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超Q探偵  作者: XI
129/204

29-2

 尚も『ロンジンフロント』。


 ジンリン氏を訪ねたその足で『貸衣装屋』に寄り、白いタキシードに着替えさせられた。誰にって、メイヤ君にである。彼女はというと、黒い着衣をまとって試着室から出てきた。案の定、露出過多。ことのほか乳房が大きいことから胸の谷間は容赦なく深い。丈が短いものだから真っ白な脚も露わだ。肩も脛も剥き出しである。くるっと回って見せる。背中も大きく開いている。言ってしまえば目の毒だ。


「マオさん、どうですか、これ」

「感心できない」

「そうおっしゃると思いました。でもまあ、ここは娯楽の街ですから」

「それってなんの理由にもなってないよ」

「でもまあ、娯楽の街ですから」

「どうして二度も言うんだい?」


 呼びつけたタクシーの後部座席に二人して並んだ。メイヤ君が「あ、そこを右に曲がって、次の次の角を左に曲がってください」と運転手に指示をする。


「目的地があるのかい? だとしたら、それは何故だい?」

「ここ、『ロンジンフロント』には何度か来たことがあるのですよ」

「何度か来た?」


 それは初耳だったので、私は思わず眉根を寄せた。


「その報告は受けていないね」

「毎度毎度言ってるじゃありませんか。我が街、『カイホー』は、すでにわたしの縄張りだって」

「だからってねメイヤ君、この街は娯楽に満ちているけれど、その分、危険があったりしてだね」

「あ、見えてきました。あそこですよ」

「あのね、メイヤ君、君はヒトの言うことをきちんと最後まで聞くべきだ」

「まあまあ、つべこべ言わずについてきてください」


 メイヤ君に続いて、タクシーから降車した。目の前にあるのはそれほど大きくないカジノである。良い言い方をするとおもむきがある、悪い言い方をすると多少古びている。電飾もそう凝ったものではない。


 メイヤ君が「あつーい、ですね」と言って、両手を天に向かって突き上げ、うんと伸びをした。


「ミニのドレスを着ていてもこれだけ暑いんです。タキシードを着ているマオさんからすれば地獄なのではありませんか」

「ああ。だから早く帰りたい」

「まあ、そうおっしゃらずに」

「小さなカジノだね。どうしてここに目をつけたんだい?」

「個人主のカジノは信用なりませんよね?」

「そうなのかい? そのへん、私は良く知らないけれど」

「オーナーの言いつけでイカサマをするディーラーなんて、ざらにいると思うのですよ」

「まあ、あるいは君の言う通りなのかもしれないね」

「だけど、国営のカジノってことになると、どうですか?」

「恐らく、純粋に利益率だけを重視していることだろう」

「それって、健全だってことですよね?」

「そうなるね」


 私がそう答えると、メイヤ君は「でしょうっ!」と鬼の首を取ったような顔をして、「ばばーんっ!」と声を張り上げつつ、建物を紹介するようにして両手を広げて見せた。


「ここがその国営カジノなのですよ!」

「よくもまあ、街の端っこにあるこんなカジノを見つけてきたものだね」

「褒めてください」

「いいや。呆れたくなる」

「まあまあ、行ってみましょーっ、れっつらごーですっ」

「君につきあっていると時折頭痛を覚えるのは気のせいかな」


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