第41話:ケルベロス
地下2階から地下5階を隅々まで探索したが、骸骨戦士が出現する事は一度もなかった。
フロア全体の魔物の強さが著しく上がっているように思えた。
骸骨剣豪やハイオークのような上級モンスターばかりが出現するのだ。
案内人のドワーフ曰く、本来こいつらが出現するのは地下30階らしい。
もしそれが本当ならコッコロ坑道内のモンスターバランスが完全に壊れている。
「困ったな。骸骨戦士を倒さなければCランクに昇格できないぞ」
「誇らしきご友人様。人生思うように事が運ばない事もあります。こういう時は焦らず、一休みして気分をリフレッシュしましょう」
セフィリアさんの発言も尤もだな。焦ったところで物事が上手く行くわけがない。
何事も引き際は大事だ。昇格クエストは申請すればいつでもできる。
「そうですね。今日はいったん引き上げましょうか」
「流石でございます。今回のクエスト失敗は昇格以上の価値のある経験になるでしょう」
俺たちは案内人のドワーフに別れを告げてコッコロ坑道をあとにしようとした。
来た道を引き返していると初回に訪れた時に見つけた『隠し通路』の事を思い出した。
剣士と僧侶がいないまま足を踏み入れるのは危険だと判断して断念したんだったな。
今回はセフィリアさんもいるし戦闘力に関しては申し分ない。
セフィリアさんに隠し通路のことを話すと、今度はセフィリアさんも興味を抱いたようで帰りにちょっと寄ってみようという話になった。
「帰ると言ったそばから付き合ってもらって申し訳ありませんね」
「別に構いませんよ。ご友人様が一番の消化不良でしょうから」
セフィリアさんは本当に優しいなぁ。こんな優しい人と結婚できたら幸せだろうな。
少し天然だけど戦っている姿はかっこいいし、銀髪は綺麗だし、おっぱい大きいし。
目的のエリアに到着。俺が土魔法で偽装した隠し通路を見つけた。
《肉体強化》を発動して、目の前の壁を骸骨戦士だと思って、フルパワーでぶん殴った。フロア全体が大揺れするほどの超威力であり、入口を塞いでいた壁は木端微塵になった。
さて、これからセフィリアさんと一緒に隠し通路を進んでいくわけだが、セフィリアさんと共闘が決まった。
共闘する理由としては『地図が存在しない』からだ。
坑道内の正規ルートでは地図があったので俺一人で戦闘を行う事ができたが、地図がない場合での単独戦闘をするのは極めて危険だ。
セフィリアさんを危険な目に合わせるわけにもいかないので俺の方から共闘を提案したのだ。
前衛にセフィリアさんで俺が後衛となる。
通路の先は非常に入り組んでおり、迷路になってたのでマッピングを行いながら慎重に進んでいく。
「ご友人様はマッピングもできるのですね」
「前職はフィールドワークが多かったのでマッピングは得意ですよ」
「素晴らしいであります。ご友人様が隣にいれば私も安心して剣を振るうことができます」
「こちらこそセフィリアさんがいてくれて安心しますよ。マッピングしながらの単独戦闘は大変ですからね」
ときおり、中級モンスターの犬の魔獣が出現するが、セフィリアさんが代わりに討伐していく。俊敏な犬の魔獣であっても彼女の手にかかればあら不思議。全く危なげなく倒していく。
とはいえ、セフィリアさんも人間。
戦闘では最強を誇るセフィリアさんでも弱点は存在する。
道なりに進んでいると、セフィリアさんは足元の魔法陣を踏んでしまう。魔法陣が光り輝いて、そこから銀色の鎖が四本飛び出してセフィリアさんを拘束する。
「くっ、動けませんね」
四肢を鎖によって拘束されて動けなくなった。
うおおおおおおおおおおおおお!!
なんて素晴らしい絶景だ。
セフィリアさんの豊満な胸が鎖に締め付けられて強調されている。
「申し訳ございません、ご友人様。このセフィリア一生の不覚です」
「いえいえ、誰だってそういうことがありますよ」
セフィリアさんの鎖を風魔法で破壊した。
「こんな所に罠が仕掛けられてるとは思いませんでした。
探知魔法の《索敵》で他に罠がないか確認してみますね」
俺は周囲に罠がないかをサーチを使って確認する。
すると衝撃の事実が判明した。
「すごい事がわかりましたよ」
と、俺はセフィリアさんに言った。
「すごい事?」
「この周辺に罠が100個あります」
普通、罠は多くても一フロアに3、4個だ。
100個はいくらなんでも異常だろう。
「随分とたくさんの罠がありますね。そんなに仕掛けて自分も避けて通れるのでしょうか」
セフィリアさんはかなり冷静に分析している。真剣な横顔も素敵だ。
「この先に何かあるのは間違いないですね」
さらに進むと天然の巨大な地底湖が姿を表した。水面がエメラルド色に輝いている。
こんな所に繋がっていたのか。
地底湖の付近で30分ほど休憩を挟んで再出発する。
それから歩むことさらに1時間。
俺たちの冒険にも終着点が見えてきた。
そこはとても広い空間だった。
円状にかたちどられた、街の闘技場ぐらいの広さを持つ。
その一番奥には3メートル級の巨大な門があり、その門を守るように巨大な魔獣がいた。
頭部が三つあり、全身が黒く、獰猛な顔つきの魔獣。不思議なことにその魔獣は鎖に繋がれており、その鎖は背後の扉と連携している。
一言で言えば門番だろうか。鎖の長さ的にこちらから仕掛けなければ安全ではあるが、巨大な扉は半開きとなっており、その中から魔力が漏れ出ている。
今回の計測器の異常の原因は、間違いなくあの門の中にいる。
魔導士としての勘がそう告げている。
「初めて見るタイプの犬の魔獣ですね」
「あれは《ケルベロス》という大型の魔獣です」
「ほうほう、毛並みが気持ちよさそうですね」
セフィリアさんはケルベロスに感動している。
「せっかくなのでセフィリアさんがお相手しますか? 俺は昔一回戦ったことがあるのでお譲りしますよ」
セフィリアさんはマスター級なので余裕で倒せるだろう。
「いえいえ、今回はご友人様にお譲りしましょう。私は戦いを拝見して学ばせていただきます」
「そう言われるとなんだかプレッシャーを感じますね」
「前回、私が《ゴブリンドラゴン理論》の話をしたのを覚えていますか? あれを思い出せばプレッシャーもなくなりますよ」
「ま、まさか!? その理論がここで生きてくるんですね!
ところでゴブリンドラゴン理論って結局どんな意味なんですか?」
「その意味はいずれわかる時が来るでしょう」
いや、そこは教えてよセフィリアさん! 教えるなら今でしょ!
結局、お互いに譲りあった結果、一緒に戦うことに決まった。
ケルベロスが襲い掛かってくるので俺たちは左右に跳んでそれを避ける。
ケルベロスの足元に泥沼を作ってケルベロスの重心を大きく狂わせる。
体勢を崩したその一瞬の隙を見逃さないセフィリアさん。
右奥から振り抜く居合の構えで、身を低くする。足裏を爆発させて弾丸のごとき速度で肉薄し、前脚から胴体にかけて一閃した。もちろん一撃必殺の威力である。
阿吽の呼吸ともいうべき連携コンボでケルベロスの討伐に成功した。
セフィリアさんはやっぱりすごいなぁ。
俺からはなにも指示してないのに、しっかりと状況を見極めてケルベロスを仕留めて下さっている。
「流石ですセフィリアさん」
「ご友人様こそ素晴らしいサポートでした」
褒めて貰えるっていいね。こうやって誰かと一緒に戦う経験は今までなかったかもしれない。
門を抜けた先は大広間であった。
長方形にかたちどられて、広さ的には先程の闘技場とあまり変わらないが、『荘厳』という言葉が似合う宮殿のようなフロア。
地面にはタイルが敷かれて複雑なレリーフが刻まれている。
部屋の四隅には太い柱も立っている。
普通の坑道なら決して見ることができない景色。
魔法によって構成された擬似空間である。
空間魔法のレベルは当然ながらマスター級。
唖然となりながら見回していると、突然、少女の声が聞こえた。
「くくく、ついに救難信号が届いたようだな」
背後を振り返ると、先程の扉が消えていた。
そのかわり、部屋の奥に幼女が玉座の上でふんぞり返っていた。
およそ10歳くらいの幼女で、桃色の髪に、頭にはシカのような二本のツノが生えている。
「えっと、あなたは誰ですか?」
俺とセフィリアさんは同じような反応をする。
すると、幼女は呆れたようなため息を吐いた。
「やれやれ、最近の若者は勉強が足らんな。
妾は魔王アルバトロス。
魔族の長にして、お前たち人間共を、恐怖のどん底に陥れた絶望の象徴だ」
ドーン!という効果音が出るようなドヤ顔で、幼女はそう宣言した。
しかし、次の瞬間にはセフィリアさんが幼女の目の前まで、すでに踏み込んでおり、拳を振り上げている。
「へ?」
目の前のセフィリアさんに驚き、間抜けな表情で固まる幼女。
幼女の頭にゲンコツをかますと、「あるっ!?」という小さな悲鳴と共に幼女は動かなくなった。
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2022/09/04の19:00に更新します!




