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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第6章 封印と古傷

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070 逞しいね~脱がされた俺~

 場所:スビレーの遺跡

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



「今日はこんな場所まできていただき、本当にありがとうございます! ご協力よろしくお願いします!」


「「よろしくお願いします!」」



 俺たちがかしこまって頭を下げると、騎士団長は思わず目を細めたくなるくらいの、眩しい笑顔を浮かべた。



「あぁ! かまわないよ。きみたちが無事についていてよかった。ところで、私はワンコ君に会えるのを楽しみにしてきたのだが……」


「三頭犬ならこれだよ」



 さっそく、キョロキョロと犬を探す騎士団長たちの前に、キジーがぐいっと俺を押し出した。



「こっ、これが、ワンコ君か!?」


「すごい! 人間になってる! 本当に興味深いなぁ!」


「おぉー! 犬のときと同じ赤毛だな!」



 騎士団長と防衛隊長のカミルさんが、またキラキラした顔で俺に詰め寄ってくる。毎度のことだけど賑やかな人たちだ。


 シンソニーも小鳥から人間になってるけど、そっちには気が付かないらしい。


 もっともシンソニーは、なにかを警戒してか、そそくさとミラナの後ろに隠れているんだけど。


 俺が苦笑いしていると、キジーが後ろから腹に手をまわしてきて、俺の服をまくりあげた。



「ちょ、キジーさん、なにしてんの!?」


「わっ、見事に割れた腹直筋! 盛り上がった胸筋! オルフェル君、たくましいね」



 俺の秘められた筋肉があらわになり、カミルさんが目を丸くする。俺はいったい、なにをされているのだろうか。


 慌ててシャツを下げようとしたけど、なぜか治癒魔導師のコルニスさんまで覗き込んできた。



「わ、これは……。すごい傷跡ですね。ヒールで治せるギリギリのところじゃないですか? 即死しなかったのが不思議なくらいですよ……」


「ホントだ。かなり大きい傷があるね」


「え、そうなんですか!? 俺、まったく覚えがないです」



 キジーが俺の風呂を覗き、「大きい」と言いながら眺めていたのは、どうやら俺の、胸部の傷跡だったらしい。


 そう言われてみると確かに大きな傷がある。まるで一度、ぽっかり風穴があいたかのようだ。


 これに限らず、この体にはほかにもあちこちに傷が残っているんだけど。



「これ、アンタなら消せないかな? コルニスさん」



 なぜかキジーが、コルニスさんにそんな質問をした。


 もう痛みもない古傷で、コルニスさんの手を煩わせることもないんだけど。



「うーん。残念ですが……。治癒魔法ではどうしても、大ケガになると傷が残りますよ。光属性で、それも最上位魔法とかなら、あとから消せるものもあるでしょうけど。治癒魔法というより、修復系の魔法ですね」


「そっか。ありがとう」



 コルニスさんが丁寧に答えてくれて、キジーはやっと俺のシャツをおろした。いったいなにがしたいのか、俺にはよくわからない。


 俺が首を傾げていると、背後からガタゴトと音がして漆塗りの美しい馬車が近づいてきた。



      △



「お、さらなる加勢が来たよ。さすがベルさんだね」


「あ、マリルちゃんたちだ。おーい、こっちこっちー!」



 キジーとカミルさんが、ブンブンと手を振って馬車に合図すると、馬車は俺たちの近くに停まった。


 大きな盾と槍を持った重装備の女性が御者台から降り、馬車の扉を開けると、なかから二人の男女が降りてきた。


 赤い髪に赤いドレスの貴族っぽい女性と、茶色いベストを着た身軽そうな男性だ。



「国家魔術機関からの要請で来ました。炎属性魔導師のマリル・フランと、土属性魔導師のクレーン・サタルですわ。それから、彼女はわたくしの護衛のエロイーズですの。どうぞよろしく」



 赤いドレスの女性が、そう言ってドレスの裾を持ちあげ、丁寧に挨拶をしてくれた。


 話によると、国家魔術機関とは国で管理している魔導師を、必要としている場所に派遣する仕組みらしい。


 優秀な魔導師を、有効に活用するため、軍隊とは別で管理しているようだ。


 もちろん、一般人が困ったからと、すぐに魔導師を貸してくれるような仕組みではない。主な貸出先は、国の軍隊だ。


 今日ここに、この人たちが来てくれたのは、ベルさんからの、特別の計らいだという。


 雷属性のシェインさんと、氷属性のベランカさんをテイムできるまで弱らせるため、弱点属性の魔導師を派遣してくれたらしい。



「本当に、すごく助かります!」


「魔物がお友達なんですってね。うっかり殺さないよう、気を付けて頑張りますわ」


「「よろしくお願いします」」


「電撃防ぐのは俺の得意技。まかせて」


「ありがとうございます! 頼もしいです!」



 ハキハキしているマリルさんとは対照的に、俯いたままボソボソ話すクレーンさん。二人とも小柄だけど、なんとなく、絶対強い気がする。


 遺跡の恐ろしい封印を前に、少しビビっていた俺だけど、心強い助っ人が来てくれたおかげで、だいぶん元気が出てきた。



「それじゃ、いくかな!」


「おぉ! 調子乗ってきたぜー!」


「オルフェル、慎重にね?」



 皆の準備が整うと、キジーは遺跡の封印の前に立った。



「上級解除魔法、クラックシール」



 彼女が呪文を唱えると、見えない壁に黒い魔法陣が浮かびあがり、そこにぱっくりと亀裂が入った。


 どうやら、完全に封印を解くわけではないらしい。


 俺たちが開いた隙間から封印のなかの空間に入り込むと、開かれた隙間はもとどおり閉じてしまった。


 そして、俺たちの眼前の景色は、石レンガで作られた、怪しい建物のなかへと変わったのだった。



挿絵(By みてみん)

 無事に協力者たちとの合流をはたしたオルフェルたち。


 騎士団長たちのほかにも三人がテイムを手伝いに来てくれました。


 キジーの解除魔法で封印に穴を開け、するするっと遺跡に入り込みます。


 挿絵は「ターク様が心配です!」からの助っ人マリルさんです。


 ちなみにクレーンさんは新キャラです。


 次回ははじめて、キジーの語りになります!


 第七十一話 遺跡と冒険者~解けかけの封印~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] あわわ、マリル嬢! 炎魔術師だったんですね。 味方なら頼もしい……かな? [気になる点] 助っ人たちが心強い半面、これだけのメンバーが必要そうな相手だと思えば緊張もします。 倒さずボコボコ…
[一言] おおっ!! 久しぶりにみたマリルさん可愛い(⑉・ ・⑉) そしてターク様の話からエロイーズとカミルさんもいるしドンドン楽しくなってきたな( ˶>ᴗ<˶) やっぱりこういう話も楽しくなりますね…
[良い点] 即死級の大怪我の傷跡ですか。 オルフェル達の記憶が消えたのと関連があるのか、それとも別口か。 いずれにせよ、何か重要な伏線という事でしょう。覚えておいて今後、推理してみたく。 更なる増援…
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