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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第12章 願いと白い竜

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161 レーマに到着~これまた斬新だな~

 [前回までのあらすじ]魔物使いの先輩ジャスティーネさんのテイムを手伝ったミラナたち。無事にテイムを終え、ついにレーマ村にやってきました。



 場所:レーマ村

 語り:ミラナ・レニーウェイン

 *************



 遺跡を出た私たちは、シンソニーに乗ってレーマ村に入った。


 レーマは三角屋根の可愛い丸太小屋が多い。いまは夜のため、真っ白に積もった雪に小屋からの暖かそうな灯りが漏れていた。


 ここには闇魔法アカデミーの生徒たちが住んでいる学生寮もある。


 私もこの村にきてしばらくはアカデミーの女子寮に住んでいた。


 だけどいまは、もうそこに私の部屋はない。


 シンソニーをテイムしてからは、女子寮では問題だということで、ナダン先生のお宅の離れに住ませてもらっていたのだ。



――夜中になっちゃったけど、どこか宿屋は空いてるかな?



 テントは一応用意してきたけど、村で野営なんかしてナダン先生に知れたら、『うちに泊まればいいのに遠慮しすぎだ!』と、きっと怒られてしまうだろう。


 だけど、こんな夜中にいきなり押しかけたのでは、さすがに失礼で気が引ける。



「私のせいで夜遅くなっちゃったから、今日はうちに泊まるといいわ」



 宿の心配をしていると、ジャスティーネさんが声をかけてくれた。



「えっ? そんなご迷惑はかけられません。私たちこんな大人数ですし……」


「あら、遠慮しなくていいわよ。もう私たち友達でしょう?」


「えっ?」



 戸惑ってかたまる私。そう言ってもらえるのはうれしいけど、彼女は魔物使いとしても冒険者としても大先輩だ。


 気軽に『友達です』なんて言って、甘えてしまっていいものだろうか?



――確かに今日は一緒に戦ったけど、私たち初対面だし……。友達って、これくらいでなれるものなの?



 考えこむ私を見て、ジャスティーネさんが優しく微笑んでいる。



「ごめんなさい。急に友達だなんて困っちゃうわよね。だけど、同じ魔物使いとして、私あなたを誇りに思ってるの。


 こんなにたくさんの魔物たちを仲間にするのは、並大抵のことじゃないわ。戦いっぷりも素晴らしかったわよ」



 ジャスティーネさんが私に歩み寄ってくる。


 彼女は今日、魔物使いとしてまだまだ半人前の私を、ずっと褒めてくれていたのだ。


 同じ魔物使いの先輩から、評価したり認めたりしてもらえたことは、本当に嬉しくて感激で涙が出そうだった。


 だから今日は、彼女の期待に応えようと、いつも以上に頑張ってしまった。


 いまは彼女のテイムがうまく行って、すごくほっとしているところだ。


 だけど、私は本当に未熟なうえに、闇魔法アカデミーも休学中だ。放置している課題は山積みだし、お世話になっている人たちにも、迷惑と心配しかかけていない。



「私はなにも、特別なことは……。なにからなにまで人に助けてもらって、仲間たちにも助けられながらしていることです……」


「そういう謙虚なところも好きよ。今日も手伝ってもらえてすごく助かったし。ね? 友達になりましょ」



 笑顔で片手を差し出すジャスティーネさんを、私は真顔で見詰め返した。


 オルフェルが前足でツンツンと私をつつきながら、耳元に口を寄せてくる。



「ミラナ、ここは遠慮しすぎねーほうが、ジャスティーネさんは喜ぶと思うぜ?」


「そ、そうかな?」


「絶対そうだ」



 こそこそ話をする私たちをジャスティーネさんが片手を出したまま、にこにこして眺めている。


 どうやら全部聞こえてしまったようだ。私はジャスティーネさんの手を握り返した。



「私のほうこそ、今日は上位魔法を近くで見せてもらえて感激しました。ジャスティーネさんのような先輩から、もっと学ばせてもらいたいです。ぜひ、友達にしてください」


「うふふ。いくらでも見せてあげるわよ」



 彼女の手が温かくて、なんだか嬉しくなってしまった。


 ジャスティーネさんにもらった言葉に恥じないように、私はもっと努力して立派な魔物使いになりたいと思う。



「私、魔物使いの友達ははじめてです」


「私もあなたみたいな子ははじめてよ! さっそく私の家に行くわよ~! 一緒にお夕飯食べましょ! ウキウキッて感じね!」



 ジャスティーネさんは、私の腕に手を回すと、グイグイと私を引っ張って自分の家まで連れていった。


 そうして私たちは、ジャスティーネさんの家で一泊させてもらったのだった。



      △



 翌朝私たちは、ナダン先生の住む大きな丸太小屋を訪れた。


 雪が積もった広い庭の周りには、いくつかの動物小屋や、物置小屋が建てられている。


 動物小屋には調教魔法の研究のために、魔物や動物が飼われていた。


 物置小屋は、主に多趣味な先生の趣味の道具をしまっておくためのものだ。


 私が住ませてもらっていた離れもある。



――ほとんど家出みたいに飛び出しちゃったからなぁ……。先生、怒ってないといいけど。



 少し緊張しつつも玄関の呼び鈴を鳴らすと、ナダン先生とその家族が笑顔で出迎えてくれた。



「ミラナ! 戻ったか!」


「いらっしゃい、ミラナちゃん」


「ナダン先生! レーラさんも、お久しぶりです! お元気そうでなによりです」


「わぁーい、みななちゃんだ!」


「ペルラちゃん、久しぶりだね」



――よかった。みんな元気だし、いつもどおりだわ!



 ナダン先生は三十代半ばの気さくな人だ。奥さんのレーラさんと四歳の一人娘ペルラちゃんと一緒に暮している。


 奥さんは若くてきれいだし、ペルラちゃんも元気がよくて可愛い子だ。ここで勉強していたころは、よく家族の惚気話を聞かされた。



「元気にしてた?」


「うん! あのね、ママのおなかのなか、あかちゃんいるの!」


「わ、すごいね。よかったね!」



 私が頭を撫でると、ぺルラちゃんが無邪気な顔でにこにこ笑う。ところどころ歯が抜けているのがまた可愛い。



「おめでとうございます!」


「あぁ、ぺルラはレーラに似て可愛いからなぁ~、この子も絶対可愛いはずだ」


「やだ、パパったら~。今度はきっとパパに似ると思うわよ!」



 幸せそうに寄り添いながら見詰めあう二人。この雰囲気が少し懐かしくてホッとする。先生は家族思いですごくステキだ。


 そして彼は、もともとはベルガノンの人だった。ベルさんの魔術機関から派遣され、クラスタルで働いているのだ。


 先生は魔導師の少ないこの国で、闇属性専門で強い冒険者を育てている。


 魔物の大量発生で甚大な被害を受けたこの国のために、ベルさんが行っている復興支援の一環だそうだ。


 ペルラちゃんがシンソニーの足元にいた子犬なオルフェルを見て興奮している。



「わぁー! ちんとにー! ちいちゃいワンちゃんがいるよー!」


「うん、オルフェルだよ」


「きゃわいぃ~! おにゅへにゅ!」


「ちんとにーに、おにゅへにゅ……!? これまた斬新だな」


「しゃべったぁ!」



 ペルラちゃんは嬉しそうに、オルフェルを抱っこしてスリスリ頬を擦り寄せた。


 シンソニーは『ちんとにー』が気に入らないらしく、少し不満げだ。ペルラちゃんの前にしゃがみ込んで注意している。



「ペルラちゃん? 僕はシンソニーだよ?」


「ちんとにー!」


「ちんとにーじゃなくて、シンソニーだよ……」



 口を窄めるシンソニー。『ちんとにー』はちょっと嫌だろうけど、相手は四歳なので我慢して欲しい。


 順番に挨拶をすませると、私たちは応接室にとおされた。



 いつもお読みいただき、ありがとうございます!


 やっぱりお絵描きに夢中になってしまい、更新を遅らせてしまいました。しばらくそういう日が増えそうです。


 友達になりたいというジャスティーネさんを前に、真面目モード全開のミラナちゃんでした。オルフェルはゆるゆるです。


 次回は応接室にて、ナダン先生と会話します。


 第百六十二話 ナダン先生1~呪いの反動~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
魔物使い友達ができてよかったですね。 ミラナの交友関係が広がっていくのはとてもイイと思います! ナダン先生との家族ぐるみの付き合いにもほっこり。
[一言] ミラナ、本当に自信がないみたいですね…あっという間にB級ライセンスをとって、魔力大食いの魔物を5頭も引き連れられているのに…。いつか彼女が自分自身を認められる日が来るといいなぁ…。
2023/09/21 10:25 退会済み
管理
[良い点] ジャスティーネいい人過ぎるというか、無防備ですね。 彼女の性格は掴み切れておりませんが、仲良くなった男に騙されそう…… ミラナがいるので男性陣魔物は大丈夫ですが、家にあげちゃうのは異世界感…
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