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第57話:カレイドマーメイド

 ホテルへと帰還した俺達は浴場へと向かう。

 店員の話によるとドワーフが建築した浴場らしく、期待を抱きながら脱衣所に入った。

 施設全体が大理石で造られており、ドワーフの技術の高さを改めて実感した。

 浴室は大きく分けて三種類に分かれていた。

 高温浴場、微温浴場、低温浴場。

 高温浴場ではサウナなどが存在しており、発汗作用があるオイルを塗ってくれる温泉妖精がいた。

 温泉妖精とはその名の通り、温泉のサービスを快適にしてくれる便利な妖精の事だ。

 使い魔的なポジションだと思ってくれていいだろう。

 テーブルが等間隔に配置されており、まずそこで日頃の疲れを癒す事に専念する。

 俺がサウナに入ると、同年代の男性から無言の圧力を感じた。


 こやつ、この俺とサウナバトルをするつもりか?

 やれやれ、休暇で来たんだが受けてやるか。

 サウナの共通した特徴なんだが、毎回無言でロックオンしてきてサウナバトルを仕掛けてくる輩が絶対いるんだよね。


 強制されてるわけじゃないし、無視すればいいんだけど、なんとなく応じてしまうのが男性のサガだろう。



「だが相手が悪かったな。俺にはプロテクト魔法がある。これを自分にかければサウナに何時間いようと平気なのだ」

「そんな卑怯な手段で勝ってうれしいですか先生」

「今のは冗談だよ。俺もそんな空気読まない事はしない」

「先生の事だから冗談じゃなくてマジで言ってるのかと思いました。先生以前俺にこんな事言ってたじゃないですか。『俺は戦うのが好きなんじゃなくて勝つのが好きなだけなんだ』って言って《運命のダイスロール》でインチキしたの覚えてますよ」

「あ、あれは熱くなりすぎて変な事を口走っただけだ。本心じゃない」

「本当ですか~? 人間、熱中した時ほど本性が出ると言いますよ」



 マルスも随分と言うようになったな。

 それだけ打ち解けてきたって事か。

 レラと話す時みたいなカジュアルな喋り方もするようになってきたし、良い傾向と言えるだろう。

 結局、サウナは10分ほど楽しんで次の微温浴場へと向かった。

 微温浴場には40℃前後の浴槽とぬるま湯の二種類が存在する。

 それぞれ湯船が三つずつ存在した。

 かなり豪華だね。

 ドワーフ最高だよ。

 ドワーフが携わっているだけでここまで浴場の質が跳ね上がるのか。

 一家に一台欲しいと思ってしまった。


 それぞれの湯船にはモンスターのオブジェがあって、モンスターの口からお湯が排水されていた。

 ドラゴン、グリフォン、水鰐アーゲル。統一性はまったくないが、力強いモンスターが配置されてるように感じた。

 ちなみに水鰐アーゲルというのは、ワニ型の大型モンスターの事だ。

 生息範囲は森。

 湖の周辺などにたまに出現する。

 非常に獰猛なので冒険者達に恐れられてるが、例に漏れず水系統の魔獣なので雷属性の魔法に弱い。


 サウナに入ったばかりなので、最初はぬるま湯から入る。

 その後、一般的な温度の浴槽に浸かるって感じだ。

 その二種類を楽しみながら一時間ほどそこで過ごした。



「あぁ~、生き返るわぁ~」

「温泉はいつ入っても気持ちがいいですね。こんなに浴槽が広いと泳ぎたくなっちゃいますね」

「泳ぐのは禁止されてるらしいけどな」



 当然ながら、他のお客さんに迷惑になるので温泉で泳ぐのは禁止されている。

 ちびっ子はそんな事を気にせずに普通に泳いでるけど、俺達はもう無理だな。



「ところで先生、サウナのあとに水風呂に向かわないのは意外でした。何か理由でもあるんですか?」

「古代メルゼリア王国によると高温浴場→微温浴場→低温浴場→微温浴場で入るのが一般的なんだ。サウナのあとすぐに水風呂に入るようになったのは最近になってからだ」

「へー、先生は歴史にも詳しいですね。流石です」

「最近はネットで調べればすぐに出てくるからな」

「ね、ネット?」

「いや、なんでもない。こっちの話だ。情報魔法的なあれだと思ってくれ」



 実際のところは、イゾルテさんからお借りした本に、そう書かれていただけだ。

 仲良くなったおかげか、書斎にも立ち入らせてもらえるようになって、週一で本を数冊お借りしている。

 伯爵家の本となると、一つ上のグレードの情報が載っているので、これまでは知り得なかった新事実も多くあった。

 カレイドマーメイドの基本情報だってイゾルテさんの本で知った。

 それまで俺はカレイドマーメイド=衣装がえっちという漠然とした情報しか知らなかった。



「たぶんそれ、漠然以前の問題で、えっちな事以外大して興味なかっただけなんじゃないんですか?」

「マルスよ。俺は紳士だぜ?」

「本当の紳士はたぶんそんな台詞言わないと思います」



 微温浴場のあとは低温浴場。

 そこには水風呂が存在した。

 ひんやりとした水が満たされた浴槽に肩まで浸かる。

 プールや海とは違う第三の感覚。

 水風呂に入るは超久しぶりだったけどベリーグッドだ。


 結局のところ俺達は二時間くらい浴場にいた。

 温泉を充分に堪能した俺達は、浴場から脱衣所へと引き返してアトリウムへと戻った。

 アトリウムってのは玄関的な所で、広々としており、ソファーなどが複数置いてある場所。


 アイリス達もそこでお喋りしていた。

 どうやら俺達より三人の方が早く温泉から出たらしい。

 お風呂に関しては、女性陣の方が長い印象があったけど、実際のところはそうでもないのかな?



「友人達と一緒なら俺達とそんな変わらないんじゃないですか? 旅行中だと美容品の数も限られてきますしね」



 俺の疑問に対してマルスはそのように返した。

 言われてみれば、旅行だったら会話メインになりがちだ。

 家建てられるくらいの労力で毎日行っている美容洗顔も、ゆっくりと寛げる自宅だからこそなのかも。

 それをなんとなく理解してるから、女性陣の浴場での滞在時間もほどほどになるのだろう。

 逆に、普段そんな事考えない男性陣が旅行のテンションでついつい滞在時間が長くなってしまう。

 この現象を論文にまとめて学会で発表しても「ふーん、そうなんだー」くらいの反応しか帰って来ないんだろうな。


 その日の夕食はホテルの最上階にあるレストラン。

 食べ放題のお店でアイリス達も非常にテンション上がっていた。

 いつの間にかアイリス=食べ物みたいなイメージが定着しつつあるが、俺の中で美味しいモノを食べさせれば無条件で喜んでくれるアイリスは本当に女神に見える。

 最近はデートのハードルも高くなってきて、料理の味が美味しいのは当然として、店の雰囲気が美味しいという高度な店選びが要求される。

 夜景が見えてオシャレな雰囲気を意識した方がいいのが、それとも居酒屋的な堅苦しくないお店の方がいいのか、毎回わけわかんなくなる。

 店選びに正解はないとよく言うけれど、正解を用意してくれた方がエスコートする側は助かるものだ。



「マルスくん、今日のロイドさんはいつもとは違って真剣ですね。なんだかいつもよりかっこよく見えてきます」

「先生すげえ……」



 俺達は列に並んでお店へと入った。

 ミネルバでも食べ放題のお店はあったけれど、こちらの料理は海の幸が中心であった。

 また、当ホテルは6階建てなので食事だけでなく夜景も楽しむこともできた。

 アイリスやティルルさんも楽しんでくれてるようだし、今回は成功と考えていいだろう。



 ◆ ◆ ◆



 夕食後、客室に戻ってベッドの上で寝転がっていると、玄関の方からノック音が聞こえる。

 そこにはホテルの店員がいて、俺に会いたい人がいると告げられた。

 いったい誰だろう?

 不思議に思って、同じ部屋に泊まってるマルスと共に一階まで降りていくと、エントランスの方に絶世の美女が立っていた。


 驚くべき事に、その人物はカレイドマーメイドだったのだ。

 カレイドマーメイドとわかったのは、その独特の衣装と魚の背鰭のような耳。


 外見年齢は二十代前半。

 青髪ロング、瞳の色は深い紅色。胸は控えめに膨らんでいる。

 青白赤の三色を組み合わせたトリコロールカラーの衣装を着ている。

 手首から先を覆い隠すほど長い袖。布面積は広いが半透明な部分が多くて擬似的な露出度が多い。

 脚はすらっとして長く、お尻の上には尻尾のような尾鰭がついていた。

 一般的な人魚とは違い、人間と同じように二本の脚ついているのもカレイドマーメイドの特徴で、鱗の場所も足首付近と限定的だ。



「なんて透き通っていて透明感のある綺麗な衣装なんだ。ミニスカートだし、ニーソだし、脚も白くて瑞々しくて綺麗だし、カレイドマーメイドを見たのは初めてだけど、こんなに人間に近いとは思わなかったよ。お尻の上の尻尾も良い味出してるな」

「今の発言で普段から先生がどんな場所をガン見してるのかなんとなくわかりました。タイツを装着してるハーピィとか好きそう」



 マルスは呆れながらそう言った。

 彼もカレイドマーメイドにはやや驚いてるようだが、俺の冗談に反応できるだけの余裕はあるようだ。

 俺達が二人でコソコソ話してると女性はこちらに気づく。


 凛とした足取りで近づいてきて、女性は丁寧にお辞儀した。



「その黒髪、その優しそうな顔立ち。アナタが噂のロイド様ですね。私はアトランタ王国より使者としてやってきたフェルメールです。お会いできて光栄です」


 どうやらこの子が俺に会いたい人物のようだ。

 まったく接点のない子、それもカレイドマーメイドだったので俺はとても驚いている。


 アトランタ王国の使者と言ってたけど、俺みたいな平凡な男にいったい何の用だろう。



「アトランタ王国の使者と仰っておりましたが、俺に何か御用ですか?」

「えっと、要点だけ申しますとキングクラーケンのお礼でやってきました」

「キングクラーケン?」

「先生が昼間に倒した化け物イカのことですよね」

「左様でございます。奴には我々も長年悩まされておりましたので、ロイド様にはとても感謝しております」

「へー、そんなつもりはなかったんだけど、喜んでくれたのならこちらも嬉しいよ」



 偶然にせよ、人から感謝されるって嬉しいな。

 そういえば、お礼っていったいどんなのを貰えるんだろう。



「話は前後するんですが、俺達の泊まってる場所がよくわかりましたね」

「そちらにいらっしゃる方と、他の方々のご様子から見て観光客だとすぐにわかりましたから、このホテルに泊まっているだろうと推測しました」



 どうやらアイリス達の存在もすでに認知してるようだ。

 船の上にいた時に見られたのかな。

 一応質問してみると、浜辺で遊んでいたのもしっかりと観察されていたようだ。



「それはそうと、海の水をあんなにガブ飲みするなんて、ロイド様は海が本当に大好きなんですね! 仲間達も感動してましたよ!」



 やっば、黒歴史の部分までしっかり見られていた。

 しかも変に勘違いされてるのがめちゃくちゃ恥ずかしい。

 事情を知ってるマルスは俯いて笑いを堪えている。



「そこで本題なんですが、私と一緒にアトランタ王国までいらしてくださいませんか? ロイドさんをウンディーネ様にお会いさせたいんです」

「え?」



 変な声が出てしまった。

 王国までついて来いと急に言われてちょっと困惑中だ。

 フェルメールの話によれば、ウンディーネ様は俺に対して非常に興味を持っているようで、一度お会いしたいとも考えてるそうだ。



「それって今からですか?」

「そちらの方が私としては好都合ですが、本日が無理なら別日でも構いませんよ。ウンディーネ様にはそう伝えておきますので」



 その言葉にホッと一安心。俺は胸を撫で下ろした。



「ただ、ウンディーネ様は待つのがあまり好きではないお方なので、『三日以内』に謁見して下さると助かります」



 フェルメールは申し訳なさそうに言葉を追加した。

 三日以内って結構急だなー。どこかのパワハラ錬金術師を想起させるような期限だ。

 多分俺が行かなかったら彼女フェルメールがとばっちりをくらう可能性があるし、旅行が終わり次第すぐに行った方がいいかもしれない。



「今は友達と旅行中なので、それが終わってからでもいいですか。旅行は明日までなのでフェルメールさんと一緒に行くのは明後日ってことで」



 明後日なら俺も予定が空いてるし、彼女の依頼に付き合う事は充分可能だろう。

 俺は明後日同行することフェルメールに提案した。



「二日後ですね、承知しました。それではいったんウンディーネ様の所に戻りたいと思います。本日は急にお訪ねして本当にご迷惑をかけました」

「いえいえ、別に気にしないでください。こちらの方こそ、俺の都合に合わせて頂いてありがとうございます」



 そのようなやりとりを交わして俺達は別れを告げた。

 ウンディーネ様かー。どんな人なんだろう。

 できれば優しい人だったらいいなぁ……。


 

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今回遅れたので次回は明後日の19:00を目安に頑張ります!

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[一言] 転生者でもないのに現代地球知識知りすぎ(本来知らないはずの知識をギャグシーンに挟む)、は一昔前のギャグ漫画だとメタ表現として結構よく見る表現だったから私はそこまで気にならなかったけど、そうい…
[気になる点] 転生者でもないのにネットとという単語知ってるのはどうかと思う。 転生者だったらだったで、これまでの物語全部破綻するけど。 以前の誰かの感想でも言われていたけど、地球産の単語使いすぎかな…
[一言] 大事なことなので2度……はっ?! 消えている……だと?
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