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第66話:聖法力

「さっきの女は誰なのじゃ?」


 俺達のやり取りを遠くで眺めていた魔王が尋ねてきた。おそらくノワールの事を聞いているのだろう。


「隣町で錬金術師のアトリエを開いているノワールさんだ」

「ふーん、黒髪だからお主の妹かと思ったのじゃ」


 めちゃくちゃアバウトな理由だ。たしかにメルゼリア王国で黒髪は珍しいけどさ。


「彼女とはそういう関係じゃないよ」


 俺ははっきりと否定した。


「ところでロイド。随分と仲良さそうに名前で呼び合っていたが、いつの間にノワールと仲良くなっていたんだ?」


 疑っているような視線で、今度はイゾルテさんが問いかけてきた。

 普段接点のない俺達に繋がりがあることに疑問があるみたいだ。


「この前たまたま町で出会って意気投合したんですよ。釣り大会の事もその時教えてもらいました」

「専属魔導士について何か聞かれたか?」

「いえ、特になにも」

「そうか。それならいいんだ」


 イゾルテさんは安堵のため息を吐いた。

 ノワールから専属魔導士として引き抜かれると思ったのかな。

 冒険者として充分上手くいっているし、専属魔導士に戻るつもりは欠片もない。


 ルミナス牧場には観光客向けのレストランもあるので、俺達はそこで遅めの昼食を取る事になった。

 レストランの入り口には木の看板が置いてあり、笑顔の牛のイラストが描かれている。

 吹き出しには『ハンバーグがオススメ。美味しいモ~!』と書かれていた。

 喰われるのはお前だぞ。


 四人全員がオススメされてるハンバーグランチを頼んだ。

 しばらく待ってると料理が運ばれてくる。アツアツの鉄板には分厚いハンバーグ。すごく美味しそうだ。


「「「「いただきます」」」」


 俺達は手を合わせて同時に合唱する。

 表面にナイフの刃を入れるとじんわりと肉汁が染み出てくる。一口サイズに切って、フォークで口へと運ぶ。

 思った通り美味い。こってりとした味付けなので若者向けの味だと思う。新鮮な肉を使っているので肉質も柔らかく、中身には旨みが詰まっている。

 食事中は、本日見て回った施設の事で四人で盛り上がった。

 隕石の事について触れることもあった。


「ところでロイドよ。お前はあの隕石に『聖法力』が宿っている事に気づいたか?」

「ああ、もちろん気づいているよ。スーパーアイリスの事だな」

「スーパーアイリス?」

「あの隕石がアイリスの100倍近くの聖法力を宿しているからスーパーアイリスって呼んでいるんだ。あっ、ちなみに名付けたの俺じゃなくてアイリス自身だからな」

「お嬢様……いくらなんでもスーパーアイリスは……」


 セフィリアさんも若干呆れていた。たしかにアイリスのネーミングセンスは壊滅的だと思う。


「その言い方だとアイリスが聖法力を注入したわけじゃないのか?」

「ああ、アイリスは関係ない。最初から聖法力が宿っていたみたいだ」

「原因はわかっているのか?」

「いや、まったく。でも、隕石なんてそんなもんさ。空から降ってくるんだから俺達の知らないエネルギーが詰まってても不思議じゃない」

「奇妙な事もあるものじゃ」


 やや釈然としない顔をして、魔王は腕を組む。ここで面白い意見を挙げたのはイゾルテさんだ。


「天界から落ちてきた説はどうだ?」

「天界かー」


 天界とは、雲の上にあると言い伝えられている伝説の領域の事だ。

 本当に存在するのかどうかは未だに解明されていないが、多くの学者が「天界は存在する!」と熱心に研究している。

 大昔は天界の住人である天使が地上界までやってきて、天使が聖女の代わりに聖法力で大地を浄化していたそうだ。


「セフィリアさんは天界を信じますか?」

「エメロード教の教義においては、天界は存在すると定義づけられておりますので、信じないという考え方はありません」


 セフィリアさんは敬虔なエメロード教徒だ。

 ちなみに俺はあんまり信じていない。本当に存在するなら飛竜に乗って確認できるはず。

 おそらく、イゾルテさんが天界というワードを口にしたのは、隕石の聖法力が膨大だからだろう。

 地上界において、聖法力は聖女が干渉したアイテムにしか宿らない希少性の高いエネルギーだ。

 それが自然的に宿るのは本来ありえないことだ。


「魔王様は大昔から生きておられますが天界を信じておりますか?」

「いや、妾はあんまり信じておらん。生まれてこの方、『天使』という生き物を一度も見た事がないのじゃ」

「魔王様……アイリスお嬢様こそ天使の生まれ変わりでございます」

「いや、お主の主観はどうでもいいのじゃ」


 魔王もだいぶツッコミに慣れてきたな。良い傾向だ。

 結局、天界が存在のか否かはあやふやになった。


 仮に天界が存在するとしたら、この四人で一度旅行に行ってみたいね。


 その後、俺達はミネルバへと馬車で帰還した。

 帰りの話題は牧場から収穫祭へとシフトし、一週間後には収穫祭が開催される事を実感させた。

 ミネルバに訪れて半年。最初の大行事となる収穫祭に俺は期待を膨らませながら、どのように過ごそうか考えるのだった。


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次回の更新は2022/12/27の19:00となります!

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