを殺すように命じたことは、まず間違いないのですよね?」

「そう考えるより他にないね。とはいえ、代議士先生の今の扱いは、重要参考人といったところだろう」

「むぅ……」

「記者の死は悼まれる。義侠心に駆られて取材していたことだろうから。でも、それは彼が彼の信念に基づいて行動した結果でしかない」

「じゃあ、なむなむと合掌するしかありませんね」

「ああ。なむなむだ」


 この世から消し去れてしまった記者は確かに不幸だ。しかし、自ら危険な領域に足を踏み入れたのもまた事実なのである。彼はいい仕事をしようと考えたに違いない。正義を唱えたかったに違いないのだが、有体に言うと、亡くなってしまったのは言わば自業自得なのだ。大きな賭けに出る時こそ、引き際を見誤ってはいけないという教訓だと、私は思う。



 すぐのちのことだ。くだんの代議士先生は取り調べの末、結局のところ逮捕された。不正献金授受と殺人との合わせ技で、一体、どのような量刑が課せられるのかはわからないが、とりあえずは勧善懲悪だ。それで良かったのではないか。


「マオさん、お茶が入りましたよーっ」


 という声に誘われ、今日も助手と向かい合ってコーヒーを飲む私なのであった。


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