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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第5章 恋文と抗議文

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065 スビレー湖1~大魔道師キジー~

 場所:スビレーの森

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



 すぐにフィウンデの街を出た俺たちは、早速スビレーの森に入っていた。


 フィウンデの街も大きくて見所がありそうではあったけど、のんびり観光している時間はない。


 俺たちは森のなかを歩いて進む必要があり、空を飛んでくる騎士団長たちを、待たせてしまう可能性が高いからだ。


 俺たちもシンソニーに空を飛んでもらえば早いけど、それはキジーが猛反対した。



「絶対やだよ。アタシ、危ない橋は渡らないって言ってるだろ。しっかり探知して、確認して、安全なところにだけ踏み込むのが、この大魔導師キジー・ポケット様なのさ!」



 彼女は得意げに胸を張っているが、要するに高いところが怖いようだ。



――まったく可愛いポケット様だな。



 だけど、彼女がいなければ、たとえ場所がわかっていても、封印された遺跡には入れないらしい。


 封印の解除というのも、本来危険な行為だ。封印時に決められた手順を踏まずに解除すれば、なにが起こるかわからない。


 爆発したり、電撃を放ったり、星の彼方へ消え去ってしまったりする。


 封印されていたものが壊れるのはもちろん、解除しようとしたものが巻き込まれ、ケガを負うことにもつながるのだ。


 遺跡のように大きいものを覆い隠すほどの封印となると、その反動も大きいはずだ。


 そんな強固な封印を探知し、本当に安全に解除できるのだとしたら、彼女は確かに、大魔導師とよばれるにふさわしいのかもしれない。



「キジーって戦闘もつえーの? ほかにどんな魔法つかえんだ?」



 俺が尋ねると、彼女はまた、得意げに胸を逸らした。


 今日も彼女は、腰のはみ出たピラピラの服に、おそろしく丈の短いパンツという、露出の多い服装だ。日に焼けた胸元にはビーズの飾りがキラキラしている。


 つい目がいってしまうのでやめて欲しい。



「戦闘? 言っとくけどアタシ、探知と解除以外の魔法はいっさい使えないからね。危ないと思ったら三頭犬を盾にして逃げるからよろしく!」


「お、ぉん……」


――まったく、可愛い大魔導師様だな。



 だけど、彼女がいれば、周辺にいる魔物は全て出会う前に見つけることができた。



「初級探知魔法・熱源探知、中級探知魔法・魔力探知。安全確認よーし!」



 彼女はいくつかの探知魔法を常に重ねて発動している。


 どうやら、探知できる範囲も感度も、俺たちの想像をはるかに超えたもののようだ。


 危険な魔物を避けられるばかりでなく、こちらから奇襲をかけ、襲われる前に倒すことも可能なのだ。


 これは実際のところ、強い仲間が数人いるより心強いくらいだった。


 俺たちはキジーの案内で、迷うこともなく森のなかをどんどん進んでいった。



      △



 かなり日が暮れかかったころ、俺たちは森のなかで、大きな湖にさしかかった。夕日で赤く染まった空が映り込み、燃えるようで美しい景色だ。



「あ、スビレー湖についたみたい。順調順調! 今日はここで休もう」



 キジーが湖に駆け寄って、振りかえって俺たちに手招きをする。どうやら、ここは安全のようだ。



「いい場所だね」



 シンソニーが俺の頭の上でそう言って、俺たちは、湖のほとりで野営することになった。



「なぁー、ミラナ。俺、野営の準備手伝うからさ、いいかげん人間に戻してくんねー?」


「えー? ダメだよ」



 人間に戻りたがる俺に、ミラナが渋い顔をする。彼女は俺が、人間になるとロクでもないと思っているようだ。


 だけど俺も、そう簡単には引き下がれない。一日我慢してたけど、四つん這いはもううんざりだ。



「あっ、そうだ、風呂! 湖の水で風呂沸かしてやるからさ!」


「うーん……」


「ダメ? じゃぁ、魚! 魚捕まえて焼くから、ね? お願いっ、ミラナさん! 俺いっぱい捕まえるから……」


「どっちも、犬のままでもできるでしょ。ごねないで」



 冷たくそっぽを向くミラナ。シンソニーだけを人間の姿に戻し、夕飯の準備を手伝わせはじめた。


 彼女は一度決めると、なかなか考えを変えない、頑固さんなのだ。



――くっそー! なんでこう冷たいんだ。夜になったらどうせ、俺を抱きしめて寝るつもりのくせにっ!


――理不尽だぜ!



 だけど俺には、ひとつだけ勝算があった。



「キジー、風呂沸かしたから入ってこいよ。ほらあそこ、石で区切ったとこ、湯気出てるのわかる?」


「わ、やるね。三頭犬! 覗くんじゃないよ」



 俺が湖の一角を石で区切り風呂を沸かすと、キジーはその辺の木をうまく縄で組みあわせて布をかけ、ささっと目隠しの衝立を作った。


 その向こうで服を脱ぎはじめるキジー。俺の予想どおり、彼女は器用だ。



「ゆっくり入れよ」



 キジーを追い出した俺は、今度はシンソニーにこっそり耳打ちした。



「なっ、ちょっともたもたしててくんねー?」


「えっ? あ、了解」



 察しのいいシンソニーは、すぐに俺の言いたいことを理解して頷いてくれる。そして基本的に、俺の味方だ。



――さすがの大親友様だぜ。



 俺はそそくさとミラナの元に戻り、彼女の近くにお座りして、じっとその様子を眺めた。

 スビレーの森に入ったオルフェルたち。


 キジーは大魔道師ということですが、探知と解除以外の魔法は使えず、戦闘に参加する気もないようです。


 しかし、極力魔物に出会わない道で、目的地まで、サクッと案内してくれます。


 そして、スビレー湖に到着した一行。人間に戻りたいオルフェルの作戦はうまくいくのか?


 次回、第六十六話 スビレー湖2~あの日のキス~をお楽しみに!


 このお話、少し短かったので早めに次を投稿しようと思います。



挿絵(By みてみん)


 キジーの腰がはみ出てるピラピラの服とショートパンツを描きたくて下書きしてたのですが、なかなかイラストが完成せずすみません……。


 そのうち完成したら、活動報告でおしらせしますね!


 お気に入り作家に登録することで、「お気に入りユーザの活動報告」に表示されるようになります。


 執筆の進捗状況や登場人物紹介なんかも書いてますのでぜひぜひ。

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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~



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― 新着の感想 ―
[良い点] 封印解除、危険すぎませんか!? 本当に周辺探知と封印解除だけで戦闘ができないことを補って余りありそうです。 パーティーに一人は欲しいキジー! [気になる点] お、また二人っきりのチャンスで…
[良い点] キジーが可愛いですね。 こういうおしゃまな女の子キャラ好きです。 でも探索系魔法しか使えないのか。 だけど可愛いから許す!
[一言] おおん! なんとキジー大魔道士でありながら探索系魔法しか使えないという中々の強者!笑 でもなんとか回避して辿り着けたようで笑 そしてオルフェルとシンソニーは素敵な作戦をたてたようですが果たし…
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