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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第6章 封印と古傷

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071 遺跡と冒険者~解けかけの封印~

 場所:スビレーの遺跡

 語り:キジー・ポケット

 *************



 ミラナと協力者の魔導師たちを連れ、アタシ、キジー・ポケットは、封印された遺跡のなかに踏み込んだ。


 封印された遺跡は、たいていがグレーの石レンガでできた、蔦の絡まる古い建物だ。


 多分魔法で自動的に作られた建物なんだろうね。なかはかなり広くて、奥にも地下にも、迷宮のように広がっているよ。


 乱雑に配置された四角い部屋に、特徴のない寒々しい廊下や階段が複雑につながれている。


 完全に侵入者を迷わせようとしているような作りだよ。


 廊下の先にある部屋のなかはたいてい罠だらけだけど、よく探すとキッチンや食堂、寝室のような生活スペースもある。


 それから、たくさんの本が貯蔵された図書室、怪しい魔道具が置かれた研究室なんかもあるね。


 不気味なのは、地下に広がる大きな牢屋かな。


 そして、この遺跡にかけられた封印は、恐ろしく強力なものだよ。


 すごい大魔導師のアタシだけど、この封印がかけられたばかりだったら、きっとなかには入れなかっただろうね。


 封印魔法がかけられてから三百年がたって、遺跡の封印は自然に解けはじめてる。


 そうじゃなければ、ここの封印も、アタシが穴を開けるのは難しかったはずだよ。


 ミラナと双頭鳥……(って呼ぶとシンソニーは怒るんだけど)がいた遺跡は、どっちもすでに外側の封印が解けてたんだ。


 だから、遺跡のなかはアタシ以外の冒険者が、入って荒らしたあとだった。


 最近は、冒険者になるのが流行ってるから、封印が解けた遺跡には、冒険者たちが入り込んでる。


 冒険者が増えたのは、五年前にできた冒険者ギルドの影響だね。


 彼らは魔物を退治して報酬をもらったり、遺跡や洞窟にある宝を漁ったりして稼いでるんだ。


 まぁ、アタシは後者なんだけど。



      △



「最上級探知魔法・パーフェット・ディーティクマーレ!」



 遺跡に入ると、アタシは最上級の探知魔法を発動した。


 これは、初級探知魔法の熱源探知から、中級探知魔法の魔力探知、罠探知、呪い探知、さらには上級探知魔法の封印探知まで、いっきに発動できる便利な魔法だよ。


 こんな魔法が使えるのは、世界広しといえどアタシくらいじゃないかな? というか、アタシの作った魔法だからね。呪文もアタシ好みにしてる。


 最上級魔法って、だいたいだれかの固有の特技みたいなものだから、呪文が独特だよね。


 といっても、やっぱりこれを発動すると消費魔力が大きいから、いつもは熱源探知と魔力探知くらいしか発動してないんだけどね。


 この二つは、魔物や人の位置を知るために発動してる魔法さ。


 あとは、遺跡のなかは罠や呪いがいっぱいだから、罠探知と呪い探知もしておかないと、たいへんなことになるよ。


 それから封印探知は、隠し部屋を見つけるのに便利だね。



「安全確認よーし!」



 皆の命を預かってるから、安全確認はしっかりしないとね! こう見えてアタシ、慎重派なんだ。



「最上級探索魔法・エンプリーズスピチアーレ!」



 さらにもうひとつの自作魔法で、遺跡内の空間を完全に把握。アタシの頭には、ここの地図がばっちりできあがった。


 普通は絶対見えないような隠された道や扉だって、アタシには全部見えてるよ。


 シンソニーやミラナは、封印が解けた遺跡の奥の、封印された隠し部屋にいたんだ。


 アタシ以外には、ただの石の壁にしか見えない、完璧な隠し扉だったよ。


 だから、冒険者たちに発見されないまま、二人は荒らされた遺跡に残ってた。


 だけど、隠し部屋の封印が解けるのも、時間の問題だっただろうね。


 あんまりほっとくと、ミラナの仲間の魔物が、冒険者たちに見つかったり、封印を抜けて外に出てきたりする可能性があるよ。


 そうなると、たいへんだ。


 だって、双頭鳥も三頭犬も、かなり凶暴だったから。


 たぶんいっぱい被害者が出るし、すぐにベルさんたちみたいな、強い魔導師たちが集結して退治するだろうね。


 三頭犬なんかは、もうその寸前だった。アタシより先にベルさんが見つけてたからね。


 遺跡から出ようとする三頭犬をなんとか封じ込めながら、どうやって退治するか、考えてる最中だったよ。


 ベルさんが自分の弟子のナダンさんに声をかけなかったら、三頭犬はきっと倒されてたね。


 だから、ミラナは仲間の魔物の特徴を、全部アタシやベルさんに教えたんだ。


 そして、見つけても倒さないでねってお願いした。


 ベルさんは優しいから、弟子の弟子であるアタシとミラナのお願いは、だいたい聞いてくれるよ。


 会うたびに可愛いって言って、ぎゅうぎゅう抱きしめられるのはちょっと困るんだけどね。



      △



 アタシたちは、遺跡のなかを慎重に進んだ。罠があるから、うっかり踏むと、道が落とし穴になったり、壁から矢が飛び出してきたりするよ。


 それも強烈な闇の魔力が込められた矢で、無限みたいにいっぱい出てくる。


 この遺跡を作った人は、いったいどれだけ魔力を持ってたんだろうね。


 アタシでもちょっと信じられないくらいの、桁違いの魔力だね。


 だけど、アタシの探知があれば、罠にも引っかからないし、戦闘も最小限で済む。


 この遺跡には、やばい魔物がいっぱいいて、魔物が守ってる部屋もあるんだよ。


 倒して進めば、たぶんすごいお宝があるんじゃないかな?


 だけどアタシは、魔物が守ってる部屋には絶対近づかない。


 だって、怖いからね。


 安全に入れる部屋のお宝が、アタシの獲物さ!


 まぁ、今日は宝探しに来たわけじゃないから、ミラナの仲間がいる部屋以外はとりあえず無視だよ。


 この間来たとき少し探索したけど、結構広いからね。ちゃんと探せば、まだまだお宝が眠ってるかもしれないよ!



「ついたよ、キマイラとフロストスプライトがいるのはこの奥さ」


「えっ!? 奥って、石の壁しかねーぞ? どうやっていくの? これ!」


「はいはい、期待どおりの反応ご苦労様だよ、三頭犬! この石の壁は見えてるだけで存在してないのさ。幻覚みたいなものだよ」


「すげー! 本当になんでも見とおせるんだな、キジー!」


「まぁね!」


「うわぁ、俺、今年いちばん驚いたかもしんねー。つくづくミラナを見つけてくれたのがキジーでよかったぜ」


「そうだろ!」


「ここまでとは思ってなかったぜ! 宇宙一の大魔導師だな!」


「う、うん」


「いや、心底感服したぜ!」


「そんなに褒めてもこれ以上はなんにも出ないよ……?」


「ほんとすげーなっ」



――まったく、この三頭犬は、とんだたらし犬だよ。



 キラキラの笑顔で無邪気に褒めまくる三頭犬に、アタシは思わず苦笑いを浮かべた。


 だって、三頭犬の後ろで、ミラナが不満げな顔をしてるからね。



――褒められたからって惚れたりしないよ? そもそも、全然アタシの好みじゃないから安心してよ。



 そういうつもりでミラナに視線を送ったけど、あれはだいぶんムッとしてるよ。


 両想いなのになんだろうね。めんどくさいよ、この二人は。


 そんなことを考えながら、アタシは小さくため息をついた。

 今回ははじめて、キジーの語りでした。


 遺跡のなかは、迷路のようになっていて罠や呪いもいっぱいのようですが、キジーがいればなんの問題もなくキマイラたちのいる部屋にたどり着けるようです。


 そして、オルフェルがいつも以上にうるさいのは、ちょっと事情があります(^-^;


 次回からはいよいよ、仲間のテイムがはじまります。


 第七十二話 隔離~玉砕覚悟で~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] キジー有能! カワイイ! ミラナを見付けたのが彼女で本当に良かった。 オルフェル犬も間接的にその縁で助かっていたわけですね。 [気になる点] そういえば、ミラナだけは魔獣にならず生身で封印…
[良い点] キジーすごい。キジーかっこいい!! ( ゜д゜)ハッ! これじゃオルフェくんとかわらん(笑) この探知や感知魔法は本当にすごい。ダンジョン攻略には垂涎のまと。マッピングしてないダンジョ…
[一言] 花車様こんにちは! そして今日はキジーの話でした! 大魔道士キジーの能力はやはり凄いですね! これは楽チン! キジーのお陰で目的はすぐそこ! 楽しませていただいてますよ( ˶ˊᵕˋ) 花車…
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