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超Q探偵  作者: XI
152/204

34-2

 二十時半頃。


 ウォズ刑事に案内され、メイヤ君とともに少々寂れたアパートの一室を訪れた。鑑識の仕事は済んだらしいが、リビングには遺体はまだ残されている。やはり首元にはかっさばかれた痕がある。


 侵入口は玄関だろう。ベランダのガラス戸を破られるといったような形跡はないからだ。問題の血の痕は西向きの窓に付着していた。やはり右手を血に浸した上で触れたようだ。だが、先の三件において検出された指紋とは違うという話なのだ。ならば、誰がどんな理由をもって殺害したのだろう。


「手形、べったりですね」と言ったのはメイヤ君だ。「誰がこんな真似をしたのでしょうか。マオさんは以前三件の犯人を指して『狼の眷属』だとおっしゃいましたけれど、指紋を観察するに、その人物の仕業ではないのですよね?」

「君はどう思う?」

「やっぱり、模倣犯なのでは?」

「模倣犯、か」

「何が疑問でもあるのですか?」

「例えば、彼が稀有なアジテーターだったとする」

「『狼の眷属』が扇動者だと?」

「そうだよ。だから、彼に感化されるニンゲンが現れた」

「そんなことって、あるのでしょうか」

「稀有なアジテーターだと言ったよ?」

「アジテーター、アジテーター、ですか……」


 私は「ウォズ刑事」と呼びかけた。特に何をするでもなく突っ立ったままでいる彼は「はい、なんでしょうか」という少々気のない返答を寄越してきた。


「一応の確認です。過去三件についても本件についても、指紋は誰のものかはわからないわけですね?」

「現状は、はい」

「ふむ」

「僕は変質者のたぐいの仕業だろうと考えています」

「変質者、ですか」

「だって、それ以外に説明のしようがないじゃありませんか」

「まあ、正論ですね」

「だから、頑張ろうと思うんです」

「頑張る?」

「いけませんか?」

「頑張るのはいいことです。ただ、物事を客観視することだけは肝に命じていただきたい」

「犯人を捕まえることに尽力したいんです。それだけです。僕の考え方って、間違っていますか?」

「間違ってはいませんが」

「何か気にいらないことがあるなら言ってください」

「そういう突っ掛かってくるような口調はやめていただきたいですね」

「あっ、それは、すみません」

「わかっていただければいいんですよ。それで、目撃者は?」

「辺りに聞き込みをしたんですけれど、現状、見つかっていません」

「なるほど」

「何か、わかりますか?」

「指紋以外の情報がない以上、確たることは言えませんね」

「だとすると、迷宮入りになってしまうのでしょうか」

「ですから、まだ何も申し上げることはできないと言っています」


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