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超Q探偵  作者: XI
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35.『代議士先生』 35-1

 ソファで昼寝をしていたメイヤ君が私のデスクの前に立った気配を感じた。新聞を下げて視線を寄越してみると、相変わらずボルサリーノをかぶっている彼女の姿があった。例によって短いスカート姿だ。丈の短いTシャツの裾からはおへそが覗いている。


「マオさんマオさん、ねぇ、マオさん」

「だから、一度呼ばれれば返事をするよ。何度言わせるんだい」

「釣り堀に出掛けませんか?」

「釣り堀?」

「はい。釣り堀です」

「何が釣れるんだい?」

「鯉だそうです」

「鯉か」

「ええ、鯉です。鯉なのです」

「君は魚をさばけないはずだ」

「マオさんになら可能ですよね?」

「可能だね」

「まあ、ぴちぴち跳ねる鯉さんが食材として扱われることは、見ていてとても痛々しいのでしょうけれど」

「それはそうだ。少なからず心が痛む。でも、上手いこと調理すれば、そこそこ美味しかったりすることも事実だ」

「じゃあ、行きましょう」

「今日は外回りの営業活動をしないのかい?」

「本日はお休みなのです。そのせいで寂しがるかたはいらっしゃるかもしれませんけれど」

「いいだろう、わかった」

「れっつらごーなのです」



 大通りから逸れ、『フートン』の奥まったところにある目的地に至った。小さな釣り堀だ。けっして大きくはなく、客も多くはないので、繁盛しているようには見えない。


 メイヤ君がプレハブの建屋から竹竿を手にして戻ってきた。右手に二本、持っている。左手には洗面器のような器。エサが入っているのだろう。


「練りエサの匂いは苦手なのです」

「だったら、どうして釣り堀に誘ったんだい?」

「背に腹は変えられないのですよ」

「良くわからない理由だね」


 エサを針の先端に付けて、釣りにいそしむ。うきはすぐさま反応した。私が立派な鯉を釣り上げると、メイヤ君が「おー、おーっ」と歓喜の声を発した。


「マオさん、お上手じゃありませんか」

「これだけ簡単に釣れるんだ。獲物は相当、飢えているんだろう」


 メイヤ君の竿のうきが上下した。彼女は「よし来た」とばかりに竿を上げる。が、鯉はかからなかった。


「むぅ……」

「焦りすぎちゃいけないよ。しっかりと食いついた瞬間を見計らわないと」


 メイヤ君は二度、三度としくじった。


「うえーん。やっぱり釣れないのですよぅ」

「君には釣りは向いていないのかもしれない」


 計五匹、私は釣り上げた。一匹だけを残して他はリリース。その一匹は災難だと思うのだが、ビニール袋に入れて持ち帰ることにした。



 事務所にて鯉をさばいた。洗いを作り、具沢山の味噌汁も作った。今日の釣果について、メイヤ君は満足してい様子である。


 彼女は味噌汁をすすると、驚いたように「おーっ」と声をげた。


「改めて思うのです。マオさんってば、料理上手ですよね」

「一人暮らしが長かったからね。料理くらいは上手くもなる」

「また釣り堀にまいりましょーっ」

「たまにはいいのかもしれないね」


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