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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第11章 寄り道と魔物使い

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157 遺跡探索1~やっぱりロマンだよね~

[前回までのあらすじ]クラスタルに到着したミラナたちは、魔物使いの先輩ジャスティーネさんのテイムを手伝うことに。シンソニーに乗って樹氷群を飛び辿りついた場所は……。

 場所:ラスダール樹氷郡遺跡

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



 双頭鳥に乗って樹氷群を飛んでいると、雪のなかに石レンガで作られた四角い建物が見えた。


 建物の表面は白い雪が張り付き、凍結で風化している。ところどころ崩れている場所もあるようだ。



「ってここ、やっぱりアジール博士の研究施設じゃねーか?」


「そうだね。すっかり封印が解けて、冒険者たちが探索してる遺跡もあるんだよ」


「なるほど……」



 アジール博士は本当に、いったいなにをしていたのだろう。


 しつこい聖騎士から逃げていたのか、なにかを探し求めていたのか、それとも隠そうとしていたのだろうか。


 よくわからないけれど、似たような施設をあちこちに建設していたようだ。


 あの膨大な魔力で組み上げられたいくつもの無機質な構造物。


 何度見ても本当に大掛かりだ。


 研究室の近くの広い雪原に降り立つシンソニー。みなが背中から降りると、ミラナがシンソニーを人間に戻した。



「シンソニーレベルダウン」

――ピロリローン♪――



「わ、本当に人間になったわ! ありえないんだけどっ。しかもかっこいい! 王子って感じね」


「ありがとう、ジャスティーネさん」



 爽やかな笑顔を浮かべたシンソニーを、ジャスティーネさんが食い入るように見ている。シンソニーは少し苦笑いして一歩後退りした。



「入ろっか」


「わぉん! 行こうぜ!」



 恐る恐る遺跡に入ってみると、目に入ったのは広い研究室だった。


 大型の魔道具がいくつも搬入され、机や本棚が並べられている。


 そこには白衣姿の人が何人も忙しそうに動き回っていた。彼らは遺跡の研究員だろうか。


 魔導書を片手に考え込んでいる人や、魔道具を操作しながらなにか叫んでいる人がいる。思っていたより活気があるようだ。



「あれ? ミラナちゃんたちだ。よくきてくれたね」



 俺たちが周りを見回していると、ギルドからの依頼主と思われる研究者の男性が声をかけてきた。


 茶色の髪に顔を隠す大きな黒縁眼鏡が印象的だ。よく見るとそれは、メージョー魔道具店の店主さんだった。



「わ、メージョーさん!? 昨日は魔道具店にいたのに、どうしてここにいるんですか? 私たちシンソニーに乗ってかなり空を飛んできたのに……」


「あ、うん。実はここには、転送ゲートを置いてあるんだよ。お店から直接来たんだ」


「えぇ!?」


「あ。もちろん、ゲート設置の許可は両国に取ってあるよ」



 ミラナの驚いた顔を見て、メージョーさんはにっこりと笑った。


 転送ゲートはローズデメールの親父さんが管理しているから、彼の店にあっても不思議じゃない。



――いや、やっぱり不思議だ。メージョーさん、底が知れねぇ。



 俺たちが公共物だと思っていた転送ゲートを、彼は自由に設置できるようだ。


 俺たちが唖然とするのもかまわず、彼はまた説明を続けた。



「実は僕、ベルさんにここの室長に任命されちゃってさ。遺跡の魔導書に興味があるって言ったら飛びついてきてさ。お店もあるのに、あの人の勢いにはついていけないよ。困っちゃうな」



 メージョーさんはそう言って、お手本のような苦笑いを浮かべている。そんな彼に、周りの研究員たちが次々に声をかけてきた。



「室長、魔道具番号八の分解洗浄が完了しました」


「お疲れ様。魔法構造の写しを取ってC官に保管したら、次の作業に進んでくれる?」


「はい、それと、魔道具番号七への魔力充填がうまくいきません」


「そうか……。まぁ予想どおりだけどね。じゃぁその魔道具はいったん接合部を切断して、さらに分解してみようか……。注意することは……、あ、その呪文はこの魔導書に書いてあるから……、それからアジール博士の本にこんなことが……」



 メージョーさんは研究員たちとなにやら専門的な話をしながら、研究室の奥に歩いていってしまった。


 魔導書を次々と開いては、なにかを解説している様子だ。


 この遺跡で発掘された魔道具を研究しているようだけど、俺にはよくわからない。


 俺たちがしばらく黙って眺めていると、彼は突然ハッと気付いた顔をして、慌ててこちらに戻ってきた。


 すっかり夢中で、俺たちのことを忘れていたらしい。


 嫌々やってるのかと思ったけど、案外楽しんでいるようだ。



「ごめんごめん、待たせちゃったね」


「いえいえ、お忙しいんですね! たいへんそうです」


「そうなんだよ。この分野の専門家は少ないからね。もっと参考になる魔導書が見つかればいいんだけど」


「この遺跡からもアジール博士の著書が出たんですか?」


「うん。でもね、ほとんどは別の人の本だよ。だけど昔の魔導書にはいまでは禁呪扱いの魔法が、当たり前のように書いてあったりするんだ。


だから、だれかに持ち去られたりしないように、先手を打って回収してるんだよ。それで、遺跡探索はギルドをとおすことになってるんだ。やっぱり、禁呪は怖いからね」



 メージョーさんはいつもの明るい笑顔を消して、少し真剣な口調で話した。



 イザゲルさんが事件を起こしたデモンクーズも、いまでは禁呪に分類されているけど、昔の魔導書なら使い方が載ってるのかもしれない。


 確かに、そんなものは一般人の手に渡らないほうがいいだろう。


 俺たちが不安げな顔をすると、メージョーさんはすぐにニコニコの笑顔に戻った。



「まぁでも、遺跡探索って言ったら、僕的にはやっぱりロマンだよね! 転送ゲートだって、もともとは遺跡探索で発見されたものだからね。世界を変える大発見が、まだまだ眠ってると思うんだ」


「わぉん。そうですよね!」


「それで、遺跡の奥を調べに行きたいんだけどさ、どうにも魔物が邪魔なんだよね。


だけどよかったよ。ミラナちゃんたちならきっと倒せそうだ。ベルさんから聞いてるよ。ヒドラスを自分たちだけでテイムしたんだって?」


「え? どうしてベルさんがそれを知ってるんですか!?」


「あー、彼女は、だいたいなんでも知ってるからね……」


「ベルさんって、本当はいったい何者なんですか?」



 メージョーさんの笑顔がまた苦笑いに変わるのを見て、俺は思わず、そんな質問を口にした。


 いつもお読みいただき、ありがとうございます!


 遺跡内にいたのはなんと、メージョーさんでした! 彼は『ターク様』からのキャラなので少し謎めいてますが、伏線ではないので気にせず読んでいただければと思います。


 次回、第百五十八話 遺跡探索2~元気に決まってるよ~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] アジール博士の研究施設現代の冒険者たちが好き勝手に探検しているというのも、何気に恐ろしい話ですね。 一攫千金には丁度いい技術やらが、眠っているのかもしれませんが。 シンソニーは流石のイケ…
[良い点] 寒そうな描写がとても寒そうで良かったです(笑)夏にはちょうど良いですね。なにせ猛夏ですから(笑)シンソニーに食い入ってしまうジャスティーネさんのリアクションも良かったですね。時代ごとの風潮…
[良い点] まさか、こんなところにメージョーさんが!Σ(゜ω゜ノ)ノ 研究熱心で人当たりも良いので、室長にピッタリです。 けれど出てきた、アジール博士の著書……。 三百年前のことを思うと、何だか複雑…
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