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第54話:キングクラーケン

 船が出港して30分が経過した。

 船員によると目的地まであと半分くらい。その間やる事ないので、俺はロビーで読書をしている。ビスケットをかじりながらページをめくる。あまりお行儀がいい食べ方とは言えないが、今日はフリーだからね。俺も周りにあまり気を使わずに自由に過ごしている。

 ロビーにはアイリス、ティルルの二人がいて、到着後の計画について和気藹々とお喋りしていた。

 レラとマルスは外で景色を眺めている。レラは海が初めてなので、それに付き合っているような感じだ。

 今ごろマルスが海のうんちくでも語っている頃だろう。もしかしたら逆かもしれないけど。


 ビスケットを食べてると喉が渇いてきたな。そう思った俺はアイテムボックスから水筒を出してアイスコーヒーをマグカップに注ぐ。

 その時、船内が大きく揺れた。同時に俺の魔導書にアイスコーヒーが零れてしまい、大きなシミができてしまった。

 ショックのあまり、俺は大きな悲鳴を上げた。この本めちゃくちゃ高かったのに……。

 やってしまった……。ながら読書はやっぱり良くないね。


「ロイドさんロイドさん! 大変です! キングクラーケンが出現しました!」


 レラが悲鳴を上げてロビーにやってきた。数秒遅れてマルスも到着する。

 レラの言い放ったキングクラーケンというワードに船内が騒然となる。

 悲鳴を上げるもの、真っ青な表情を浮かべるもの。勇敢な若者は剣を握り、勇み足で外へと繰り出す。


「レラさん。キングクラーケンが出現したって本当ですか」


 とアイリスが尋ねた。


「は、はい! めちゃくちゃデカかったです! や、ヤバいですよアレ! 間違いなく神話級です!」


 神話級って大げさな……。

 キングクラーケンとは、全長100メートルほどの巨大モンスターで『海の怪物』と呼ばれている。

 すごく大きいので初見だとインパクトあるが、雷属性魔法が明確に弱点なのでそれを知っていれば大して強くない。

 ギルドでもらった魔物図鑑によると最上級モンスターに匹敵すると言われている。

 雷属性魔法を使える俺にとっては、そんな強いと思わないけど。


「せ、先生。俺達では手に負えませんので、どうか手伝ってください!」


 マルスの言葉に頷いて俺達はロビーを出た。

 キングクラーケンの来襲で通路はパニックになっていた。


 甲板へと続く通路を進みながら、ふと、最近の出来事を思い出す。


 ルミナス牧場の件が終わって以来、俺は色々なパーティにゲストとして招待されている。

 そのたびに俺は他の冒険者たちに、「この獲物はお前に譲るぜ☆」的な事をよく言われる。


 きっとそれは褒め言葉だと思うし、獲物を譲ってもらえるのは、きっと名誉なことなんだと思う。

 覚えた言葉はすぐに使ってみたくなるのが人のサガだ。ちょうどタイミングもいいし、俺はレラに呼びかけた。


「レラはたしか中級魔法のスパークが使えたよな?」

「ええ、一応使えますよ。それがどうしたんですか?」

「俺の代わりにレラが奴を倒してくれ」

「は?」

「奴は雷魔法が弱点だ。キングクラーケンはお前に譲るぜ☆」


 俺は、親指を立ててウインクした。


「う、うええ!? いきなりなに言っているんですかロイドさん!? む、無理ですよ! こんな非常事態にまで冗談言わないでください!」


 間髪入れず怒られてしまった。

 冗談のさじ加減はなかなか難しいな。半年たっても未だに慣れないや。


 てか、最近、デカいモンスターが出現するたびに俺が対応してるような気がするけど、俺がいない時にデカいモンスターが出現したらどうやって対応してるんだろう……。


 通路を抜けて甲板に到着した。

 キングクラーケンは船のマストに絡みついており、圧倒的な巨体で俺達を見下ろしていた。

 同じ船に乗り合わせていた他の冒険者達が協力して戦っていた。

 戦況はあまり良いとは言えず、先程まで戦闘していたと思われる女性冒険者二人が触手で拘束されていた。

 女性冒険者は「たすけてー」と悲鳴を上げている。


「うおおおお! キャサリンを返せ!」


 キングクラーケンの巨体にも動じず、勇敢に助けに向かう男性剣士。

 しかし、『ボッコーン!』とお決まりのように触手で吹っ飛ばされた。

 キングクラーケンは、さらに触手を伸ばして周りにいる男性冒険者も次々と拘束していく。


「ロイド様、ロイド様。奴は雷属性以外の魔法でも倒せますか?」とアイリスが尋ねる。

「え? まあ、最上級魔法なら他の属性でもいけるんじゃないか? アイリスの場合だとウォーターダイダロスあたりかな」


 あの大きさだと上級魔法はちょっとキツイが、最上級魔法なら充分押し切れると思う。

 ただ、あんまりオススメはしないな。弱点が明確だから素直に雷属性を撃ちこんだ方がいいよ。

 ……と、アイリスに伝えようとしたが、すでにアイリスの姿はなく、アイリスは颯爽とキングクラーケンの眼前に降り立っていた。


 杖を華麗に回しながら謎の決めポーズ。


「正義の聖女アイリス見参! ふふふ、ついにロイド様に教えてもらった最上級魔法であるウォーターダイダロスの出番がやってきましたね。さてさて、図体だけが大きい魔物が《最上級魔導士》の私に勝てるとはお思いにならないでくださいね」


 アイリスはモンスターの目の前で馬鹿正直に詠唱をするので、あっという間に触手で拘束された。

 あ、あの……アイリスさん?

 光の速さで捕まってしまった。いったい何しにいったんだろう……。


「ちょっと待ってください。アイリスさんって最上級魔導士なんですか?」

「……え? ああ、半年くらい前に最上級魔法の《ウォーターダイダロス》が使えるようになったからな。公認ではないけど、最上級魔導士と呼んでいいのかも?」


 最後に?マークをつけたのは、今の戦い方があまりにも酷かったからだ。

 初心者魔導士といっても過言ではない立ち回りだった。


「あれ、もしかして私、僧侶職のアイリスさんに魔法で負けてる……? こっちは本職なのに……」


 レラは愕然となって杖を落とし、その場に両膝をついた。

 どうやらレラはメンタルがやられてしまったようだ。


 まあいいや。今はキングクラーケンを処理することが最優先だ。


 現在の戦況を観察ところ、捕まっている人が数十人いる。

 ライトニングストームは彼らを巻き込んでしまう可能性が高いので危険だな。

 まずは触手に拘束されている人達を助けだそう。


 中級風魔法のサイクロンを放ち、彼らを拘束している触手を次々と切断していく。

 キングクラーケンがこちらに触手を伸ばしてくるが、風の魔力を杖に込めた《エンチャント》による魔力ブレードで触手を一刀両断する。さらに杖をブーメランのように投げて残りの触手も破壊する。

 そろそろ仕上げだな。


 戻ってきた杖をキャッチし、フルグロウを発動してキングクラーケンの頭上まで一気に跳躍し、キングクラーケンの頭部に杖を突き刺した。


「ライトニングブレード!」


 今度は雷の魔力を杖に込めて一気に放電する。

 キングクラーケンは断末魔を上げて消し炭となり、本体は海の底へと沈んでいった。


 甲板へと戻り、先程の戦闘での負傷者を確認する。

 パッと見た感じだと死傷者はいないみたいだ。

 船の損傷も最小限で、なんとか大事には至らずには済んだ。

 俺はホッと胸をなで下ろした。


 マルスが駆けつけてくる。


「お見事! 流石先生、とても鮮やかですね! 最後のあれはなんですか?」

「エンチャントの事か? あれは魔力を武器に込める技術だ」

「へえ、すごくかっこいい技ですね! 今度教えて下さりませんか?」

「ああ、別に構わないぞ。また今度奴が現れた時は、マルスも今の要領で奴を倒せばいい」


 マルスは剣士だから相性いいかもしれないな。


「そ、そうですね……。できるかぎり頑張ってみます……」


 マルスは苦笑いでそう答えた。

 その後、戦闘には参加しなかった他の乗客達も次々と甲板に上がってきた。

 ティルルさんもそのうちの一人で、アイリスの所へと駆け寄って労いの言葉をかけていた。


「お嬢様、お怪我はありませんか?」

「ええ、私は大丈夫です。それよりも怪我をしている方を治療しましょう」


 アイリスは優しいなぁ。俺達も治療に参加するか。

 レラに声をかけたところ彼女はまだメンタルブレイクしてる状態だった。

 これは立ち直るまでしばらく時間がかかりそうだな。



 

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