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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第5章 恋文と抗議文

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068 スビレー湖4~見張りの夜に~


 場所:スビレー湖

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



 キラーフラッグに囲まれた俺は、その長い舌に絡めとられた。



――くっ! トラストエッジ!



 口に引き込まれる寸前で体をよじり、トリガーブレードをキラーフラッグの頭に突き立てる。



「ゲコォォォ!」


「ひえぇ、こえぇっ」



 叫びながら頭を振るキラーフラッグ。ダメージがあるのかないのか、恐ろしい顔で叫んで威嚇してくる。


 頭を刺されて死なないのは怖すぎだ。



――やっぱり、燃えなくても燃やすしかねー! ブレイズアップだ!



 思い切って魔力を大放出すると、俺の体から高温の炎が噴き出しキラーフラッグの体を包み込んだ。


 炎のなかにいても、俺は、熱くもなければ、痛くもない。むしろ、心地いいくらいだ。


 普通の炎属性魔導師とは、やはりその辺がだいぶん違う。


 普通なら、自分が火傷しないよう、気を付けなくてはいけないところだ。


 マントなどの装備も耐性があるのか燃える様子はないし、魔力もいくらでも湧いてきて、全然尽きる気がしない。


 調子に乗ってガンガン燃やす俺。


 これだけ燃やせば、いくらみずみずしいキラーフラッグでも、肉が茹であがり、水分が飛んで焦げていく。


 俺の強烈な炎を見て、ほかのキラーフラッグたちが怯みはじめた。



「はぁっ……いまさら逃げるとかなしだぜ。俺と一緒に、泣いてくれ!」


「ゲコォッ!」


「はっはー! かかってこいよ! カエル野郎!」


――ヴォン・ヴォン・ヴォン!――


「ゲコォー!」



 俺がトリガーを引きながら挑発すると、キラーフラッグのほうも本気を出して体当たりしてきた。


 フレイムジャンプで飛びあがり、かわしてからのトラストエッジだ!



「よーし! 調子乗ってきたぜー!」


――ヴォン・ヴォン・ヴォン!――



 時々弾かれてはヌメヌメになりながらも、俺は結局、二十体ほどのキラーフラッグを斬っては燃やした。


 いつの間にか、辺りは白けていてだいぶん朝になっている。



「オルフェル……!」



 名前を呼ばれて振り返ると、驚いた顔のミラナがそこに立っていた。



「はぁっ、はぁっ……。あれ……、ミラナ? おはよ」



 キラーフラッグはどうやら、実態のない魔物だったらしい。大きな青い魔石がそこら中に転がっている。


 なにが起きたのかは一目瞭然だった。



「もう! 魔物が出たら起こしてって言ったのにっ!」


「はは、ごめん。忘れてた」



 駆け寄ってくるミラナを、俺は慌てて制止した。



「抱きつくのはやめとけ。俺、ヌメヌメだぜ」


「やだっ、ほんとだ」



 目を丸くして立ち止まったミラナが、苦笑いする俺を見て、顔を赤くして後ろを向く。



「ミラナ……本当にもう、俺のこと好きじゃねーの?」


「しっ、しらないっ」



――どうなってんのかねー。この子は……。



 思わず「はぁ」と、ため息をついた俺。


 なんだかよくわからないけど、とにかくいまは、先にヌメヌメをなんとかしたい。



「……俺、風呂入ってくんね。危ないから、みんな起こして警戒してろよ」


「うん……」



 湖の水を魔力で温め、頭までざぶんと湯に浸かる。



「たっはー! きもちいー! 調子乗ってきたぜー!」



 広々とした湖を眺めながら、ポカポカの湯に入る気分は上々だ。



「オルフェ、見張り交代でって言ったのに、起こしてくれないんだもんな……」



 ワシになったシンソニーが、バサバサと俺のもとへ飛んできて、頭の上で文句を言った。



「ごめん、忘れてた」


「寝てないのに、なんか意外と元気そうだね? ミラナと仲直りした?」


「あー、いや、なんか知んねーけどさ。なんにしても俺、諦める気ねーから、どっからでも巻き返すぜ!」


「クク! そっか。まぁオルフェはそうだよね。頑張って!」


「ありがとう。シンソニー! 心配かけて悪いな。俺のいま作った歌聴いてくか?」


「クク!……じゃぁ、一曲だけ」


「あ、聴いてくの? ちょっと待って、いまから考えるっ」


「クケ?」



 拍子抜けした声を出すシンソニー。まさか聴くと言うとは思ってなかった。



「まぁ、そうだと思ってたけど」


「よくわかってんね」



 ニヤニヤしていると、キジーが俺の風呂を覗き込んできた。



「いつまで入ってんのー? 三頭犬!」


「キジー!? ちょ、なんで普通に見にくんの!?」


「そういや昨日泣いてたけど元気かなーと思って」


「あとにしてっ!?」


「だって、昨日はなんか、話しかけづらかったからさ。わ、思ったより大きいね」


「なにが!? ほんとにあとにして!?」



 縮こまった俺の代わりに、シンソニーがキジーを連れて戻っていく。あの子には恥じらいというものがないのだろうか。


 だけど彼女も一応、俺を心配してくれていたらしい。



――あとで謝るか……。



 俺たちは朝食を食べ、テントを片付けて、また荷物を背負い歩きはじめた。


挿絵(By みてみん)

 キラーフラッグを燃やしまくるオルフェル君。どうやら彼は、炎耐性がMAXのようです。


 お風呂でリフレッシュした彼は、テイムのため、また森を進みます。


 挿絵はキラーフラッグです!


 次回からは「第六章 封印と古傷」に入ります。オルフェルにとってははじめてのテイム。


 はたして彼らはシェインとベランカを捕まえることができるのか。


 第六十九話 到着~穴ぼこチーズな俺~をお楽しみに!



挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外に強くて数が多かったキラーフロッグ。 結果的に見ればいい憂さ晴らしになりましたね。 ……ていうか、イラストめっちゃ不気味です!
[一言] オルフェルにとってはキラーフロッグもあまり敵ではなさそうですね。さすが騎士を目指しただけあります。とはいえ、オルフェル、ミラナと別れてしまったというのは気になりますね…一体何があったというの…
2023/09/19 00:03 退会済み
管理
[良い点] やっぱり調子に乗っちゃうんですね(笑) しかも音や色で盛り上がるところ、戦隊モノグッズで盛り上がる幼稚園児を彷彿とさせられて笑いが(笑)止まりません。 んー、このお子ちゃま感がオルフェら…
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