間章10:天才錬金術師の屈辱
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今回は色々判明しました!
メルゼリア王国全域で指名手配になって一週間が経過した。
その間、私は憲兵達に何度も追いかけ回された。
毎回振り切る事には成功してるが、当初の計画とは随分とズレが生じている。
本来なら今頃、天才錬金術師として王都に返り咲いてるはずだった。
私の悪評は留まる事を知らない。
道行く人々でさえ、私を見れば「無能錬金術師!」と叫ぶ始末だ。
無能はロイドであって私は何も悪くないのに誰も信じてくれない。
この王国の奴らは全員クズだ。
栄えている時は寄ってきて落ちぶれた時は去っていく人々の薄情さに私は憎悪の感情を募らせる。
その中でも憎悪の筆頭はあの男―――元専属魔導士のロイド。
奴が出奔しなければ私が苦しむ事はなかった。ロイドがアトリエからいなくなってすべての歯車が狂い始めたのだ。
たしかに今の状況は『最悪』だ。
だが希望はあった。
ロイドが原因でこうなったのなら、ロイドを取り戻せばすべて丸く収まるはずだ。
ロイドの潜伏場所をなんとか見つけ出そうと、捕まる危険を冒して様々な町で聞き込みを続けた。
この二か月間、ウンディーネのせいで海上を封鎖され、多くの情報が途絶えていた。
だが、伝書鳥より届いた新聞のおかげで、なんとか有力な手がかりを手に入れる事に成功した。
どうやら『アイリス』という元聖女が『ミネルバ』という辺境の町に滞在してるそうだ。
雪のような『銀髪』に、この世の美を詰め込んだような美しい容姿。
ここで引っかかったのは、港町メルポートにロイドと一緒にいたとされる『銀髪の美少女』だ。
この情報だけなら私は見過ごしていたかもしれない。
だが、一週間前のあの忌々しい新聞が、ピコーン! と私にひらめきをくれた。
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■証言2 騎士イゾ○テ・フォン・『ミネルフォート』さん
「私は直接彼女と話したわけではないが、ロイドと初めて出会った時、彼は心に相当深い傷を負っていた。……無能魔導士? ああ、その噂は全部嘘っぱちだぞ。前の職場で不当な扱いを受けていたのだろう。納期は確実に守るし、凶悪なモンスターも次々と討伐してくれる。彼は私がこれまで見た魔導士の中で最も優れている魔導士だよ。彼がウチに来てくれて良かったよ」
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ミネルフォート家+ミネルバ+銀髪少女+アイリス
=ロイドはミネルバにいる可能性アリ。
私が思うに、このアイリスという悪女こそが、今回の悪評事件の黒幕だろう。
私からロイドを奪うために、嘘の悪評を流して私を陥れようとしているのだ。
きっとそうに違いない。
恐ろしい女だ。
どんな生き方をすれば人を不幸にしようなんて発想ができるのだろう。
許せない。人の所有物を勝手に取りやがって……。
正義の錬金術師として、この悪党からロイドを救い出さなければならない。
それを実行するために必要なのはお金と武器だ。
どうにかしてこの二つを捻出しなければならない。
現在、私は無一文に近い。
『手切れ金』として、貴族から投げ捨てられたわずかな銅貨だけで、食いつないでいる。
逃亡中にいくつかの貴族の邸宅に立ち寄ったが、支援はすべて拒否されてしまった。
時には、通報されて捕まりそうになった事さえあった。
市民もダメ、貴族もダメ、追い詰められた私が向かった先は後輩のアトリエだった。
現在、私が目指している先は辺境の町ラーゼル。
ここには私の後輩が暮らしているので、ここで起死回生の一手を図ろうと思う。
◆ ◆ ◆
このラーゼルという町には私の後輩錬金術師が暮らしている。
後輩の定義だが、『錬金術ギルドに登録した順番が私より遅い』から便宜上そう呼んでいるだけだ。
学校の先輩後輩だったとか、同じ師匠に師事していたとか、そういう密接な関係ではないので注意してほしい。
とるに足らない存在で、知名度も高くないが、私の事をとても慕っていたはずだ。
王都に来るたびに毎回挨拶にやってくるからだ。
『アルケミア先輩! ラーゼルに来たらぜひ私のアトリエにいらしてください!』と毎回のように言っていたのを覚えてる。
ただ、後輩の名前ははっきりとは覚えていない。
あっちから寄ってくるだけで私自体は後輩に大して興味がなかったからだ。
当時の事を思い出しながら後輩のアトリエを探す。
ラーゼル以外に情報がなかったので、アトリエを見つけるのにはかなり苦戦したが、どうにか丘の上の民家にアトリエがある事を知った。
丘の上には木造の一軒家があった。
ボロボロとまでは言わないが中古の家って感じだ。
アトリエの扉を叩くが、留守のようで後輩は出てこない。
私は舌打ちして、その場から去ろうとしたが、活気のある声が聞こえたので立ち止まる。
目を細めていると、見覚えのある顔をした女が仲間3人と一緒に帰ってきた。
ようやく後輩を見つけた。こいつから金と武器を撒き上げよう。
口元が自然とニヤつくのを抑えきれない。
後輩は私に気づくと、かなり驚いたような表情を浮かべた。他の3人も同様だ。
彼らは警戒したような目つきを私に向けてきた。
「突然押しかけてごめんなさい。アナタに相談があってここまで足を運んだんです。どうか私の話を聞いてくれないでしょうか?」
私は丁寧に頭を下げた。
指名手配されてるから仕方ないとはいえ、名前すらよく覚えてないモブに頭を下げるのは死ぬほど苦痛だった。
だが、今だけはこの恥辱に耐えなければならないだろう。
今こいつに見捨てられたら状況がさらに苦しくなってしまう。
私は全力で人懐っこい笑顔を浮かべた。
「えっと……とりあえず中でお話ししましょうか。どうぞお入りください、アルケミア先輩」
後輩はやや困惑しつつも私をアトリエに案内した。
彼女の連れはアトリエを離れて町の方へと戻っていった。
後輩に案内されてアトリエにお邪魔する。
びっくりするほど整理されており、本が全然散らかっていなかった。
錬金術師は几帳面な性格が多いと言われているが、どうやら目の前のモブも同じようだ。
後輩はコーヒーをカップに注いで私に渡す。
コーヒーを作る際、モブ後輩の手つきをジッと睨んでいたが毒を入れてる様子はなかった。
とりあえず、このコーヒーは安全のようだ。
数分ほど、たわいもないやり取りがあり、私は本題を切り出した。
「一生のお願いがあるの。アトリエを一時間だけ貸してほしい」
「別に構いませんが、何を作りたいか一応聞いてもよろしいですか?」
「『バハムートボム』です」
「へ?」
後輩は呆気にとられたような表情を浮かべる。
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バハムートボム
家を一つ吹き飛ばすほど高威力爆弾。大型のモンスターを倒す時によく用いられている。
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私がこのバハムートボムを入手したい理由は二つある。
1つ目は騎士共の包囲網を突破するためだ。
これから先、どうしても力づくで物事を動かす必要が出てくる。
その際、攻撃手段がないのは心もとない。
バハムートボムがあれば奴らを脅して優位に立つ事ができる。
2つ目はアイリスを脅すためだ。
殺すつもりはないが、アイリスが素直にロイドを渡すとは思えない。
ロイドは有能ではないが、そこら辺の魔導士よりは遥かに優秀だ。
少なくとも目の前にいる後輩の専属魔導士3人よりは100倍使えるだろう。
後輩はしばらく考え込んだが、最終的にわかりましたと承諾した。
そして、私と後輩は調合部屋へと向かった。
◆ ◆ ◆
練金術
素材を加工して新しい別の何かを生み出す魔法技術と定義されている。
大前提として、錬成より生み出された完成品は、素材の時よりも必ず価値が高くなければならない。
教科書/参考書を読む、アカデミーに通う、有名な師匠に師事する。
魔法と同様、錬金術もこれらの三つをとても大事にしている学問だ。
錬金術は、発想魔法で生み出したレシピを用いて調合を行う。
レシピとは、錬金物の完成に必要な『素材』と『調合手順』の総称の事だ。
発想魔法とは、このレシピを発想する便利魔法の事だ。
発想魔法は、一般的な攻撃魔法・補助魔法とは異なり、術者によって生み出されるレシピがまったく異なる。
本人の体系を具現化する魔法なので、術者の影響を受けやすいのだ。
例えば、私が今回作るバハムートボムも、人によってレシピ内容が全然違う。
せっかくなのでお互いのレシピがどんな感じになるか確認してみた。
これを提案したのは後輩だ。
私はどっちでも良かったけど、クロニクル級錬金術師としての技量を見せるチャンスだと思って、承諾した。
発想魔法を同時に発動してお互いのレシピを披露しあった。
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■バハムートボム
発想者 ルビー
◆要求素材(要求度 495)
《キングポポム》、《火炎霊薬》、《シーデル金鉱石》
◆調合手順(難易度 5)
上上下下下
◆最終得点 500点
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■バハムートボム
発想者 ソテイラ
◆要求素材(要求度 45)
《ポポム》、《火炎草》、《シーデル銅鉱石》
◆調合手順(難易度 15)
上上下下左 右左右赤黄 左下右赤黄
◆最終得点 60点
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後輩の名前ってソテイラなんだ。
たしかに言われてみればソテイラだったような気がする。
それにしても……。
ソテイラの点数少なすぎでしょう……。
60点とか恥ずかしい。私なんて500点だよ。すごくない?
やはり私は天才。
自然と口元がニヤつくのを抑えきれない。
調合手順も長いし、これじゃあ初心者は100%失敗するだろう。
一つの操作を『1秒以内』に行わなければならないので、複雑であればあるほど失敗のリスクが高まっていく。
余談となるが、黄橙赤紫青緑のような色は自身の魔力を注ぐことによる『色彩変化』、上下左右は『オールを動かす向き』である。
「おや……?」
ソテイラは私のレシピを見て、不思議な表情を浮かべた。
「どうやらアルケミア先輩の要求素材はコンテナにないみたいですね」
横幅二メートルの長めのボックス箱。
後輩はコンテナの中身を見せた。
その中に入っているのは脅威領域で採れるようなレベルの低い素材ばかりだった。
後輩が箱から取り出すのは、ポポム、火炎草、シーデル銅鉱石の三種類。
あまりにも素材のレベルが低すぎて私の顔が引き攣っていく。
「よければ私のレシピを使いますか?」とソテイラは笑顔でそう答えた。
「ふざけないで! どうして先輩である私が、後輩であるアナタのレシピを使わなければいけないのよ!」
「そ、そうですよね。ごめんなさい。流石に私が失礼すぎました。それでしたら『教科書』を参考にして調合しましょう。これならアルケミア先輩の尊大な自尊心を刺激しませんよね?」
ソテイラはそう言って本棚の所へと歩いていく。
学者や研究家がまとめたレシピ集を『教科書/参考書』と呼ぶ。
この教科書には、歴代錬金術師の発想したレシピが、数多くまとめられている。
ただ、私はこの教科書が『苦手』だった。
ソテイラは本を持ってきて、バハムートボムのレシピが載っているページを開く。
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■バハムートボム
発想者 ヘカテー 発想時期 メル歴120年
◆要求素材(要求度 45)
《ポポム》《アグニ草》《シーデル銅鉱石》
◆調合手順(難易度 25)
左下右赤黄 下右赤黄下 右上赤黄下 左赤黄上上 下下左右左
◆最終得点 70点
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■バハムートボム
発想者 ライディア 発想時期 メル歴3年
◆要求素材(要求度 30)
《火炎草》《アイゼン銀鉱石》
◆調合手順(難易度 20)
左下右赤黄 下右赤黄下 右上赤黄下 左赤黄上上
◆最終得点 50点
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■バハムートボム
発想者 トトミミ 発想時期 メル歴56年
◆要求素材(要求度 30)
《ポポム》《オーツェン銅鉱石》
◆調合手順(難易度 20)
赤赤赤左下 右赤黄下右 下右赤黄下 下右下黄下
◆最終得点 50点
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本に載っている平均得点は50点~70点ばかりだった。
それを見て、なんとなく嫌な気配を感じた。
だが、私は首を振って、その嫌な気配を振り払った。
素材なんて持ってきて当たり前だ。
私達はその素材を使って少しでも得点を高くしていく事が重要なんだ。
そうに違いない。久しぶりに他人のレシピを見たからそう感じただけだ。
「ふむふむ、現在のコンテナの中身ならヘカテー様が一番良さそうですね。たしかアルケミア先輩も尊敬なさっていた偉人の方ですし、彼女のレシピを参考にしてみるのはいかがでしょうか?」
ヘカテーの調合手順はこの中で一番難しいものだった。
「う、うん……」
私はヘカテーの調合手順を確認する。
左下右赤黄下……。
こ、こんなの覚えられるわけがない。
「えっと、その教科書、確認しながら調合していいかな?」
「ああ、申し訳ありません。そうですよね。わかりますわかります、私もよく教科書をガン見しながら調合するんですよー」
《調合ができないゴブリンでも調合できるようになるすごい本》
ソテイラが私に渡した本にはそう書かれていた。
こ、こいつううううううううううううう! この私を馬鹿にしてるのか!
くそっくそっくそっぉぉぉぉぉぉ!
ふざけるなぁぁぁぁああああ!
今すぐこいつを殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい。
私は顔を引き攣らせる。
ソテイラの提供する本を断った。
「やっぱり必要ない! もう調合手順は覚えてしまった!」
「え? 本当ですか? 流石ですアルケミア先輩♪ やっぱりトップ層の方って、初めて見たレシピでもすぐに暗唱できるようになるんですね♪」
「あ、当たり前でしょう!」
だが、調合手順をよく覚えてない調合が成功するはずもない。私はあっけなく失敗してしまう。
くそっ、こんなはずでは……。
「あ、あの……アルケミア先輩。私も煽っちゃったのはちょっと申し訳ないと思ってます。覚えてないなら素直に見てもいいんですよ。この《調合ができないゴブリンでも調合できるようになるすごい本》は、解説がすごく丁寧なので、アルケミア先輩もきっと気に入ると思います!」
この人を見下してるようなタイトル名の本を私が気に入るだと~?
ふざけるなっ!
お前は人をどれだけ馬鹿にしたら気が済むんだ!
こいつを頼ったのが間違いだった。
私の失敗を見て優越に浸っているに違いない。
私の中で何かがキレた。
「黙れ黙れ黙れ! 60点風情が私に口出しするなっ!」
「……っ!」
「くそっ、やっぱり私は自分のレシピで調合する!」
「!? や、やめてください!」
「触るなッ!」
ドンっ!
止めようとする後輩を押し飛ばして、なおも錬金術を強行する。
私の発想したレシピが使い物にならないなんてありえない。
私はもう一度発想魔法を使う。
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■バハムートボム
発想者 ルビー
◆要求素材(要求度 495)
《キングポポム》、《火炎霊薬》、《シーデル金鉱石》
◆調合手順(難易度 5)
上上下下下
◆最終得点 500点
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やっぱりこの要求素材しか出てこない。
激怒した私は、ポポム、火炎草、シーデル銅鉱石を錬金釜に放り投げて上上下下下で調合を行った。
ぼふんっ! と錬金釜の中身が爆発して失敗してしまう。
がああああああああああああああああああああああああああああああ!
くそおおおおおおおお! どうして成功しないんだよおおおおおおおおおおおおお!
諦めず調合を再開する。
2回目、3回目と繰り返すが、すべて失敗した。
また、その過程で練金釜を数回蹴った。
「アルケミア先輩! 調合をやめてください! お願いですから!」
「黙れっ! 喋りかけてきたら気が散るだろ!」
「もうやめてください! やめて、やめて、やめてよおおおおおおおおおおおおおお!!」
今度はソテイラが私を押し飛ばす。
その衝撃で、私は丸テーブルにぶつかって、テーブルごと倒れた。
ソテイラは肩で息をしている。
「なにすんのよぉおおお!」と私は立ち上がってソテイラに詰め寄る。
「みんなが採取してくれた素材がもったいないです!」
だが、ソテイラは怯むことなく大声で私を怒鳴りつけた。
ソテイラはさらに言葉を続ける。
「アルケミア先輩。もういいですから。調合できないなら大人しくそこのソファに座っててください」
「ふざけるなっ! 私のせいにするなっ! そもそもお前のコンテナの素材がゴミカスなのが一番悪いんじゃな――――」
次の瞬間、ソテイラは私の頬っぺたを勢い任せに平手打ちした。
パチーンと、調合部屋に大きな音が響く。
ソテイラは、ワナワナと体を震わせ、コンテナ箱を指差しながら激昂する。
「そこにある素材はっ! 私の友達がっ! 体を張って集めてきてくれた大切な素材ですっ! 素材を大事にできない先輩には錬金術師を名乗る資格はありませんっ! 不愉快ですっ! バハムートボムの完成品なら先輩にあげますから調合部屋から消えてください!」
すごい剣幕だった。
私はソテイラに何も言い返す事ができなかった。
クロニクル級錬金術師の私が、こんな小者に説教されるなんて屈辱的だった。
その後。
完成品のバハムートボムと銀貨一枚を押しつけるように渡して、私をアトリエから追い出した。
「そのバハムートボムと銀貨は先輩にあげます。銀貨に関しては、私から先輩への手切れ金なので、もう二度とこのアトリエに来ないでくださいっ!」
そのまま勢いよく玄関扉を閉めた。
お金と武器。
目的のモノは手に入れた。
だが、私の気持ちはまったく晴れなかった。
それどころがどす黒い感情が胸の中をぐるぐると巡っている。
アトリエをあとにして数分歩いた。
そして、ソテイラが最後に放った言葉をまた思い出して、憤然の想いに燃える。
「許さない……ロイドも女王もアイリスも! 私を馬鹿にした奴ら全員が憎いっ! この私が、あんな小者に最大級の恥をかかされたのだって、すべてロイドが原因だ! お前さえ、お前さえアトリエから出ていかなければああああああああああああ!」
私は大声で咆哮する。自身の憎悪の感情を爆発させる。
バハムートボムを握りしめてこの世に復讐を誓う。
その時。
予想外の事が起きた。
「それ、今だぁぁぁぁぁ! アルケミア卿を確保しろっ!」
「え?」
突然、騎士達が茂みから飛び出してきた。
咄嗟の事で反応できなかった私は、騎士達に組み伏せられた。
倒れた衝撃で、握っていたバハムートボムを落とす。
爆弾がコロコロと地面の上を転がる。それを見た騎士の一人がギョッとした表情を浮かべる。
「こ、この女っ!? 爆弾を所持してたぞ!」
「恐ろしい奴だ……」
「アルケミア卿、まさかテロ行為まで考えていたなんて……」
騎士達が恐ろしいものを見るかのような目で私を見た。
「ち、ちがうっ! 私はテロ行為なんて……! この爆弾だってあそこのアトリエで作ったものだよ! 錬金術師がバハムートボムを作って何が悪いんだ!」
「黙れっ! その口汚い言い訳は女王陛下の前でしろっ! おい、こいつを護送車に連れていけっ!」
騎士達は私に罵詈雑言を吐いて引っ張っていく。
「いやあああああああ! は、放してっ! 私はアルケミア卿よ! 偉大な錬金術師なのっ! 悪いのは全部ロイドっ! 私は何も悪くない、私こそが正義だあああああああああああ!」
私は大いに抵抗した。
だが、騎士達の力はたいへん強く、私はあっけなく護送車の中に押し込まれてしまった。
護送車の中は真っ暗で、まるで私の未来を暗示するかのようだった。
書籍化の情報が新しく解禁されました!
詳しい内容は『活動報告』の方に詳しく記載しておりますので、ぜひご覧ください!
イラストレーター様はなんと『あのお方』です!
次回の更新は2022/12/10となります!




