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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第3章 恐怖心と恋心

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032 幻獣~宇宙一でかいんじゃね?~



 場所:ベルガノン王国

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



 ゴブリンを倒し終わった俺たちは、ゴブリンたちの落としものの山から、依頼主のものと思われる指輪を拾いだした。



「おー! これじゃねーの? 青い宝石の指輪!」



 ゴブリンは綺麗に消え去るため、残された装備や装飾品は比較的綺麗だ。もっとも、俺の炎で少々焦げてしまったものもあるのだけど。



「本当だ、よかったぁ! それ、プロポーズに使うつもりで買った指輪なんだって! 彼女にプレゼントするらしいよ」


「いやだけど、これ、ゴブリンが指にはめてたぞ。買いなおしたほうがよくねーか?」



 我が物顔で盗品を身に着けるゴブリンの姿を思い出し、少し渋い顔をした俺。俺がミラナに渡すなら、絶対買いなおすだろうと思う。



「あはは、本当だね。でもそれは、言わなきゃ気にならないだろうから、黙っておこうよ」


「おぅん……?」


「思い出の石で作ったって言ってたから、買いなおすにも変わりはないんじゃない? だからこその依頼なんだし」


「ふむ。ならこの気持ちは、俺の心の奥にしまっておくぜ」


「わかんないように、綺麗なハンカチで拭いておこう」



――ミラナはこういうの、気にしそうだと思ったけど、意外と平気なんだな。


――いや、この場合、言わないのは優しさか。



 のんびりそんなことを考えていると、いきなりミラナのかけたデドゥンザペインが切れ、全身に強烈な痛みが復活した。



「いってー! やべぇっ!」


「あ、ごめんごめん。ヒールかけるね!」


「キューン……」



 落としものを革のバッグに詰めていたシンソニーがあわてて振り返り、俺にヒールをかけてくれる。


 緑の光が俺の体を包み込み、ゴブリンにやられた傷はすぐに回復した。


 シンソニーの優しい笑顔。ウイングワンドの羽根もパタパタして可愛い。ほっこりしながらしばし眺める俺。シンソニーは俺の癒しだ。



「ありがとう、シンソニー! じゃぁ、依頼主のとこまで走るぜ! 背中乗ってくれ」



 俺がそういうと、ミラナがなぜか、首を横に振った。



「だめだよ。オルフェルはちょっと頑張りすぎたから、いったんレベル落とそう。あんまりはじめから、張り切りすぎると危ないからね」


「おぅん? いったいなにが危ねーの?」



 俺はそう尋ねたけど、ミラナは苦々しい顔をしながら、静かな声で俺を子犬に戻した。



「オルフェル、レベルダウン」

――ピロリローン♪――



 なんとなく不安を感じながらも、ひょいっとミラナに抱き上げられると、『まぁいいか』と思ってしまう。


「だけど、歩いて帰るには、ちょっと遠くねーか?」


「大丈夫! シンソニーがいるから。シンソニー解放レベル3」

――ピーロリロン♪ ピーロリロン♪――


「ピキー!」



 解放レベルがあがったシンソニーは、翼を広げると三メートルはありそうな、巨大なワシに姿を変えた。



「うぉん! やっぱでけーな! おまえ、本当にシンソニーか!?」


「そうだよー! びっくりだよね! ピキーッ!」



 甲高い声でそう返事をするシンソニー。前にもギルド試験でその姿を見たけど、華奢なシンソニーとは思えないような、豪快な戦いぶりだった。


 鋭いクチバシに吊りあがった目、大きな鉤爪も、とても彼のものとは思えない。


 だけど、白い翼を広げ悠々と空を飛ぶその姿は、どこか誇らしげでカッコよかった。



「すげー! おまえきっと、世界一でかい鳥なんじゃねーか!?」


「これで驚いてちゃダメだよ。シンソニーには、まだうえがあるから!」


「え、ウソだろ」


「これでもかなり大きいけど、私たちを乗せて飛ぶには不安でしょ? 拾ったものもだいぶん重いし」


「た、確かに」


「じゃ、いっくよー! シンソニー! 心の準備はいい?」


「うん、まぁ、いけるよっ」



 シンソニーがどこか少し、こわばった声を出しているけど、ミラナは頷いて笛をかまえた。


 シンソニーは俺より、二ヶ月も前に、ミラナにテイムされていたらしい。


 解放レベルがいくつもあがっていても、確かに不思議はないのだけれど……。



「シンソニー解放レベル4」

――ピーロリロン♪ ピーロリロン♪――



「「クケーーー!」」


「うぇぇぇぇ!? でかすぎんだろ!? これ宇宙一じゃねーか!?」



 飛んでいたシンソニーの体がみるみる大きくなり、ブォンっと重い風を巻きあげながら地面に降り立つ。


 その姿は……。



「げげ、シンソニー、おまえ、頭が二個あるぞ!?」


「やだな、きみなんて三個あったよ。きみをテイムしたとき、僕、見たからね」


「きゃう! それを言うなぁーーっ!」


「「クキキッ! クケーーー!」」



 今俺の前に立っているシンソニーは、身長が俺の二倍以上はありそうな、巨大な鳥になっていた。


 翼を広げれば、軽く十数メートルはあるだろう。


 そして、なんと言っても、頭が二個ある! その姿は完全に空想上の幻獣、双頭鳥だ。


 二つの頭が同時に鳴くと、超音波みたいに草木が揺れた。


 シンソニーは俺たちをその背中に乗せ、依頼主のいるリボルサの村を目指して、空高く飛び立った。

 ゴブリンの落としもののなかから、無事に依頼の指輪を見つけたオルフェルたち。


 まだ成犬の姿に慣れないオルフェルを気遣ってか、ミラナはシンソニーの解放レベルをあげました。


 翼を広げると十数メートルと書いてますが、十二メートルくらいかなぁ。


 十二メートルっていうと、大型バスくらいですね。大きいな~笑


 次回、第三十三話 チャンス~俺たちの記憶~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] シンソニーもただの動物じゃなかったなんて! でもシンソニーだからきっと優美な気がします! それにしても、ゴブリンがはめていた指輪は嫌ですね……。笑 明日も楽しみに読ませていただきます(*´…
[良い点] シンソニーも、やっぱりすごい魔獣だったんですね。これで最終形態? 何となくまだ上もありそう。 魔物化するとちょっとシンソニーのほんわかした雰囲気が荒々しく感じます。解放レベル上がるほど魔…
[一言] オルフェルも奮闘の中シンソニーのレベルを解放!! シンソニーでけぇなぁw もうヘリくらいあるのでは??w 花車様おはようございます! 楽しく拝読させていただきますね> ·̫ < 本日もよろし…
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