第55話:テトラ島
船に揺られる事およそ一時間。目的地のテトラ島に到着した。
俺達は船から降りて島の一部を見渡した。
道路はしっかりと舗装されていて観光施設が多く並んでいる。町外れの丘の上には黒い灯台が見えた。
船着き場には大勢の観光客がいて和やかにお喋りしている。ガイドに案内される家族連れのツアー客も多い。
「それでは改めて本日の予定を確認します。わからない事があれば、いつでも私にお聞きください」
ティルルさんは手帳を開いて、就寝までのスケジュールをざっくりと読み上げていく。
その表情は普段より穏やか。彼女も休日モードに入っているのかもしれない。
そうだとしたら俺も嬉しいな。
「まずはホテルにチェックインしよう」
事前に伝書鳥を送っているから「満室だから泊まれません」という事態にはならないと思う。
俺達は予約していたホテルに赴く。リゾート地というだけあってホテルの内装はとても立派だった。
店員から番号付きの鍵を預かって三階まで階段で上る。
三階に到着する。通路の壁には絵画などが飾られており、通路の隅にはエキゾチックな雰囲気漂う白色の花瓶があった。
玄関の中心に刻まれた部屋番号を確認しながら進んでいく。
俺達の部屋は奥から二番目だ。
鍵を開けて入室すると俺達は喜びに満ちた歓声を上げた。
客室の壁紙は白色を基調としており、床には黒色のカーペットが敷かれている。
一人用のベッドが三つあり、とても綺麗にベッドメイクされている。広すぎず、狭すぎない、ちょうどいい広々とした空間の部屋だった。
さらに個室が二つ。洗面所の一つ先には広々としたシャワールーム。トイレと別々なのは地味にリッチ感あるね。
部屋の雰囲気はベリーグッドでございます。
アイリスもご機嫌のようで、ベッドの上にダイブする。ティルルさんに案の定窘められててかわいい。
ちなみに俺とマルスの客室はその隣となる。
こちらも三人部屋だけど、アイリス達と隣同士の部屋が良かったのでちょっと奮発した。
こんな所でまでケチっても仕方ないしね。
客室にそれぞれの荷物を置いて、必要な荷物だけを持って俺達は部屋をあとにした。
◆ ◆ ◆
ホテルの外に繰り出して浜辺に向かって歩いていくと、船を降りる時にも目にした灯台をマルスが指差した。
「先生、海水浴の帰りにあの灯台に行ってみませんか?」
「え? 別にいいけど、あそこまで結構遠いぞ」
「皆で行くのですぐに到着しますよ」
マルスの方から提案するのは珍しいな。
「ははーん。マルスくん、さては《伝説の灯台》の御利益にあやかろうとしてますねぇ~」
レラがニヤニヤと笑みを浮かべながらマルスをからかう。
「伝説って?」
アイリスがレラに訊ねる。
「ええ、このテトラ島には複数の伝説が存在するんです。一番有名なのは《カレイドマーメイド伝説》ですが、マルスくんが言っているのは《伝説の灯台》です。そこで結ばれたカップルは永遠に結ばれるんですよ」
「へー。なんだか神秘的ですね。マルスさんはロイド様に告白するんですか?」
「いえいえ、皆でいきたいと思っているんです。そういう伝説があるのは俺もいま初めて知りましたよ」
マルスはアイリスの言葉をさらりと流してそのように答えた。
アイリスは恋愛脳というほどでもないが、やはり伝説の灯台が魅力的に映るのかキラキラと目を輝かせている。
「マルス様、海水浴の帰りではホテルの夕食と時間が若干被ります。本日ではなく翌朝早くに立ち寄るのはいかがでしょうか?」
「そうですね。それじゃあ明日行きましょうか」
マルスはティルルさんの意見に同意した。
「夕食のあとだとダメなのですか?」
するとアイリスが不思議そうに尋ねた。
「ロイドさんのチートさで感覚がマヒしてますが、本来は夜中に出歩くのは危険なんですよ。魔物が活性化する上にシャドーキャットなどが現れますからね」
レラがそう言った。
俺がいるから感覚がマヒするって部分はイマイチわからんが、レラの意見におおむね同意だ。
シャドーキャットとは影の魔物である。
夜にしか出現しない魔物で、猫のような姿をしているからシャドーキャットと呼ばれている。個人的にシャドーキャットは苦手意識がある。俊敏なので倒すのがちょっと怠い。
アイリスも納得した上で、明日の朝に太陽が登ってから灯台へと立ち寄ることが決まった。
それから10分ほど歩いて、俺達は念願のカレイド海岸に到着した。
砂浜にテントを建設して俺達は水着に着替えた。
俺とマルスは海パン。
対して女性陣は素晴らしかった。
アイリスは白を基調としたビキニ。レラは花の装飾がある感じのビキニ、ティルルさんは青を基調としたビキニだった。
「おや、ワンピースの方が一人もいませんね。アイリスさんはてっきり露出の少ないワンピースだと思ってましたよ」
「海に行った経験はないのに水着の知識は深いんだな」
マルスは苦笑した。
恋愛脳のレラはやはり水着の知識には長けているようだ。
ちなみに俺はおっぱいが強調されてればそれでよしっ!
「ロイドさんは単純ですねー」
まだ何も言ってないのにレラが俺を眺めながら呆れている。
表情に出ているのだろうか。
「あっちー。太陽っちマジで灼熱なんだけどー。チョベリバー」
「汗でメイクも落ちて来てるしマジガン萎えー」
褐色のギャルが手鏡で顔を見ながら砂場を歩いていた。
話は変わるが俺は褐色ギャルが大好物なのだ。これは誰にも言っていない秘密だ。
アイリスみたいに常時優しい子もいいが、普段チャラチャラしてるギャルが急に乙女っぽい反応をするとドキッとしてしまう。
せっかくだからナンパという都市伝説にチャレンジしてみるか?
いや、女友達と旅行に来てナンパは非常識すぎるか。
「ナンパは諦めた方が良いと思いますよ」
「だから俺の心を読むなって」
「私の学説ですが、オタク君にも優しいギャルは存在するかもしれないが、オタク君にだけ優しい都合のいいギャルは存在しないと思います」
レラは笑顔でそう答えた。
オタク君に辛辣すぎる……。
さ、探せば本当にいるかもしれないだろっ!
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