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超Q探偵  作者: XI
109/204

25-2

 対局が進む。優勢ではないが、劣勢でもない。とはいえ、私の将棋に関する知識なんてたかが知れている。いつどのタイミングで仕掛けてくるのかはわからないし、仕掛けてこられたが最後、受けきれないかもしれない。


「そう、そこだ。同じような局面だった。だが死んでしまった彼は、ここで見誤った」老人は感心したようにうなずいた。「この場面では一手損であっても、君のように、そこに『』をらすべきだった。彼はその筋に目が向かなかったから、わしに押しきられたんだ」

「その彼とやらは、先ほどまでここに転がっていた死体のことですか?」

「そうだ。彼はそれなりに有能な打ち手だった」

「時間制限などないわけです。なのにその彼とやらは失敗した。ここが勝機だと考え、喜び勇んだことでしょうね」

「場の雰囲気を悟ることはできているかね?」

「といいますと?」

「確かに時間の制限はない。だが、長くは黙していられない緊張感がある。すなわち、彼は焦って打っていたのだよ」

「将棋、あるいはチェスですか。いずれに関しても、確かに、のめるこむだけのルール性があるように思います」

「わしは神ではない。干からびた一人の老人だ。なれば、負かしてくれるニンゲンくらい、現れても良さそうなものなんだなが」

「そうなのかもしれませんが、正直、お強い」

「君も中々に手ごわい。わしにも余裕はない」

「お伺いしたい」

「何かね」

「貴方の資産目当てにここを訪れたやからには救いの余地などない。愚かだとすら思います。そういった連中を向こうに回して、貴方は快楽を得ることができたのですか?」

「そうではないと述べたつもりだ。ただ、私は勝負をしているさいちゅうには、確かな生を実感することができる。このしおれきった体に生きた血がみなぎることを感じ取ることができるのだ。わしはハンターではいたくない。あくまでもデュエリストでありたいのだよ」


 『銀』を突いた。老人は『受け』に徹し始めた。『桂』を上手いこと使って進行を食い止める。『角』が成り、やがては『飛車』も効いてきた。

 

 老人は小さくうなずくと、「それでいい。君の一手一手はまさに妙手だな」と言って、微笑んで見せたのだった。


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