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超Q探偵  作者: XI
127/204

28-5

 ミン刑事が事務所を訪ねてきた。ソファに座り、メイヤ君が出したコーヒーをすする。


「彼の二人の仲間はどうなりましたか?」向かいの席で、私は訊いた。

「警察だって無能じゃない。だから至るところを封鎖していたわけだが、一点突破をゆるしちまったよ。ウチのニンゲンが三人殺された」とミン刑事は答えた。「くだんの二人はもうとっくに逃げちまったことだろうな。二度とお目にかかることもないだろうさ」

「何か大きな組織がバックについている可能性は?」

「死んじまった部下には申し訳ない。本当に申し訳ないんだが、ヤツらの裏に何があろうが、管轄外でやってくれる分にはいいんだよ。まあなんにせよ、今こうしてメイヤが俺の前に座ってくれているのは何よりだ」

「おぉ、ミン刑事、それって愛ですか?」

「ああ、そうだ、愛だよ。メイヤ、俺はおまえのことを心底、愛している」

「そう言われても、私はマオさんから離れたりはしませんからねっ」

「そいつは何度も聞かされたセリフだ」

「だけど、ミン刑事のことも好きだったりします」

「その言葉だけで充分だよ」


 ミン刑事はそう言うとソファから腰を上げ、「じゃあな」と言って、事務所をあとにした。


 そのミン刑事がついていた席に、メイヤ君は座った。向かい合う格好になる。彼女はふぅと吐息をつくと、私のほうに目を向けてきた。


「あのですね、マオさん、本音を言います。聞いてもらっていいですか?」

「いいよ。なんでも聞こう」

「実はわたし、時々、考えたりするのです。例えば、どこかの商店に嫁いだらいいのかなあって。やっぱりそれがまともな生き方なのかなあって。誰かの子供を産んで静かに暮らすほうが幸せだったりするのかなあって」

「その考えは間違っていない。誰かと一緒になって、その誰かとの間に子をもうける。それはそれで、幸福感が得られることだろうからね」

「では、今の私は誤った人生を歩んでいるのでしょうか」

「ある意味、そうなのかもしれない」

「でも、子を産むとしたら、その相手はマオさんがいいのです」

「そうなのかい?」

「そうですとも。わたしが赤ちゃんを授かりたいと思った際には、マオさんはわたしとセックスをしてくださいますか?」

「また率直な文言が出てきたね」

「セックス、セックス、セックスです。マオさんとセックスがしたいのですっ」

「赤ちゃんうんぬんはどうでも良くて、実はわたしに抱かれたいってだけなんだろう?」

「てへへ。まあ、そういうことなのですけれど」

「前に病院でキスをしたことは、覚えているかい?」

「はい、しました。ねっちょりとした感覚を忘れられないでいます」

「その時に伝えた言葉に嘘はないよ」

「わたしとマオさんとは両想いだということですよね?」

「うん」

「だったらやっぱりセックスしましょうよぅ」

「これは決まりごとなんだよ、メイヤ君」

「決まりごとだなんて言葉でごまかさないでください」

「だけど、不健全ではありたくない」

「肉体関係にある探偵と助手がいてもいいと思います」

「良くない」

「何故なのですか?」

「私の価値観の問題だよ」

「その価値観をぶっ壊してやりたいです。なんでもいいので抱いてください」

「抱かない」

「ほら、またそうやって突き放すようなことを言うー」

「まあ、今後も上手くやっていこう」

「ほら、またそうやってはぐらかすようなことを言うー」


 メイヤ君は不満そうに、ほおをぷっくりと膨らませたのだった。


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