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超Q探偵  作者: XI
139/204

31-3

 ミン刑事を見つけたメイヤ君はタタッと駆け寄った。


「どうしたんだ、メイヤ。こんな時間に、こんなところに」

「偶然も偶然です。たまたま近所を通りかかりまして」

「本当にとんだ偶然だな」

「そうなのです」


 ミン刑事は屈んだ状態で、仰向けの遺体に向けて小さな懐中電灯を向けている。メイヤ君が膝を折ったのに続き、私も隣に並んだ。


「イカ釣りに出る漁師が見つけて通報してきたらしくってな」ミン刑事は言う。「俺はもう帰路につこうとしているところだった。なんとも災難だよ」


 懐中電灯の白いライトに照らし出された男の遺体を観察する。胸の真ん中に、縦に走った刺し傷が認められた。


 私はあごに右手をやり、「ふむ」と、うなずいた。「どうやら、ただの『どざえもん』というわけではないようですね」と言った。

 

「あからさまに事件性を帯びているって話だから、出向かざるを得なかったんだよ」ミン刑事はそう答えた。「どう見たって、こいつは他殺体だ」


 遺体の刺し傷を、私は右の人差し指でなぞった。血液が付着するようなことはなかった。どうやら殺されたばかりということではないらしい。


「恐らく、海上で殺されたんだろう」

「それから数日を経て、たまたまここに漂着した」

「ああ」

「ということであれば、真っ先に疑うべきは漁業関係者ですね」

「そうなるな」

「傷口自体はそう大きくありませんけれど、深さはありますよね」と、メイヤ君が口を挟んだ。「凶器は一体、なんなのでしょうか……」

「細くて長い包丁か何かだろう」と、ミン刑事。「恐らくだが、その切っ先は心臓にまで達している。ほぼ即死だっただろうってことだ」

「むぅ……」

「本件について、メイヤは興味があるのか?」

「興味はありますけれど、いたずらに関わっていいことではないと思います」

「そりゃまたどうしてだ?」

「殺人事件だからです。お遊び気分で首を突っ込むわけにはまいりません」

「成長したな、おまえは」ふっと笑って見せたミン刑事である。「とはいえだ。何か面倒ごとに突き当たるようなら連絡する。その折には手を貸せ」

「わかりましたです。いいですよね? マオさん」

「ああ。そういうことでかまわない」


 私は立ち上がり、踵を返して歩き出した。すぐに隣に並んできたメイヤ君である。


 ゆっくりと家路をゆく。


「それにしても、殺人ってどうして起きるのでしょうか」

「殺したい、あるいは殺さなければならない理由があるからだろう」

「例えばです」

「ん?」

「わたしが誰かに殺されたとしたら、マオさんはどうされますか? わたしを殺したその誰かさんを殺してやろうと考えますか?」

「君はそういった質問をたびたびぶつけてくるね」

「かもしれませんけれど、ねぇ、どうなのですか?」

「うーん、どうするかなあ」

「あ、ヒドいです、それって」

「冗談だよ。きっと殺すと思う」

「おぉ、やっぱりそうなのですね。うふふなのです。うれしいのです」


 メイヤ君が左腕に絡みついてきた。彼女の胸の柔らかさと体の温かみがが伝わってくる。


 空を見上げると、明るい色をした月が浮かんでいた。


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