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超Q探偵  作者: XI
116/204

26-5

 広い広い客間に通された。天井には細かくきらめくシャンデリア。床にはふかふかの白いじゅうたん。上座の位置に実に男前のソウハ氏が腰を下ろす。長いソファにメイヤ君とモニカちゃんがつき、その向かいに私は座った。ヤーイー氏はトレイを抱えたまま、戸の前に立っている。


「またお越しいただけるとは思ってもいませんでした」ソウハ氏はゆったりと微笑んだ。「ええ。貴方と会えると、なんだかとても嬉しい」

「恐れ入ります。野暮なことを伺います。新婚生活は順調ですか?」

「幸せに暮らしています。ヤーイーを迎え入れることができて本当に嬉しく思っている」

「そんな、ソウハ様……」

「だからヤーイー、ソウハ様はやめてくれないか? 何度もそう言っているだろう?」

「そ、それはそうなのですけれど……」

「本当に微笑ましい」私は目を細めた。「お二人が一緒になられたことについて、心から祝福したい」

「それもこれも、マオさんのおかげなのですが」ソウハ氏は優しげな顔をした。「実はね、そろそろ子が欲しいと思っているところなんですよ」

「そ、ソウハ様、それは」

「マオさんが相手なんだ。隠すようなことでもないだろう?」

「ま、まあ、それは、その……」

「毎晩、セックスをしていらっしゃるのですかっ」メイヤ君は興味津々といった様子だ。「だとしたらドキドキですっ」

「どうにもヤーイーは裸を見られることが苦手みたいなんですけれどね」

「わーお、それってエッチな話ですねっ」

「や、やめてください、ソウハ様。それに、メイヤさんも……」

「ヤーイーさん」

「は、はいっ、なんでしょうか、メイヤさん」

「早く元気な赤ちゃんを産んでくださいね?」

「それはその、頑張りますけれど……」

「頑張ってくださいっ!」

「は、はいっ、頑張りますっ!」

「それで、ご用件は?」ソウハ氏が静かに口を開いた。「早速、お話をお伺いしたい」

「今、メイヤ君の隣に座っている少女についてなのですが」

「実にかわいらしいお嬢さんですね」

「彼女はモニカちゃんといいます」

「モニカさん?」

「ええ。率直に言います。彼女をこの邸宅で働かせてやってはもらえないでしょうか?」

「それはかまいませんが……何か裏があるんですか?」

「その点については、あまり口にしたくはありません」

「ふむ……」

「ぜひとも、面倒をみてやってください」私は頭を下げた。「お願いします。ソウハさん」

「やめてください、マオさん」ソウハ氏は申し訳なさそうに言った。「ええ。頭を下げるだなんて、おやめになってください。いいですよ。そして深くは問いません」

「助かります」

「どうかお顔を上げてください」

「君の就職先が決まったよ?」メイヤ君は微笑みながら言う。「やったね、モニカちゃんっ」

「頑張るっ」モニカちゃんは両手で拳をこしらえた。「メイヤおねえちゃん、私、頑張るっ!」

「ヤーイー」と、ソウハ氏が呼び掛けた。「モニカ嬢に合うメイド服をすぐに手配しなさい。それと、給仕の『いろは』は君が教えてあげるように」

「はい、それはもう。重々承知いたしております」

「ご快諾いただき、ありがとうございました」


 そう言って辞去しようと腰を上げると、胸にモニカちゃんが飛び込んできた。


「どうしたんだい?」私は彼女の頭を撫でた。「不安だと言うのであれば、足しげくここを訪れることにするよ?」

「そうじゃないの。そうじゃないんだよ?」

「だったら、なんだい?」

「優しくしてくれて、ありがとう」

「ソウハさん」私はそう呼びかけた。「本当に彼女のこと、お願いしますね」

「責任をもって、お預かりさせていただきます」

「だ、そうだよ。良かったね」私は腰を屈め、モニカちゃんのことをぎゅっと抱き締めつつ、彼女の耳元でささやいた。「人生、そう捨てたものでもないだろう?」

「そう、思った……」モニカちゃんが涙声で言う。「ありがとう、マオのおじちゃん。私、いつか絶対、恩返しをするからね?」

「くじける暇があれば前を向きなさい。悲しいことがあっても前に進みなさい。わかったかい?」

「うんっ」


 すべて、上手く運んだ。ソウハ氏とヤーイー氏を訪ねて、本当に良かった。

 モニカちゃんが今後の人生を楽しく健やかに生きられることを願ってやまない。


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