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超Q探偵  作者: XI
125/204

28-3

 二日後。


 まいった。メイヤ君が帰宅しない。おつかいに出ていったきり、待てど暮らせど戻ってこないのだ。ミン刑事に連絡を取ったところ、ヒトをたくさん動員して探すと約束してくれた。彼女がいなくなってしまったとなると、彼も気が気でないことだろう。


 散々ぶん殴られてまだ二日。なので、少し動くだけで体中に鈍痛が走り、ヒドい頭痛に見舞われ、加えて吐き気なんかももよおしたりするのだけれど、そんなことにはかまっていられない。全身に巻かれている包帯を取り払い、ちゃんと服を着て、両手を突き上げ、うんと伸びをする。だいじょうぶ。きちんと動ける。これなら何があってもすぐに行動できるだろう。


 事務所で彼女が見つかったという連絡を待った。だけど、あと一時間が経過しても朗報がなければ、自らも捜索に加わろうと考えていた。


 三十分が経ったしたところで、デスク上の黒電話が入った。私は受話器をすぐに取りあげた。だが、期待したミン刑事からの連絡ではなかった。


「よぉ、探偵さん。警察がわんさか湧いているようだが、首尾はどうだ?」


 忘れもしない。その声は薄暗いあの倉庫で、強烈な一撃でもって私の意識をってくれた男のものだった。名はリッチと言っていたように思う。


「私に連絡を寄越されたということは、貴方がメイヤ君をさらったんですね?」

「メイヤか。いい名前だ。そして面白いお嬢さんだ。電話番号も簡単にしゃべってくれたよ。彼女はおまえが助けにくると信じ込んでいるらしい」

「私に執着される理由はなんです?」

「だから、おまえさんのことを面白い男だと感じているからだよ。もう一度、会いたくってな」

「だったら、直接、訪ねてくれば良かったんですよ」

「それじゃあ気が利いていない」

「貴方の仲間に加われば、人質を解放してもらえるんですか?」

「場合によっては、な」

「食えないかたですね」

「それはおまえもだよ、探偵さん」

「どこの公衆電話をお使いに?」

「東の港だ。おまえをなぶってやった場所で待つことにする」

「詳しい居場所を教えてください」

「住所はわからん。ただ、三角屋根の倉庫だ。このあたりは丸い屋根ばかりだから、それで判別がつくだろう」

「了解しました」


 リッチ氏らはとても賢い連中に見えた。『プロの殺し屋』。本当に、そういった呼称がとにかくしっくりくるのである。なのに、居所をなんのためらいもなく教えてくれた。不思議な手合いだ。ある種の馬鹿だとも思う。否。彼らは常に状況を楽しんでいるのだろう。そのへん、鼻につく。鼻っ柱の一つもへし折ってやろうという気になる。


「とっとと来い。警察が先に到着するようなら、お嬢さんの命は保証しない」

「わかりました。動くなと言っておきますよ」

「ほぅ。思いのほか、おまえさんは大物であるようだな」

「顔が利くというだけです」

「正直、警察の初動の速さには驚いている」

「貴方がさらった女性は要人なんですよ」

「そいつは知らなかった」

「急行します」

「ああ。首を長くして待っている」


 私は黒いチェスターコートに袖を通し、速やかに事務所をあとにした。


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