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超Q探偵  作者: XI
114/204

26-3

 二人掛けのソファの上でタオルケットをかぶり、静かな寝息を立てているモニカちゃんである。私もメイヤ君も、ほっとした顔をして、その様子をしばらく見つめていた。


「良かった。寝入っているようだ」

「安心して寝られるなんて、久しぶりのことかもしれませんね」

「今夜はどうしようか」

「どうしようか、って?」

「私はデスクで眠る。だけど君は一人掛けのソファでは眠れないだろう?」

「眠れますよぅ」

「君は絶望的に寝相が悪い」

「絶望的にときましたか。バッサリですね」

「一つ、布団を買っておいたほうがいいのかもしれないね」

「あっ、でしたら、ダブルのを買いましょう」

「広い寝床が好きなのかい?」

「何言ってるんですか。私とマオさんが一緒に寝るのですよ」

「一緒に?」

「ええ。一緒にです」

「遠慮しておこう」

「どうしてですか?」

「いつ君に襲われるかわからないからだよ」

「あっ、バレました?」


 私はやれやれと吐息をつきつつ、改めてモニカちゃんの寝顔に目をやる。安らかな顔だ。すやすやという擬音が聞こえてきそうだ。


 メイヤ君は一人掛けのソファに座ると、うーんと伸びをした。


「ところで、モニカちゃんのこと、どうするおつもりなのですか? マオ探偵事務所に新たなメンバーが加わるとでも?」

「さすがにこんな小さな女のコは雇えないよ」

「じゃあ、モニカちゃんにこれからどうしたいか決めさせるおつもりなのですか?」

「いや、それも無理だろう。何かを選ぶにしても、彼女の世界は狭すぎる」

「それじゃあ、どうするのですか?」

「一つ、考えがある」

「考え?」

「ああ。『彼』ならモニカちゃんのことを拒んだりはしないだろう」

「『彼』?」

「今日はもう遅いからね。朝になったら連絡を入れてみようと思う」

「私はもう寝てもいいってことでしょうか」

「うん。安心して眠りなさい」


 朝、起きると、メイヤ君は案の定、地べたに転がっていた。横たわって、ぐーすかぐーすか眠っていた。彼女の場合、一人掛けのソファなどという狭い場所で上手いこと寝られるわけがないのだ。そんなに器用ではないのである。「うへへぇ、マオさん、そんなところ触っちゃダメですよぅ」、「うへへぇ、マオさんってばテクニシャンですねぇ」とか意味不明な寝言を呟いている。どんな夢を見ているのかは知りたくもない。


 とりあえず、メイヤ君にタオルケットをかぶせてやり、それから『彼』の家に電話をかけた。コールが三つなる前に、相手が出た。女性である。聞き覚えのある声だった。


「はい。ソウ家でございます。どなた様でいらっしゃいますでしょうか?」

「マオと申します」

「えっ、マオさんですか?」

「良かった。覚えておいでなのですね」

「忘れるわけがございません」

「尚、貴家の電話番号を知っている理由は秘密です」

「それはかまいませんけれど、どういったご用件でしょうか?」

「面と向かってお話しさせていただきたい。二時間後に伺います。よろしいですか?」

「あ、はい。わかりました。それで、私に御用ですか?」

「いえ。貴方のご主人に用があります」

「あ、ソウハ様にご用事なのですね?」

「ソウハ様、ですか」

「あ、いえ、その、他意はなくて、その、まだ『主人』と呼ばせていただくのに慣れていないというかなんというか……」

「私は貴女のそういう『いじらしい』ところが好きですよ」

「好きだなんて、そんな……」


 電話の向こうで『彼女』がほおを赤らめている姿が想像できた。


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