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本当の気持ち(完)

夜、ミレイユは離宮を訪れた。

庭園に佇むテオドールを見つけ、彼女はまっすぐそちらへ走っていった。

彼は湖面に浮かぶ月をじっと見つめている。


「……来たか」


テオドールは猫のミレイユが背負う袋を解き、中から猫化解除の薬を取り出した。

その薬を飲ませてもらい、彼女は人間に戻る。


「ありがとうございます。こうして殿下とこっそりお会いするのも……すっかり慣れましたね」


「もう隠れて会う必要はないのだがな。しかし、ここで会うのが習慣になっている」


テオドールが離宮にいる理由はもうなくなった。

王位の継承者として城で過ごし、何不自由ない暮らしを送ることができる。

それでも彼がここにミレイユを招いた理由は。


「大切な話があると言ったな」


「はい。私がお城で薬師として登用される件についてでしょうか?」


「いや、そうではない」


テオドールは静かに跪いた。

急な彼の行動にミレイユは驚く。


「ど、どうしたのですか?」


「ミレイユ。俺はお前のことが好きだ」


「……え」


ミレイユの心臓がはねた。

あまりにも唐突な告白だった。

テオドールはそっとミレイユの手を取る。


「……気づいたんだ。俺にはミレイユが必要だ。お前と出会ってから、俺は一人でいる時間が寂しいと思うようになった。今まで孤独など気にしなかったのに」


「殿下……」


「こんな気持ち、今まで誰にも抱くことはなかった。俺はミレイユに……恋をしているのだと思う」


まっすぐに彼は瞳を見つめてくる。

目を逸らすことなく、ミレイユに本音をぶつけてくる。

だから自分も本心で返すべきだと……ミレイユは思ったのだ。


「わ、私も……殿下と一緒にいるとき、すごく楽しいです。私ももしかしたら、殿下に恋心を抱いているのかもしれません。でも……私は平民です」


どうしても取り払えない壁。

それは身分の壁だった。

テオドールは王族で、ミレイユは平民。

恋に落ちることなど許されるはずもない。


「身分の壁など俺が壊してやる。誰がなんと言おうが、俺はミレイユだけを愛している」


「……うっ」


テオドールの手に、雫が落ちた。

それはミレイユの涙。

彼女の瞳からとめどなく涙があふれてくる。


「ど、どうした? 何か怖いことを言ってしまったか?」


「ち、違うんです……すごく嬉しくて。殿下が私を好きだって言ってくれることが、嬉しすぎて泣いてしまいました。私……誰かにそこまで愛されたことがなくて、こんなに嬉しいものなんだって……」


ミレイユの体が温かく包まれる。

テオドールは彼女をそっと抱擁していた。


「ならば、その感動をいつまでも届けられるように。俺がお前を愛し続けよう。決して手放しはしない」


いつまでも泣いているわけにはいかない。

こんなに嬉しい気持ちをテオドールが届けてくれたから。

ミレイユも笑顔で言葉を返さなくてはならない。



彼女は涙を拭い、とびきりの笑顔を彼に向けた。


「不束者ですが、よろしくお願いします……!」


「ありがとう、ミレイユ。俺の気持ちを受け止めてくれて」


そして返ってきたのもまた、見たこともないようなテオドールの笑み。

心の底から嬉しそうに、愛おしそうに。

美しい笑顔をミレイユに見せてくれた。



テオドールは静かに屈みこみ、ミレイユの手の甲に口づけをした。

完結です。お読みいただきありがとうございました!

よろしければ評価を入れていただけると嬉しいです。


次回作はこちら

『呪われ姫の絶唱』

https://book1.adouzi.eu.org/n3910io/

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