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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第11章 寄り道と魔物使い

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144 意外な反応~ずっと見てられるよ~[設定・キャラ紹介]

[前回までのあらすじ]ミラナは三百年前に魔物化し、封印された同郷の仲間たちを助けるため、魔物使いになった。魔物たちは記憶を失っており、魔物化の原因はまだ謎だ。主人公のオルフェルは、ネース捕獲のあとに思い出した三百年前の記憶に苦しむが……。


※設定とキャラ紹介を後書きに書きました。

 場所:貸し部屋ラ・シアン

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************


 ネースさんの捕獲に成功した俺たちは、王都リヴィーバリーにある貸し部屋ラ・シアンに帰ってきていた。


 ビーストケージから解放してみると、ネースさんは俺たちの予想通り、ウミヘビの姿だった。


 いまはどこからか持ってきた水槽に入れられ、魚やイカなどの生き餌を食べている。



「ネースさん、綺麗だなぁ」


「青と白の鱗ってかっこいいよね。キラキラしてて」


「生き餌に喰らいついてひと飲みにするとこなんて大迫力だぜ」


「ずっと見てられるよ」



 子犬姿の俺とそんな会話をしながら、ネースさんの水槽の前にへばりついているのは、キジーだった。


 彼女は遺跡で見た巨大な六頭蛇のネースさんを、ものすごく気に入ってしまったらしい。


 いつもは一日休むと、すぐに遺跡探索に出かける彼女だけど、今回は部屋から出ることもなくもう三日もこうしているのだ。


 魔物化したネースさんは、美しい鱗が水に濡れてキラキラしていて、俺も本当に綺麗だと思う。


 だけど、キジーがこんなに夢中になるとは思わなかった。



「気に入ったのはわかるけどさ、すげー毒あるし、まだ気が立ってっかもしんねーから、触んねーほうかいいぜ」


「わかってるよ」



 キジーは水槽に手のひらと鼻の頭をつけたまま、水槽のなかのネースさんを、穴が開くほど眺めている。


 その細長くしなやかな身体が、水中でくねくねと動くたびシアンの瞳を輝かせ、感嘆の声を漏らした。



「それにしても、もう三日たつのに全然声を出さないね? ほかのみんなは二日目には話せるようになったんだよね?」


「きゃうん? もしかして、ネースさんと話がしてーの?」


「そりゃそうだよ。ウミヘビと話ができるなんて、アタシ大興奮だよ? 話さないのはもしかして、水のなかだからなのかな」



 ネースさんが話せるようになるのを、心待ちにしている様子のキジー。だけどネースさんは、もともと会話が成立する人じゃなかった。


 闇のモヤ突入前後は普通に話していたけど、そこまでの記憶があるとも限らない。もし声を出したとしても、ハーゼン大佐がいないいま、俺たちに理解できるかどうか……。


 これは事前に、キジーにも言っておいたほうがいいだろう。



「ネースさんはもともと、ハーゼン大佐がいねーとほとんど話さねーよ……。それに天才だから、なに言ってるかわかんねーの」


「使う言葉が難しいってことかな」


「あー、でも。ときどきは普通に話してたぜ。真剣なときとか、声もすげーかっこよくて痺れるぜ!」


「ふーん。面白いね。聞いてみたいな……」



 キジーはウミヘビが気に入りすぎて、ネースさんにも興味津々のようだ。だけどネースさんは水草の後ろに頭を突っ込んで動かない。


 引きこもりの彼が、女の子にこうも熱い視線で見詰められるというのは、ちょっと刺激が強い気もする。



「なぁシンソニー。ネースさんと話す方法ねーかな?」


「ピッ? 僕わかんないよ」


「シェインさんはどうですか?」


「ガルル……、私にもわからないな」


「そうですよね……」



 シンソニーは小鳥の姿でずっと止まり木にとまっている。この三日、俺たち魔物は全員解放レベル1だ。


 シェインさんも子ライオンだし、ベランカさんはペンギンの姿だ。


 前回シェインさんたちを捕獲したあと、ミラナが熱を出したことから、彼女の体調に配慮している。


 解放レベルをあげていると、ミラナの魔力消費が増えるのだ。


 みんな人間の姿になりたいだろうし、三日も家のなかで退屈だけど、それを口に出したりはしない。


 そんななか、水槽にへばりついている俺たちとは違い、シンソニーやベランカさんはまったく水槽に近寄ろうとしなかった。


 シンソニーは水槽に近づくのが怖いらしい。テイムのときはネースさんを食いちぎっていたシンソニーだけど、小鳥のときは恐怖を感じるようだ。


 口にすっぽり入ってしまう大きさなのだから仕方がない。


 そして、ベランカさんは、もともと爬虫類は苦手らしい。


 氷の眼差しで一瞬水槽に目をやったくらいで、あとは見向きもしなかった。


 シェインさんから聞いて、過去の出来事も思い出したようだけど、なにを考えているのかはわからない。


 シェインさんも、ベランカさんや引きこもりのネースさんに気を使っているらしく、あまり水槽には近づかなかった。


 だけどいつもみたいにガンガンに冷気を放っていないところを見ると、ベランカさんもネースさんを気遣っているのだろう。


 ウミヘビが寒さに弱いと聞いてから、彼女は必要最低限、自分の周りだけ冷やしているようだ。


 とりあえず俺は、ネースさんがこの状況に困惑しないように、三日かけて彼に状況の説明をしている。



――全然反応ねーんだけど、聞こえてんのかな。



 そんなことを考えていると、洗面室からミラナが出てきた。


 さっきまでゆったりとしたブラウスにエプロン姿で、それはそれは可愛かった彼女だけど、いつのまにか外出用の服に着替えている。



――うぉおーーーん!



 その姿に、心の中で遠吠えする俺。


 最近ベルガノン王国はかなり気温が高くなっている。そのせいでミラナは、見たことがないくらい薄着だった。


 イニシス王国は短い春と秋があるくらいで、あとはずっと寒かったのだ。薄着の女性を見かける機会は限られていた。


 いつもカッチリした服装だったミラナはなおさらだ。


 俺の意思に関係なく、猛烈に振り回される俺の尻尾。俺は胸の高鳴りを抑えきれず前足をあげて立ちあがった。


 可憐な彼女がいるこの素晴らしい世界に、俺は祝福を贈ろうと思う。



――おめでとう、世界! 三百年、待った甲斐があったな!



 ミラナが着ている薄手の白いシャツは、メレッカとよばれる素材で織られたものだ。


 メレッカは暑く乾燥した地域で栽培される植物で、イニシスではめったに手に入らない高級品だった。


 だけどベルガノン王国は南の熱い国と交易しているため、比較的安く手に入るらしい。


 俺もメレッカのシャツを何枚か買ってもらったけど、汗をかいてもサラッとしていて非常に快適だ。


 まぁ、いまの俺は子犬の姿だから、言ってしまえばすっ裸なんだけど。


 ミラナが着ているシャツは首元に小花の刺繍が施された、爽やかで可愛らしいデザインだった。緑のスカートは膝上の丈で白いレースの裾がチラリと見えている。


 いつもスカートの下に履いていたレギンスもなく、長くて美しい生足が覗いていた。


 犬だからなんとか耐えられるけど、人間だったら間違いなく愛を囁いていると思う。


 腰ベルトには美しい宝石のようなビーストケージが五つ取り付けられ、細かい装飾が施されたキラキラの魔笛も装着されている。


 それは彼女の心の美しさと、いままでの努力を物語っているのだ。



――うーん。どこか外出か? そんな可愛いと心配だぜ!



 俺たちは、ミラナのエサですっかり落ち着いている。開放レベル1の状態なら、ミラナから離れても凶暴化の心配はほとんどないようだ。


 水槽を持っての外出がたいへんなこともあり、ミラナは昨日も、俺たちをキジーに任せて出掛けていた。


 ミラナはエサの材料などの調達のために、外に出かける必要があるからだ。



「キジー、みんなを見ててもらっていい? 買いものに出かけたいんだけど」


「いいよ、いいよ。行っておいで~!」


「ミラナ、気をつけてな! 迷子になんなよ! 誰か連れてったほうがいいんじゃねーか?」


「うん。そうだね、じゃぁ今日は……」



 ミラナはそう言いながら俺のほうへ寄ってきた。腰の魔笛を手に取り、俺に向かってかまえている。



「オルフェル、一緒に来てくれる? 荷物もって欲しいし、それに……」


「きゃうっ?」



 ミラナが俺を人間に戻そうとしているのを察して、俺は甲高い鳴き声をあげた。



「や、あ、ちょ、待って」



 ガリガリと床を引っ掻きながら、滑るように走る。壁と水槽の間の、ほんの数センチの隙間に無理やり体をねじ込んだ。


 フサフサの腹の毛が水槽のガラスに押し当てられてぺったんこだ。


 ここで俺が大きくなったら、確実に水槽はひっくり返るだろう。俺はいま、人間にはなりたくないのだ。


 そんな俺をみて、ミラナはキョトンとした顔をした。




 キジーがネースさんに夢中という新展開が開始されました笑 ぜひこの関係を見守っていただけると嬉しいです。


 さて、いつもは人間になりたがるオルフェルですが、なぜか嫌がっているようです。その理由は……?


 今回から「第十一章 寄り道と魔物使い」に入りました。各日更新を目指してますが、まだ編集中なのでどこかで止まるかもしれません。


 それから、一章の一~六話あたりを改稿しました。よかったらそちらも読んでみてください。


 次回、第百四十五話 自粛~どうして隠れるの?~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)


[設定紹介]


ビーストケージ:魔物使いが使用する魔道具。ミラナはそれを腰に装着しており、調教魔法の「テイム」を詠唱することで魔物をそこに封印できる。


開放レベル:ミラナのビーストケージは段階的に魔物を開放する機能があり、開放レベルによって魔物の姿や魔力量、使用できる魔法などが変化する。開放レベルをはじめてあげるときは、一定期間前のレベルに慣らす必要がある。


[キャラ紹介]


ミラナ:笛で魔物をテイムして仲間にしたり、魔物に支援魔法をかけて戦う魔物使い。


キジー:探知と解除が得意な闇属性魔導師。ミラナを封印から解き放ったみんなの恩人。


イザゲル:ネースの姉。王妃の治療に失敗したことで断罪され闇落ちした闇魔導師。正気を失い故郷の村を襲って壊滅させた。



※以下は魔物化しミラナにテイムされた仲間です。


オルフェル:ミラナをこよなく愛する主人公。子犬→魔犬→人間→三頭犬に変身する。炎属性。


シンソニー:オルフェルの親友。小鳥→人間→ワシ→双頭鳥に変身する。風属性。


ネース:同郷の先輩でイザゲルの弟。天才おもちゃの武器職人。義勇軍では武器開発責任者。魔物化で六頭蛇(ヒドラス)に。水属性。


シェイン:同郷の先輩。義勇軍のリーダー。魔物化でキマイラに。子ライオン→人間→ライオンの獣人に変身する。雷属性。


ベランカ:同郷の先輩でシェインの妹。魔物化でフロストスプライトに。ペンギン→幼児(毒舌)→大人に変身する。氷属性。



※以下は魔物化したけどまだテイムされていない仲間です。


ニーニー:同郷の幼なじみでシンソニーの恋人。光属性。


ハーゼン:同郷の先輩でイザゲルの元恋人。義勇軍では大佐だった。土属性。

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― 新着の感想 ―
キジーがネースさんに興味津々!? 意外な組み合わせ……と思えましたけど、思えばちょうどフリーの二人でした。 どちらも面白いことをしでかしそうなので顔合わせが楽しみです! 薄着のミラナにドキドキしなが…
[良い点] ネースさんを気に入るキジーさんの様子がとても面白かったです。彼女は独特のセンスや価値観をしていて面白い人ですね。ネースさんとは馬が合うんじゃないかな、と思います。 [一言] 喋らないし、い…
[良い点] キジーがネースさんに興味を示すというのは意外でした。 しかも、テイム前の姿から、というのにも。 人の姿を見たら、どうなってしまうんでしょうね( *´艸`)フフフ ネースさんは美人ですから。…
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