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第26話:王国騎士団

 なんということでしょう。

 あれほど好奇心と期待感の宿っていた視線が、匠の発言によって敵意と疑心に溢れた冷たい視線に早変わり。


「こいつがあの無能魔導士か」

「きっと他人の手柄を横取りしたに違いない」

「お前ごときが黒鴉に勝てると思うな」


 罵詈雑言が飛び交う地獄絵図となった。

 世間の評判が良くないのは、俺が一番よく理解しているので、これはいつもの事だ。


「風の噂で聞いたぞ。お前、専属魔導士を勝手にやめてルビー様に迷惑かけたんだろ。恥を知れ!」


 騎士の一人が俺に言いがかりをつけると、他の騎士たちも「そうだそうだ!」と同意した。


「勝手にはやめてません。ルビーにはしっかりと専属魔導士を辞めると伝えました」


 なるべく感情的にならず、淡々とそう弁解する。


「ルビーは天才です。

 俺は彼女の求めの半分も素材収集出来ませんでした。

 彼女はもっと素材収集の上手い人と組むべきだと感じました。

 だから専属魔導士を引退して冒険者になったんです」


 と、俺はさらに言葉を続けた。


「だまれ! 言い訳するな卑怯者! 他人の手柄を横取りした次は責任転嫁か!」

「おい、誰から手柄を奪った! このドロボー!」


 いつの間にか、他人の手柄を奪った事にされている俺。

 評判が悪いって恐ろしいね。真実でさえも勝手に歪められるよ。

 人は見たいものしか見ようとしない。まさにその通りだ。


 無能の専属魔導士、金魚のフン、ルビーの幼馴染であること以外何の価値もない男。

 これは世間一般の俺の評価であった。


 でもいまはそれでもかまわない。他人からの評価なんて二の次だ。

 今回、俺が正直に話したのは過去の自分を受け入れるためだ。

 その上で過去の悪評を払拭できればと考えていたが、こちらの方はまだまだ難しそうだ。


「ロイド様が話したことはすべて事実ですよ」


 今まで黙っていたアイリスがそう言った。


「アイリス様まで騙したのか!」


 アイリスの言葉まで曲解する騎士が現れ始めた。

 いよいよ事態が収拾できなくなったと感じたその時だ。


「いい加減にしなさい!!」


 アイリスが一喝する。


「さっきから黙って聞いていれば、ロイド様が手柄を奪っただの、無能魔導士だの、実際に見てもいないのに好き勝手言ってますねアナタ方。

 ロイド様は命懸けで殺し屋から私を護って下さったんですよ。

 私の恩人の事を悪くおっしゃらないで下さい!!

 すごく不愉快です!!」


 激昂するアイリスに騎士たちは言葉を失った。

 感情を剥き出しにして怒るアイリスを、これまで一度も見たことがなかったので俺も驚いてしまった。

 同時に、俺のために怒ってくれるアイリスに嬉しさを感じた。


「アイリス様のおっしゃる通りだ。

 お前たちの言っている事はただの偏見と侮辱だ。

 王都の騎士団としてお前たちの行動は不適切だ」


 イゾルテさんもアイリスに同意し、目の前の騎士たちを諌める。

 二人のおかげで一旦場は収まった。

 とはいえ、根本的には解決しておらず、騎士たちは無言のまま俺を睨みつけている。


「すまなかったな、ロイド。

 王国の騎士たちが失礼した。

 専属魔導士のロイドだと知っていたら私もお前に配慮した紹介ができたんだが……」


「今まで内緒にしててすいません」


「いやいや、気にするな。

 誰にだって話したくない過去の一つや二つある。

 昔の悪評はともかく、今のお前はアイリス様の近衛魔導士として精一杯努力してる。

 私はそれをしっかりと評価してるぞ」


 すごく良い事を言ってるのに大事な所は間違ったままだ。彼女はいつになったら気づいてくれるんだろう。


「いい機会だロイド。騎士団のメンバーと練習試合をしてみるのはどうだ?」


「え? 練習試合ですか?」


「昔からよく言うじゃないか、言葉が通じないなら剣で語ればいい。

 騎士の言語といえばいつの時代も一対一の決闘だ。

 私たち騎士は戦いの中でいつも答えを見つけてきた」


 体育会系のノリだ。でも今回はそれが一番かも知れない。

 そんなこんなで王国騎士団と練習試合をすることが決まった。

 イゾルテさんもちょうどいい対決相手を探してくると言って、一旦その場を後にした。



「アイリス、さっきはありがとう」


 アイリスにお礼を言った。


「いえいえ、お友達として当然の事をしたまでですよ。

 自分の過去と向き合って正直に自分の正体を明かしたこと、これは秩序神エメロードも称賛しておりますよ」


 アイリスは笑顔でそう答えた。

 知らない人たちからたくさん悪口を言われたけど、アイリスからは認められたので結果的には良しとしよう。


 それから30分後、イゾルテさんが戻ってきた。


「ロイド、黒鴉を倒したと証明できる相手を見つけてきたぞ」

「ありがとうございます。随分と早かったですね、ギルド長。どんな方を連れてきたんですか?」

「騎士団長だ」

「は?」

「普段は団長室に閉じこもっている人なんだが、お前の事を話したら快く協力してくれたぞ」 

「む、無理ですよギルド長! そんなすごい方と戦ってもなにもできませんって!」


「はっはっは、期待しているぞ!

 アイリス様の近衛魔導士としての自分を信じるんだ」


 だから近衛魔導士じゃないから信じる所なにもないんですけおおおおおおおおおおおおお!!!


 駐屯所に併設されている屋外の訓練場へと案内される。

 そこにはダンディな髭の渋いおじさんがいた。いかにも騎士団長って感じがするかっこいいおじさん。


「キミがロイドくんだね。

 事情はイゾルテくんより聞いたよ。

 私の部下が失礼な事を言って大変すまないね。

 彼らにはあとから私が厳しく叱っておく」


 騎士団長は柔和な笑みでそう言った。


「いえいえ、団長が謝る必要はありませんよ。俺は全然気にしてません」


「若いのにとても大人だ。

 ウチの騎士たちにもロイドくんの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだよ」


 先ほどまでの騎士とは違い、騎士団長は非常に温厚だ。


「決闘といっても、何回か剣を合わせるだけだ。

 こちらから攻撃は一切仕掛けない。

 ロイドくんの方から自由に攻撃してくれて構わない」


「団長はそれで大丈夫なんですか?」


「案ずるな、私の流派は西方剣術エクストリオンだ。

 防御には誰よりも自信があるから大丈夫。

 何回かロイドくんの得意な魔法攻撃を見せれば、彼らも納得してくれるだろう。

 手加減はいらない、本気で来い」


「わかりました。よろしくお願いします」


 騎士団長のお心遣い、本当に感謝します。

 西方剣術エクストリオンの実力者である騎士団長の胸を借りるつもりで、俺も全力で攻撃をさせていただきます。


 騎士団長は西方剣術エクストリオン特有の独特な構えをとる。

 グリップを軽く握り、剣を水平にして、剣先を突きつけるような持ち方。


 西方剣術エクストリオンの強みは圧倒的な防御力。

 見切りとカウンター技に優れており、生半可な攻撃は一切通じない。

 騎士団長はきっとマスター級のはずだ。

 俺の魔法は一切通じないと言っても過言ではないだろう。



 なので俺は、今回も本気で行く。

 黒鴉戦みたいに無詠唱魔法は行わず、今回はしっかりと詠唱をし、丁寧に《全力肉体強化フルグロウ》を発動する。


「ふんっ!」


 俺の方から騎士団長に攻撃を仕掛けた。

 騎士団長は瞬時に防御の構えを取ろうとしたが、俺が予想していた以上に動きが遅かった。

 というか全然防御が間に合ってない。

 俺も全力で行くと言った手前、本気で攻撃したから、いきなり体の動きを止める事ができない。

 フルグロウは急には止まれない。


 ボッコーン!!


 俺の拳は騎士団長の顔面にクリンヒットし、騎士団長は壁に叩きつけられて気絶した。

 観戦していた他の騎士たちは、何が起こったかわからないと言わんばかりな、唖然とした表情をしていた。


「お、俺なんかやばいことしてしまったかも……」


 でも騎士団長が本気で来いと言ったから……。

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― 新着の感想 ―
もうちょいねちっこく結果いたぶった感じだと他の団員に恐怖を与えられたかもしれないですね(笑)
[一言] 下にあったif騎士団対決バージョン読みました! ちょっと溜飲下がった!w 正直、ルビーよりむしろロイドの方がざまぁされてる感が強くて…。 騎士団にも団長敗北で認識を改めるだけでなくもう少し…
[良い点] 殺してないから大丈夫!w
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