第68話:クラーケン
ミネルバの冒険者ギルドで掲示板を眺めてるとクラーケン退治が貼られていた。
サマーシーズン中の観光客を襲っているみたいだから討伐して欲しいそうだ。
前回は上位個体のキングクラーケンを倒したけれど、通常クラーケンも一般人にとっては充分脅威なのでしっかりと退治していかなければならない。
「Bランクのクエストみたいですね」
ちょうど隣にいるレラが依頼書を眺めながら呟いた。
現在、マルスは近くにいない。なんでも剣の修行中らしい。
「俺一人じゃ参加が無理そうだな」
「それなら私と一緒にやりましょうよ。ちょうどロイドさんに見てもらいたい連携技があるんです」
「連携技?」
「はい、この前マルスくんと一緒に覚えたんです。私が発動した雷魔法を、マルスくんの剣に集約させて、マルスくんの攻撃に属性を付加する技です。ロイドさんが以前やっていたエンチャントに近い技だと思います」
かっこいい技を思いついてるじゃん。基本的にソロだった俺には考え付かないような魔法だ。着眼点はとても素晴らしいと思う。
二人の連携技を楽しみにしつつ、俺達はクエストを引き受けた。
翌日、俺とレラとマルスの三人はテトラ島へとやってきた。
前回は旅行目的で来たけど今回はクエストだ。
クエストって響きいいよね。仕事って書くとクソ萎えるけどクエストって書くとゲームみたいだもん。
さて、二人はウォータープロテクトが使えないみたいなので、別の手段を用いてクラーケンに接近する必要がある。
引き寄せる手段は二つある。
1、深夜にかがり火を焚いて、沖にいるクラーケンを海岸近くに引き寄せる。
2、フェルメールの助けを借りてクラーケンを誘導してもらう。
前者は夜中に戦う必要があるので個人的に避けたいところだ。
二人の意見も聞いてみよう。
「私もフェルメールさんに会ってみたいです」
「レラも会ってみたいと言ってますし、後者で良いんじゃないですか? もし断られたら前者にシフトすればいいと思います」
どうやら二人とも同じ意見のようだ。俺はさっそくアイテムボックスからハープを取り出した。
「じゃあさっそく演奏するよ」
「あっ、ロイドさんもハープを演奏できるんですね」
「いや、適当に弾いて鳴らすつもりだ。近くにいる人魚まで音が届けばいいわけだしな」
「あの、ロイドさん、風情って言葉知ってますか?」とレラは呆れた様子でそう言った。
「流石にダメですよ先生。相手に失礼です。俺が代わりに演奏しますから貸してください」
マルスはそう言って、ハープを渡すように催促する。
「え? マルス、お前ハープが演奏できるのか?」
「レラに昔教えてもらったんです」
「マルスくん音楽のセンスがあるんですよ。ピアノとバイオリンも演奏できるんです」
「へー、意外な一面。俺は音楽は全然なんだよな。それじゃあマルスに任せようかな」
俺はマルスにハープを渡す。マルスはハープを演奏した。
夏の風が奏でる爽やかな音色だった。
すると、その1分後、沖の方の水面から人魚が顔を出してこちらにやってきた。
「素晴らしい演奏ですね、人間さん。とても感動しました。おや? そのハープは確か隊長の……」
人魚がサインに気づいたようなので、俺の方からかくかくしかじかと説明する。
人魚は大きく頷いて、「いいですよー」と快く受け入れてくれた。
それから10分後、フェルメールさんがやってきた。
「お久しぶりです、ロイド様。そちらの方は以前もお会いしたマルスさんですね。またお会いできて光栄です」
「こちらこそあなたにお会いできて嬉しいです」
その流れでレラもフェルメールに自己紹介をした。二人とも初対面に対してのやり取りに慣れてるようですぐに仲良くなっていた。
こういう自然なコミュ力欲しいよなー。
コミュ力が上がる都合のいい魔法誰か開発してくれないかなぁ。
「フェルメールさん。本日は協力して下さり、ありがとうございます」
「いえいえ、私の方こそ、ロイド様に恩返しができて嬉しいです。ところでロイド様。私達はどちらまでクラーケンを誘導すればいいですか?」
「あの岩場の付近まで引きよせて頂けると助かります」
アイリスと一緒の時に見つけた岩場を指差した。
岩の上から遠くを見渡せるし、もうすぐ干潮になるので長期戦になったとしてもこちらが有利だ。
「では部下と共に、クラーケンをあの岩場付近へと誘導します」
「助かります。合図をしたらライトニングアローを放ちますのですぐに離れて下さい」
「わかりました。もしかすると、奴が途中で引き返すかもしれないので、その時はまた知らせます」
「了解」
クラーケン作戦を立てたあと、俺達は岩場へと向かった。
「さっきも話したが、作戦はこうだ。奴が近づいてきたらライトングアローを放つ。おそらく一撃では死なないと思うから、奴が怯んだらロイヤルなんちゃら―――」
「「ロイヤルマジカルコンフリクトライトニングクロススラッシュです」」
マルスとレラは口を揃えて同時にそう答えた。
なげーよ。その呪文毎回唱えるの大変だろ。よく噛まずに言えるな。
通称、ライトニングスラッシュで倒してもらおう。
その後、俺達は作戦通りにクラーケンを討伐した。
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