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ミン刑事が我が事務所を訪れたのだった。普段通りソファにどっかりと腰を下ろし、メイヤ君が運んできたコーヒーをすする。
「メイヤはコーヒーを淹れるのが、以前にも増して上手くなったな」
「所詮はインスタントなのですけれどね」
「粉と湯との配分がちょうどいいんだろう」
「正直、豆を買って挽きたいのです」
「そのへんは主人に改善してもらえ」
コーヒーに口を付ける。確かにメイヤ君は淹れるのが上手になった。香りが口の中でふわっと広がる。彼女はグルメだ。だから、本格的に豆を挽いてこしらえたいという気持ちはわからなくもないが、この分だと、インスタントで充分だろう。
「それでミン刑事、なんの御用ですか?」とメイヤ君が訊いた。
「まあ、考えようによっちゃあ、つまらん事案なんだがな」とミン刑事は答えた。「先日、とある路地で男が殺された。場所は袋小路だった。追い詰められて殺されたらしい」
「どうして殺されたのですか?」
「そのあたりを『いち』から調べろと言っている」
「いわゆる丸投げですね」
ミン刑事は頭を掻いた。「そういじめてくれるなよ、メイヤ」と苦笑じみた表情を浮かべた。
「ウチの若い衆に任せてもいいんだが、事件は次々と起こる。どうにも人員不足なのさ。だからマオ、今回の件はおまえに任せたいと考えている」
「報酬は?」と私は尋ねた。
「無論、くれてやる」とミン刑事。
「はずんでいただけると喜ばしいのですが」
「考えとくよ」
「現場は袋小路とのことですが、何かヒントをいただきたい」
「調べを進めるうちに突き当たった。なんでも死体になったやっこさんはフリーランスの記者だったようだ。現状、それ以外のことはわかっていない」
「ふむ」
「何かアタリをつけることはできるか?」
「できなくはありませんね」
「期待している」
「まあ、働きますよ」




