第七十話 御曹司、ひっくり返す(1)
『うおおおお、あめしょおおおおお!』
この熱気である。登場しただけでこれである。大した人気だ。人望もこれだけ集めれば力だろう。
会場に集まった観衆はおおよそ2500人ほど。その1/3以上を占める1000人は、完全にあめしょー目当てである。自称女子中学生であるこの獣人少女に熱い声援を送るのが、端から端まで美青年であるというのは、ゲーム内だからこその珍事と言えるだろう。人間もいればエルフもいるし、有料の希少種族もいくらか混じっているように見えたが、日本人離れした容姿のイケメンどもが、声を揃えてひとりの少女の名を叫び続けるこの光景は、現実との剥離性に比して妙に生々しい。ぶっちゃけ不気味だ。忌々しいことに、彼らが羽織る法被はアイリスブランドの謹製であった。
あめしょーは、フレンド数がカンストしている唯一のプレイヤーである。こればっかりはレベルを上げてどうこうできるような問題でもなし。その成果を、このように目に見える形で表現されれば、正直圧倒もされる。
彼らの興味は、ショー全体というよりは、やはりあめしょー個人に向けられている。実際、彼女がどのような格好で壇上に立とうと、その野太い嬌声が止むようなことはなかっただろう。
「みんなーっ、今日はぼくのために来てくれてありがとーっ」
だからってこれはない。アイドルかよ。
マイクを握ってのこのパフォーマンスは、実のところ羨ましいと言うほかなかった。なんという面の皮の厚さであろうか。これが若さか。ヨザクラは、ステージの裏側からあめしょーを眺め小さく歯噛みをしていた。あの圧倒的人気に勝つためのあざといパフォーマンスが、自分には出来るのだろうか。
「ところで、その彼女の着ている防具についてですが」
「はい」
司会進行の芸人氏に促されて、芙蓉もマイクを取る。
「ご覧の通り、あめしょーさんは可愛らしい方ですから、デザインの方はシンプルにまとめさせていただきましたわ」
全体の興味が、モデル自身の方に向けられているということもある。芙蓉はそのあたりを敏感に察したか、デザインに関しての長々とした説明は避け、あめしょーの魅力を強調するような解説の方にシフトしている。大体のプレイヤーはファッションに興味がなさそうであったし、賢明な判断ではあるか。
しかし実際のところ、芙蓉のデザインが良い仕事をしていたのは事実である。柄モノを避けてシンプルさにこだわったデザインには清涼感があり、あめしょーの幼くもはつらつとした魅力をきっちりとアシストしていた。目を引くのは、空色のピンタックブラウスとライムグリーンのショートパンツという組み合わせだ。柄モノや肌見せなどの今夏最新のファッショントレンドを避けつつも、ペプラムやパステル・ネオンカラーといった息の長い定番アイテムのおかげで野暮ったさはない。
ゲーム内なんだし、ファッションだけでは興味を引けない、などという考えは浅はかであった。確かに、多くのプレイヤーは芙蓉のデザインした服を見ていない。だが、あめしょーの存在感と魅力を際立たせているのは、間違いなく彼女の服だ。実力者ゆえの貫禄とでも言うのだろうか。芙蓉の姿勢は、実に正々堂々たるものであった。地力が備わっている以上、過度な自己主張など一切必要ない。
奇をてらうこちらの考えを見透かしているわけではないだろうが、防具のデザインそのもので対決しようとするこちらとは真逆の姿勢であったかもしれない。多くのユーザーのニーズに合わせたアイリスのデザインも、ひとつの正解であることには間違いないはずだが。
「あー、可愛くって良いなぁ」
審査員席に腰掛けた騎士団のティラミスが、女の子らしい素直な感想を漏らした。彼女も業の深いゲーマーとは言え、女子力の高さには定評がある。人気プレイヤーのひとりであるティラミスの言葉は、ファッションに疎い観衆の深層心理に『このデザインは良いデザイン』という刷り込みを行った。
「それじゃあ次は、アイリスブランドの方の新作を見せていただきましょう!」
司会進行の芸人氏がそう言うと、ステージ上に流れる音楽が切り替わり、証明が落ちる。サイケデリックなステージライトが踊るように周囲を照らし、スモークが噴出した。BGMと演出はこちらの指定による。いわゆる和ロックと呼ばれるものだ。ショーの名目に似つかわしくない雰囲気に、観客がどよめく。
とうとう来ちゃったか。ヨザクラは覚悟を決めた。この日のために鍛えた敏捷ステータスと言っても過言ではない。この瞬間ばかりはファッションショーということを忘れ、アクロバティックな連続倒立前転で壇上に躍り出た。ド派手な演出と登場シーンでツカミを得る。双頭の白蛇の十八番であるはずだが、この時ばかりは真似させてもらう。
大音量の和ロックにかき消されつつ、小さな歓声が聞こえた。重厚でアップテンポな曲調に合わせ、ステージ上で飛び跳ねつつ虚空に向けてアーツを繰り出していく。まるで演舞だ。だが結構。可愛さで勝てないのなら、かっこよさで勝負である。エドワードからもらったオリジナルデザインの武器を、ジャグリングのように取っ替えひっかえして、架空の敵に向けて次々と叩き込んでいく。イメージ。
最後は素手であった。BGM一周すると同時に裏拳の姿勢でぴたりと動きを止める。照明も元に戻った。
残心を保ちながら姿勢をただし、直立姿勢のままゆっくりと一礼。会場から拍手が起こった。よし、掴みはOK。緊張に全身がきりきりと痛む感触を覚えながら、ヨザクラは内心でガッツポーズを決める。
「どうも、皆さんはじめまして。メイド忍者のヨザクラです」
「すごい、すごーい」
脇に控えていたあめしょーがけらけらと笑いながら手を叩いた。
「なんか、ヒーローショーみたいだった!」
「いやぁ、お恥ずかしい」
ヨザクラは頬を掻く。ヒーローショーか。まぁ、確かに意識はしたかな。
前に出てきてしまっているので、アイリスが今、どんな表情でこちらを見ているのかはわからない。彼女の意に添えていると良いのだが。という思いと、彼女が今、過剰なプレッシャーを感じていなければ良いのだが。という思いがある。なにしろ、あの芙蓉のあとだ。
「じゃあ、このヨザクラさんの防具について、アイリスブランドのデザイナーのアイリスさんから」
「はーい」
聞こえてきた声は、存外に軽いものだった。安堵を漏らす。
「えぇっと……、改めて説明っていうのも、なんか恥ずかしいわね。見ての通りのメイド忍者です。ヨザクラさんのクラス構成、従者、偶像、忍者のイメージに合わせた衣装で、素材はランカスティオ霊森海に生息する昆虫型モンスターのものを多様しています。重量は軽めでレベル制限はなし。一式で敏捷と感知系に補正がかかるので、20レベルのヨザクラさんでも、さっきみたいな激しいアクションができるようになります」
ほう……という感嘆の声は、まずは審査員席から聞こえてきた。ストロガノフ、ガスパチョ、ゴルゴンゾーラがまず興味を示す。クラス的にもっとも恩恵を受けそうであるパルミジャーノは、どちらかと言えば裾から覗く太腿にご執心で、キングキリヒトに至ってはさきほどから興味もなさそうに視線を逸らしている。
デザイン自体のベースは、いわゆる和メイドと呼ばれるタイプのメイドコスだ。忍者らしいアクション性を重視して裾の裁断は比較的大胆である。パルミジャーノの視線をはっきりと感じる太腿は、鎖帷子ストッキングに覆われ、更にニーハイブーツで隠している。腕の手甲や膝当てなどの剣呑なパーツには手裏剣の意匠があった。
こちらのセールスポイントは、見た目と性能の一貫性である。防具としてならば、むしろこっちが正統派だ。エドワードの助言を得て完成したこの防具は、アイリスの言う通り敏捷・感知系へのステータス補正が高く、プレイヤースキル次第ではひと回り上のレベルの戦闘にも食いついていける。
加えて、武器もある。ヨザクラはにこりと笑って、ティーポットとソーサー、そしてカップを取り出した。アイリスが解説を続ける。
「こちら、ソーサーが手裏剣、ティーポットがマシンガンになっています。先ほどのアクションでご覧になったとは思いますが、あとはティースプーン型のクナイやモップ型のジャベリンなどがあります」
次々と武器を取り出していくさなか、ヨザクラはちらりと芙蓉を見る。こちらの奇抜な防具デザインに対する反応。以前のエドワードの時のように、怒りだしはしないか、と思っていたのだが、彼女は冷静だった。うがってみれば、どこか悔しがっている様子でもある。
まぁ、彼女の作った〝防具〟の限界がゆるふわ忍者であることを考えれば、オシャレさとクラスイメージを両立したアイリスのデザインには、何か思うところがあるのかもしれない。それが過剰にあざとさを狙ったものであったとしても。
「いやぁ、なんていうか、互いに個性的というか、異種格闘技対決みたいになっちゃいましたねぇ」
司会進行の芸人氏が笑いながら言う。
「どっちのデザインが良いと思いますか。キングキリヒトくん」
「最初に出た方」
ステージに視線を合わせようともせず、キングはぶっきらぼうに言った。
「へぇー、君はああいう方が好み?」
「いや。メイド忍者とか狙いすぎて寒いなって思っただけ」
キングの言葉は、ヨザクラの笑みを凍てつかせるに足りる。直後、怒涛のように押し寄せる後悔と恥ずかしさをごまかすために、ひとまず彼女は怒った。言ってくれるな小僧。もちろん、表情には出さない。
「まぁ、ひとまずここで集計を取ってみましょうか。皆さんの目の前に、投票用のタッチウィンドウが表示されます」
司会進行の芸人氏がそう言うと同時に、会場のプレイヤー達の目の前に、言葉通りのウィンドウが出現した。
「これはまだ本格投票じゃないですよー。迷ってる方はまだ押さなくても良いですからね。ファーストインプレッション、どっちが良かったか。ちょっと押してみてください。はい、ドン!」
ステージ上に立つ4人。すなわち、アイリス、ヨザクラ、芙蓉、あめしょーの視線が、設置された大型パネルに集中した。〝MiZUNO〟と〝アイリスブランド〟の文字があり、真横に表示された数字が一斉に増えていく。
MiZUNOが1109票。アイリスブランドが726票。いや、727票か。思った以上に伸びない。キングキリヒトめ、最後に余計なことを言ってくれるから。1000人近くがあめしょーのファンだということを考えると、健闘したと言えるのだろうか。
会場にはまだ600人近い未投票者がいる。勝ち目は充分にあるレベルなのだ、が……。
ヨザクラが恐る恐る振り返ると、アイリスは笑顔でこう言った。
「ヨザクラさん、カマトトぶってる場合じゃないわ。プランBよ」
アイリスの毒舌が増している気がする。彼女もキングの暴言にご立腹だ。
しかし、プランB。プランBか。あれを、あれをやれというのか。ヨザクラは頭を抱えた。正直、イヤだ。確かに、あの超古典RPG以来のニンジャの伝統である。ヨザクラには2人の兄がいて、長男の梅彦がウィザードリィ派、次男の桃太郎がウルティマ派だった。どちらもイヤというほどやらされたので、伝統に思い入れはある。それでもイヤだ。
「んっふっふ、ムリはしない方が良いよぅ。ヨザクラぁ」
ディスプレイの票数を眺め、あめしょーは勝ち誇ったような笑顔を浮かべた。
「何を考えているか知らないけどぉ、ぼくにはお友達がいっぱいいるからねぇ。この会場の40%はぼくの味方だヨ? 最後に勝つのは絆の力なんだヨ?」
「い、言ってくれますね。あめしょーさん……」
この時点で笑顔を保つのには、さしものヨザクラであっても相当な苦労を要した。
絆の力、コネの力。それは、かつてカネの暗黒面に飲まれた(今もです)ヨザクラにとっては、手痛い言葉であった。カネの暗黒面から彼女を立ち直らせてくれたのも絆の力である。アイリスや一朗、あとまぁ、えぇと、そう、キリヒツもそうだ。今回見かけていないけど。彼らの協力があったからこそ。
ならば、コネの力をカンストしたあめしょーに、ヨザクラはどうあがいても太刀打ちできないのだろうか。
否である。
あめしょーの言葉は、図らずとも、ヨザクラに最後の決断をさせる一助となった。
「あなたの言うとおりです。あめしょーさん、最後に勝つのは絆の力……」
「でしょ? だから……」
「ですが、私の忠義と友情はっ! それひとつで、あなたのフレンド1000人分の、価値と覚悟があります!」
キッと顔を上げ、手甲につけられた手裏剣の意匠を押す。ヨザクラの全身に電撃のエフェクトが走った。ギミック発動用のキーワードを、高らかに叫ぶ。
「キャストオフ!」
イチローの放った課金剣の一撃を、マツナガは回避する。《アーツキャンセル》によって、発動直後の硬直時間を打ち消して、再び武器を構え直した。追いかけっこは先程から続き、なかなか状況は進展しない。イチローは時計を見た。だいぶ長く付き合ってしまったな、と思う。
マツナガが回避に専念する以上、彼を無視してさっさと飛び立てば良いというのは正論である。が、この戦い、既に単なる足止めなどというものではなくなっていた。剣と剣のぶつかり合う、その裏側で、イチローとマツナガは何度も互いに議論をぶつけ合っている。
「あんたも、身の振り方とか考えたほうが良いんじゃないですかねぇ!」
「またその話かい」
イチローが無造作に放った《スパイラルブレイズ》の奔流は直撃したかに見えたが、過剰に跳ね上げられたマツナガの敏捷系ステータスと回避系スキルが、ダメージ判定の発生を大幅に減少させていた。彼も今はスキルスロット倍加サービスを適用している。彼の強みである回避、隠密系のスキルは、いつもの2倍以上のスキルレベルを伴っていると考えても間違いではない。
とは言え、敏捷・感知系に極振りにしているのがマツナガの能力構成だ。本命の一撃を叩き込むだけで、勝敗は決する。
「別に、あんたが憎くて言ってるわけじゃないんですけどね!」
「それはわかるよ。このゲームの話をしているんだろう」
「えぇ。100年遊べるオンラインゲームなんて、所詮幻想だなんて思いませんかね」
そのフレーズは、ナローファンタジー・オンラインの触れ込み文句であった。イチローもはじめてこの仮想世界に来た時は、その広大さに感動を覚えたものだが、今はマツナガの言う言葉の意味も少し分かる。たった1ヶ月ちょっとで、ゲームを取り巻く環境は大きく変わってしまった。100年という年月の膨大さは、あまりにも重い。
課金コンテンツの均一化にはじまり、マツナガは先程から声高にこのゲームの将来性のことを叫んでいた。イチローが今の状況を、決して長くは保てないこと。その事実を、何度も容赦なく突きつけてくる。イチローの心が揺さぶられるようなことはなかったが、彼はマツナガの言葉の裏に潜む真意に気づき始めていた。
「ポニー社の参入で、この世界は新しいVRビジネスの実験台になりますよ。あそこが〝アナザーライフ〟に代わるメタバースを作ろうとしてるのは知ってるでしょ」
「ナロファンを食いつぶすほど、愚かな運営体じゃないと思うよ」
「それでも寿命は縮まります。間違いなくね。しょせん、オンラインゲームなんて長くは続かないもんですけど。5年も経てばコンテンツは古くなりますしね。オワコンになるんだ。ナロファンだって今がピークですよ。あとは下り坂だ。残るのは出涸らしみたくなった仮想世界です。人がどんどんいなくなって、街はゴーストタウンみたくなる。俺はそういうオンラインゲームを何度も見てきましたがね。寂しいもんですよ。乗り換えのタイミングを逸すれば、あとは沈む船と運命を共にするだけでしょう。誰もいなくなったギルドハウスの中で、静かにサービス終了を待つ。それもまぁ、悪くはないと思いますけどね」
マツナガはいつにも増して饒舌だった。言葉に熱がこもっているのも実感する。アバター同士がいたちごっこを続ける中、しかしイチローは思った。彼の言葉にはとりとめがない。だからこそ、感じ取れるものもある。
「ナンセンスだな。サービス終了を怖がっているのは君じゃないのかい」
「あぁ、やっぱりわかりますか」
マツナガは軽薄な笑みを浮かべて言った。
「誰も見てないからって、いろいろ言いすぎましたかね。せっかくあんたと2人きりになったんで、いろいろお話してみたかったんですよ」
「時間稼ぎの一環として?」
「えぇ、まぁ」
バツの悪そうにするでもなく、飄々と答える。イチローは課金剣を打ち捨て、アイテムインベントリを開いた。
「でも目論見は悪くなかったよ。いろいろと考えさせられる話ではあったかな」
「そうでしょう。まぁ割と真意です。あんたには釈迦に説法だとは思いますけどね、まぁ、楽しめるうちに楽しんでおいたほうが良いですよ」
「そうさせてもらおう」
イチローは、インベントリから一本の剣を取り出した。
金の柄に銀の剣身。細身の中に意匠を凝らした、装飾具のようなひと振りは、煌剣シルバーリーフという。マツナガも、イチローの意図を悟っただろう。戯れに終止符を打つ。イチローは、次の一撃で追いかけっこを終わらせるつもりだった。
イチローは、シルバーリーフの柄を握り、逆手に構えた。腰を低く落とし、目を細めて、鋭く狙いを定める。マツナガは正面からそれを見据えつつ、ハイドコートの効果を発動させた。自身の存在感を隠蔽し、攻撃に備える。イチローは、目前にいながらもいきなり姿が希薄となったマツナガの指先が、メニューウィンドウを開くように宙を叩いたのを、辛うじて目撃した。コクーンの演算処理能力が、ぎりぎりのラインでそれを可能にする。
イチローは山道を蹴った。シルバーリーフの剣身に闘気がみなぎる。魔法剣士専用攻撃アーツ《ストラッシュ》! 練り上げられた威力は勢いを増して、直前に立つ人影に食らいつかんとする。瞬間、マツナガと思しき気配が直撃を避けるために飛び退いたのがわかった。イチローは気にせずに、シルバーリーフを勢いよく背後の大岩に叩きつける。
大岩に設定されたオブジェクトHPを削り取って、有り余るダメージが放出された。発生したエネルギーは余波となり、まばゆいばかりの光を発して周囲のグラフィックを塗りつぶしていく。例え飛び退いたところで、ゾンビレギオン数体分の体力を一気に喰らい尽くすこのダメージから逃れることはできなかっただろう。
光が晴れる頃には、周囲のオブジェクトとキャラクターは、綺麗さっぱり一掃されていた。イチローは目を瞑り、シルバーリーフを鞘に収める。直後、彼の首筋をめがけて、一本のナイフが投擲された。
「ん、」
イチローは人差し指と中指で、投げられたナイフを受け止める。
「よく生きていたじゃないか」
「いやぁ、あめしょーさんが、あんたにもらったバリアフェザーが残ってるって言うもんだから」
背後でマツナガの軽薄な声が聞こえた。
「でも、これで打ち止めですよ。これ以上あんたにちょっかい出してトドメ刺されるのもイヤだしね。ハイドコートはレアアイテムなんですよ。そのへんにドロップしてるのも持って帰らなきゃならないし」
「なるほど。まぁ、君が話すこともないっていうなら、僕はそろそろ先へ行こう」
「ひっくり返してくるんですね」
「それはどうかな。意図的にひっくり返すのが好きってわけじゃないんだけど。ま、僕のやりたいようにやるさ」
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× 金の柄に銀ぼ剣身
○ 金の柄に銀の剣身




