第4話:正直に正体を話す
今回は会話中心です。
巨大サンドワームを撃破後、俺に対する二人の反応が大きく変わった。赤の他人から憧れの大先輩のような上下関係に変化し、言葉の節々に敬意を感じるようになった。
二人は向かい合うように座って楽しそうに談笑している。時折こちらに視線を送るが、俺は気にせずに読書を続けている。
「マルスくんマルスくん。やっぱりロイドさんは何か隠しているよ」
「俺もレラの意見に同意だ。あれほどすごい魔法を使えるお方が、俺たちのような凡人と同じ馬車に乗るはずがない」
「でも読書中だから会話する機会が全然ないよ」
「いわゆる陰キャ特有の今集中してますよアピールってやつだな。こういう時は思い切ってこちらから話しかけるのが一番なんだ。陰キャは孤高アピールは上手いが、内心は友達が欲しいと思っている可哀想な生き物なんだ」
「おいクソガキ共、全部聞こえてるぞ。誰が陰キャや」
別に陰キャなのは否定はしないけど、他人からそういう扱いを受けるのは腹が立つ。
俺が二人に反応すると、二人は目を細めながら口元を引き上げた。
「ようやくロイドさんの方から話しかけてくれましたね。これでたくさんの質問ができます。会話の主導権は我にあり」
急に世紀末覇者みたいな語尾になるレラ。
その後、レラによる魔法の質問タイム。
先ほどの爆裂魔法がよほど気に入ったのか、その魔法の事を中心に聞いてきた。
魔導士は基本的に魔法が好きなので、知らない魔法に対しての探究心は誰よりも強い。
それは同じ魔導士である俺が一番よくわかっている。俺もできる限り丁寧に魔法の説明を施した。
魔法の質問は30分にも及んだ。
この問答の中で俺に対するレラの好感度はかなり上昇し、今では子供のように目を輝かせて俺を見つめている。
また、今回のやり取りの中でレラは上級魔法が使えないことが判明した。
魔法には五つのランクが存在し、魔導士のランクに応じて段階的にしか習得できない。
初級魔法、中級魔法、上級魔法、最上級魔法、マスター級魔法。
現在のレラが使用できる魔法は二段階目まで。つまり中級魔法までだ。
俺が使用した爆裂魔法はマスター級魔法なので、今の実力では使用できない事を知った時は酷くがっかりしていた。
とはいえ、レラはまだ若いので伸びしろは充分ある。
最後にそうフォローすると非常に良い表情で笑ってくれた。
現在の時刻は夕方。
カーテンの隙間から射し込む夕日の光は、彼女の美しい金髪を幻想的に照らしている。
レラのあとは今度はマルスのターン。
「えっと、先ほどは暴言吐いてすいませんでした。自分、先生を通して世の中の広さを改めて実感しました。先生は俺にとって人生の師匠です」
マルスはこれまでの非礼を詫びて、どういうわけか俺の事を先生扱いする。
人から先生扱いされた経験は一度もないので、マルスの礼儀正しい態度が少しくすぐったい。
「どうしたんだよいきなり」
「いえ、先ほどのレラに対しての対応が本当に素晴らしかったので、俺の方からも改めて感謝の言葉を先生に申し上げたかっただけです」
マルスは意外と真面目なのかもしれない。レラが懐いているのもこういう良い所があるからだろう。
「普通にロイドでいいですよ。年齢もあまり変わらないし、若者同士、遠慮とかなしの方向で付き合いましょうよ」
「うっす!! 先生のおっしゃることは絶対ですからね。俺の方も先生には遠慮しません。うっす!」
コイツ絶対わかってねえな。というか俺のこと舐めてんだろ。
ちょっと甘やかしたらこれだ。
次俺の目の前で「うっす!」って言ったらぶん殴ろう。
「すいません、魔導士の私から見たらロイドさんは大先輩ですので、流石に呼び捨てはできません。これまで通りロイドさんと呼ばせてもらってよろしいですか?」
「レラは流石に仕方ないか。好きに呼んでいいよ」
俺も彼女の真面目さは理解しているのでもちろん許可した。
「ありがとうございます。ところでずっと気になっていた質問なんですが、ロイドさんは本当に何者なんですか? 私から見たら、ロイドさんは凄すぎて大魔導士様にしか見えないんです」
ついに核心をついてくるような質問。これには俺も返答に困る。
しばらく悩んだが、最終的に正直に話すことに決めた。
彼らに正体を知られるリスクよりも、嘘がばれた時に不信感を持たれるリスクの方が大きい。
また、大事を為すには必ず人間を基本としなければならない。いま彼らは俺を信頼して歩み寄って来ているのだ。それに対して不義で返すのは忍びない。
「その質問に応える前にこちらからもいくつか質問させてくれ。錬金術師のルビーって知ってる?」
「もちろん知っていますよ。この国一番の大錬金術師様ですよね。《魔導人形》や《万能薬》といった、歴史に名を残すような素晴らしい発明をなさったすごいお方です。ルビー様の功績と自分を比べてみると、本当に私ってちっぽけな存在なんだなと思い知らされます」
世間の認識だとルビーってこんな感じなんだ。マジですげえ奴じゃん。まあ実際にすごい奴なんだけどさ。性格がちょっとね……。
ルビーへの憧れの想いをしみじみと語るレラ。まるで雲の上の存在を見ているかのような表情だ。
「実は私、ルビー様の《専属魔導士》になるのが夢なんです」
「ちょっと待ってくれ! 俺と一緒にA級冒険者になる夢はどうなったんだよ!」
「マルスくん、ちょっと黙ってて。いま大事な話をしている最中だから」
シュン……と捨てられた子犬のような悲しい表情になるマルス。
どうやらこちらのカップルもレラが主導権を握っているようだ。
「ロイドさん。どうして突然ルビー様の話を始めたんですか?」
「ルビーの《専属魔導士》の名前知ってるかなって聞きたかったんだ」
「もちろん知っていますよ。《素材採取率》が40%しかない無能魔導士のロイドですよね。私もあいつは本当に嫌いです。偉大なるルビー様が錬金術失敗する時って10割ロイドが原因ですからね。錬金術失敗の記事を見るたびに、このロイドって無能魔導士はやく死んでくれないかなーと思いながら記事を読んでます」
「そのキミが死んでくんねえかなと全力で思ってるロイドって専属魔導士、俺の事だから」
レラはしばらくの間、何が起きたのかわからず硬直した。
そして、自分の発言と今の状況を理解して泡を吹いて倒れた。
次回より本格的に物語が始動です!!
舞台はミネルバ!!
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