表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第9章 愛と障壁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/291

121 地下空洞の決戦1~希望の光~

改稿しました(2024/12/5)


 場所:怪しい屋敷(地下空洞)

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



 地下空洞に落ちてから、どれくらい時間がたっただろうか。すっかり口数が減った俺たちは、ただ黙々と足を動かしていた。


 ここは想像を超えるスケールの地下大迷宮だ。


 切り立った断崖、穴底の地下川。どこから魔物が襲ってくるかもわからない。俺たちはそんななか、闇のモヤの深いほうへと歩いてきたのだ。



「カートル地形だよ。石灰岩が水に溶かされてできたもらね」


「広いし複雑すぎだね……」


「気をつけねーと落ちそうだぜ」


「この崖、高さ百メートルはあるもらよ。落ちたら終わりもら」


「ひぇー!」



 洞窟のなかは、鍾乳石や石筍が氷の彫刻のように輝いている。美しくて目を引くけど、いまの俺たちにとってはただの障害物だ。


 視界はほんの数メートル先まで。俺たちは愛のベールの、ほのかな光を頼りに進んだ。空気は湿って重く、風が耳を刺す。どこに行っても同じような景色だ。罠や呪いはないけど、それでも十分に恐ろしい。



――はぁ、最悪だ! さっきの迷宮よりひどいんじゃねーか。このままじゃ全員終わりだぜ……。



 俺たちはモヤの発生源を探していたけど、いまは闇のモヤから逃げ出したい気分だった。だけど、出口が見つからないのだ。



「あっ! 見て、梯子があるよ!」



 そんなとき、シンソニーの声が響いた。俺は驚いて顔をあげる。暗闇の奥で手を伸ばす彼の瞳が輝いている。それはきっと希望の光だ。



「あそこから、地上に上がれるんじゃないかな?」


「おぉっ! すげーな、シンソニー!」


「シン君、すごぉい☆」



 笑顔を見あわせる俺たち。岩壁にかかっている白い梯子が見える。新しいのか、錆びた様子もなくしっかりしていそうだ。その上には扉が見えている。



「まさかこんなところに梯子があるなんてな! あれはきっと地下からの出口だぞ! なぁ、ネース!」


「あやしさ満点もらね」


「どうせ迷ってるんだ。行くしかないぞ」


「わかってるよ。ただ、魔力を充填してから登りたいもら。ここは闇のモヤの中心に近いはず。あそこが、発生源の可能性は高いよ」


「あぁ、早くしろ!」



 水大砲に魔力を込めるネースさんを、ハーゼン大佐が急かしている。



「イザゲルさんたちがいませんように☆」


「うん、登るしかないからね。僕たちも信じよう」



 エニーは祈るように両手の指を組み、シンソニーもこくこく頷いた。不安はあるけど、ほかに選択肢はないのだ。



「よし、いくぞ!」


「「「はい!」」」「了解もら」



 梯子に向かって歩きだす俺たち。


 そのときだった。



  ――キュオーーン!――



――あの鳴き声は……!



 聞き覚えのある咆哮に、俺たちは目を見開いた。地面が揺れている。石がパラパラと降ってくる。


 そして梯子のそばの空洞から、黒くて巨大な魔物がゆっくりと現れた! それは狂気に染まる赤い目を血走らせながら、俺たちを威嚇するように咆哮する!



「あっ、あれは……」


「クルーエルファントだ……」


「何度見ても大きいな……」



 六本の牙は刃物のように鋭く、皮膚は鎧のようにかたい。鼻から吹き出す熱い息。一匹だけど、十メートルを超える巨体は山のようだ。


 クルーエルファントは巨大な耳をバタつかせながら、長い鼻を振り回し、地面を叩きつけている。どう見ても戦闘態勢で、いまにも俺たちに突進してきそうだ。


 故郷を襲い、家族を殺した憎き魔物の姿に、俺たちは息を呑みこんだ。どんなに時間がたっても、あの悲しみは忘れない。



――くそー! 出やがったな!



 俺は怒りに震えながらも声を殺した。叫びたい。だけど、叫んで飛びかかったのでは、いままでと同じだ。


 梯子を守るように立ちふさがるクルーエルファント。


 こいつはもしかすると、あの顔の見えない闇魔導師の命令を受けているのだろうか?



「ニニ、シン。オレは、あの梯子のうえを確認しにきた……。ここまできて、引き返すことはできない。引き続き浄化を頼めるか?」


「もちろんです、ハーゼン大佐。ニニもそのために来ました」


「僕も、覚悟はできてます」



 クルーエルファントを見据えながら、詰まった声を出したハーゼン大佐に、シンソニーとエニーが頷いた。



「オル、おまえはやる気だよな」


「当然です、ハーゼン大佐」


「逃げるわけにいかないもら」



 互いの気持ちを確認しあう俺たち。


 この梯子の上には、いったいなにが待ち受けているのだろう。俺たちは真実を知るため、この魔物と戦わなくてはならなかった。



「ニニ、シン。浄化範囲を広げてくれ。あれと戦うには、狭すぎる」


「「はい!」」



 エニーの震える手のなかで、浄化装置がカタカタと音を立てた。シンソニーは彼女の手を包むように、そのうえから手を重ねている。


 浄化装置に魔力を送る二人。だけどそこに、いままでのような微笑ましい空気はない。俺たちはいま、死と隣りあわせているのだ。



「ニーニー、本当に大丈夫?」


「うん。逃げないょ、シン君」



 二人は互いを見詰め、覚悟を決した瞳で励ましあった。


 ネースさんがダイヤルを回すと、愛のベールが地下空洞に広がっていく。光に弱い魔物はキラキラと輝くベールから逃げ出していった。


 これなら戦闘にも余裕ができるかもしれない。だけど、エニーたちの魔力は限られているのだ。


 俺たちはクルーエルファントを倒し、素早くモヤの発生源をみつけて、モヤのない場所まで逃げなければならない。


 焦る気持ちを抑えるように、俺はクルーエルファントをしっかりと見据えた。



 地下空洞に落ちたオルフェルたち。愛のベールの魔力切れを気にしながら迷っていると、上にあがる梯子を発見しました。


 しかしそこに、因縁のクルーエルファントが現れます。戦う覚悟を決めた彼らの運命は?


 書き足してたら一話増えたので告知からサブタイトルが変更になりました。ご了承ください。


 次回、第百二十二話 地下空洞の決戦2~魔法迷宮の秘密~をお楽しみに!



挿絵(By みてみん)



 いつもお読みいただき、ありがとうございます!


 もしいいな、と思っていただけましたら「ブックマークに追加」をクリックして、この小説を応援していただけるとうれしいです!


 「いいね」や「評価」もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~



カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
地下空洞にも人の手が入っていたんですね。 ハシゴが見つかって一安心……と思ったら、ここで巨ゾウ!? 確かにベールの中で戦えるようなサイズじゃありませんが、エニーとシンソニーの魔力はどこまでもつんでしょ…
[一言] 花車様おはようございます! そして遂に登場クルーエルファント!! オルフェルはじめシンソニーも皆驚愕の敵の出現にドキドキです! これはどんな戦いになるのか!? 続き気になります! ドキドキの…
[良い点] 高さ100m単位の地下空洞とは、進むだけで大変すぎます。 愛のベールも何時まで続くものか。 そして決戦へ。 何かあるとは思いましたが、やはり重要そうな地は強敵がいるのでしょう。 しかし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ