表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/112

22 絶望

 俺の生み出した炎の領域が、神を飲み込むが、その炎から飛び出す影を見て、舌打ちをする。

 スキルがないとはいえ、オリハルコンの鎧の防御力は伊達じゃないようだ。

 だが――


「自慢の髪が少し焦げちまったんじゃないか?」


 俺が挑発するようにそう言うと、神は苦虫を噛み潰したようにこちらを見てきた。

 

「貴様、一体何をした!」

「言っただろ、ここは既に邪神――いや、キーシステムの領域だ。お前にできたことをあいつができない道理はない」

「何をバカな。彼奴はただの異界の機械仕掛け。余が一部権限を与えたとはいえ、生命ですらない。神である余と同じことができるわけないだろうが」


 忌々し気に呟くが、スキルが使えないのは事実だろうからな。

 俺が仕掛けた仕掛けに気付かない以上、こいつはスキルが使えない。


「弓隊、撃て!」


 シファの号令により、魔族達が放った矢が神へと降り注ぐ。

 神は鎧の小手でその矢を受け止めるが、それでも防ぎきれない。

 矢尻が神の頬を掠め、一筋の傷を作る。


「余の顔に……傷が。許さん!」

「いや、それ俺の身体なんだけどな」

「ファイヤーボール! ……ぐっ、低級魔法も使えぬのか……」


 炎の球が出てこない自分の手を見つめ、視線を指へと移した。

 しまった、気付かれる。


 その前に神を殺そうと、俺は破邪の斧を振り下ろした。

 だが、神はニヤリと笑い、指輪を外し、「サンダーストーム!」と魔法を唱えた。


 直後、神の周囲に雷が無差別に降り注いだ。


「タクトさん、どうなってるんですか?」

「思ったより気付かれるのが早かった」


 ミーナの問いに、俺はそう答えた。


「種はこれか。全く、余としたことが、こんな初歩的なことに気付かぬとは」


 神は、自分の指にはまっていた繋がりの指輪を握りつぶした。


「悪い、さっきミーナから摺り取ったんだ」

「え?」


 俺はそう言って、自分の指にはめていた繋がりの指輪をミーナに返した。

 神がさっきまでつけていた赤い指輪とミーナ達がつけている青い指輪は一緒にはめると仲間になる。

 そして、俺は神と仲間になることで、手動で神が持つスキルを全て外した。

 キーシステムの力で神のスキルを封印したなんて真っ赤なウソだ。


「余に気付かれずに仲間の指輪をつけるとは、さてはタクト、貴様盗賊のスキルレベルを上げたな」


 そこまで見抜かれているとは、俺は内心舌打ちをする。

 かつて山賊のアジトで手に入れてから死にスキルだったが、この作戦を思いついてから、シファに手伝ってもらってレベルを上げまくった。素早さの高い相手に物を盗むと経験値が高いらしく、比較的楽にレベルを上げて、今では56まで上がってる。

 それでも、器用さがメインで上がって、あとは速度が微増するくらい、それ以外のステータスは上がらないので、今はつけていないが。


「……余に傷をつける奇策、褒めて遣わす。永遠とわを生きる身で、これほど楽しい時間を過ごしたのは初めてだった」

「おいおい、勝ち誇っていいのか? 言っちゃなんだけど、俺の作戦はまだまだあるんだぜ?」

「そうか。なら作戦が発動するまえに終わらせるか」


 神はそう言うと、両手を腕に上げた。

 神の手の上に雷が集まっていく感じがする。


 サンダーストーム……いや、あれはただのサンダーストームじゃない!


「みんな、すぐに避難しろ!」

「遅い! サンダーストーム!」


 俺にとっても、そして俺の身体を使う神にとっても一度きりの切り札。

 決死の一撃……魔法に対して使えばMPの消費を10倍に、そしてその威力を10倍にする。


 雷は、周囲神の降り注ぎ、岩を穿ち、魔族達を焦がす。

 雷魔法は全ての魔法の中で一番速く、その速度は秒速百キロメートル以上にもなる。当然、俺を含めて躱せる人間など一人もいない。

 僅か数秒の間続いた轟音が止まったとき、立っているものは神だけだった。

 範囲も10倍になったことで、その被害は甚大だ。

「ほぉ……タクトだけかと思ったが、何人かまだ生きておるか。といっても、まともに動けるものはいないだろうが」


 神は勝ち誇るように笑い、そして俺に向かって言う。


「タクト、ここまで余を楽しませるとは大儀であった。褒めて遣わす」

「なら、このままおひねり代わりにこのまま退場してくれないか?」

「うむ、余の雷を浴びてそこまで喋れるとは。回復魔法を使われる前に殺す。そして、余を楽しませてくれた礼だが――主の愛する女もすぐにあの世に送ってやろう。まぁ、神である余ですら、あの世と呼ばれる世界があるのかどうかはわからぬがな」


 神はそう言って、俺が落とした破邪の斧を拾った。

 その時だった――


 神の後ろに突如として兄貴が現れた。そして、神の身体を羽交い絞めにする。


「スメラギテイト……瞬間移動か」

「あぁ、ゴウから貸して貰っているんだ。この時のために。戦闘中には使えない瞬間移動も、戦闘圏外から戦闘圏内には跳べるからな」

「何をするつもりだ?」

「神よ、お前の強さはタクトの力。その力の一番の元は、スキルスロット最大のボーナス特典だ。ならば、そのボーナス特典を俺に移譲する。ゲームマスターの力を使ってな。この世界の神はお前だろうが、ゲームの中ではゲームマスターが神なんだよ!」


 兄貴はそう言って力をさらに加えた。


「これでお前の力は1/4になる。ボーナス特典転移!」


 兄貴が叫んだ――が、神は冷めた表情のまま語った。


「テイトよ。それを思いついたのなら、余が余になる前に試すべきだった。もっとも――」


 神はにやりと笑い、「アイスニードル」と氷の魔法を唱える。

 神の手から生み出された氷の槍が兄貴の腹を貫いた。


「余が主の能力をそのままにしておくわけがないであろう。主の力はとっくの昔に消去している」

「がはっ……タク……ト……シファ……すま……い」


 兄貴は呟くようにそう言って、崩れ落ちた。


「これでもう終わりだな」


 血を吐いて倒れる兄貴を見る。兄貴の向こうでは、シファが苦悶の表情を浮かべていて、ナビがなんとか起き上がろうとしている。ミーナ達は気を失っていて――このままここで戦いを続けたら被害が増えるだけだ。


 ならば――と俺は手を伸ばす。

 ナビ、みんなの治療を頼む。


 神が戦いは終わったと思っているなら、使えるかもしれない。

 そんな望みとともに、俺は手を伸ばし、神の足を掴んで叫んだ。


「瞬間移動!」


 突如、世界が闇に染まった。

残り3話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ