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その夜
「はぁ?女の子とデート?あの正志が?」
「「お兄ちゃんがデート!!」」
「ちげ~よ。話聞いてたのかよ。
後輩と一緒に映画が見に行くだけだよ」
「でも誘うってことは好きなんじゃない」
家に帰って来週の日曜日のことを言うとその話を聞いていた姉と妹二人が騒ぎ出した。
「あの子はどうしたの?
海斗君の彼女さんじゃなくて、あの・・・同じ歳のマネージャーさん。
人形みたいで可愛らしい子。
あの子とだって仲いいんでしょ?
普通彼女の方を誘うはずでしょ?」
いや、ここにもう一人いた。母親と言う女が。
ニヤニヤと面白そうに笑ってるし。
「遥のことね。彼女はまぁ、住む世界が違うから。
誘うに誘えないでしょ」
「・・・お兄ちゃんが女の子を呼び捨てにしてる。
実はこっちが本命だったりして」
「怪しいよね。もしかして遥さんに妬いてもらいたいんだ」
「うっわ・・・そんなことするのお勧めしないよ。
むしろその子に気があるのかと思って謙遜しちゃうから早めにやめなよ」
「だからちげぇって言ってるだろうが!!!」
それから少々揉めるという長い夜が更けていった。
「お待たせしました」
5分前に来たらいなくて少し待っていた。
そしてとことこと可愛らしいしぐさでピンクがやってきた。
「すみません。待たせてしまいましたね」
「いや、さっき来たとこだし。行こうか」
「はい」
楽しそうに笑うピンクをみながら俺たちは映画館に向かうのだった。




