第20話:ヴィッド大森林
ゴブリンは緑色の肌を持つ小型の鬼だ。
知能は低いため初心者でも倒しやすく、駆け出しの冒険者にはとても人気がある魔物。
正式名称は緑の小鬼なのだが、ゴブゴブと鳴くからゴブリンと言われている。
後半のリンの意味?
それは俺も知らないので学者にでも聞いてくれ。
そんなゴブリンだが、現在俺の目の前でゴブゴブと威嚇している。
棍棒を振り回しながら突進してくるが、俺は容赦なく中級氷魔法の《アイスキャノン》を奴の顔面に撃ち込んで葬り去った。
息絶えたゴブリンを見下ろしながら冒険者カードを前にかざす。
ゴブリンの体から魔力が溢れ出てきて、その一部が冒険者カードへと吸収された。
=============
○ヴィッド大森林のゴブリン討伐
メインクエスト
ゴブリン討伐数 3体/10体
ボーナスクエスト
ゴブリン討伐数 3体/50体
現在の領域レベル 支配領域
=============
先ほど二体倒したので今回で三体目。
冒険者カードを確認すると討伐数がキチンと増えている。
モンスターを倒せば放出された魔力の一部を吸収して、討伐数として自動登録してくれる。
とても便利ではあるが原理は不明だ。
俺が思うにこの冒険者カードが実際に吸収してるのは魔力ではなく、魔物が宿している《存在力》なんだと思う。
魔石を拾って品質を確認する。
品質は良く、市場で売れば夕食の品が一品増えそうだ。
ミネルバでの夕食の事を考えながら魔石をアイテムボックスへと収納した。
「あと47体か」
クエスト達成までの目標討伐数は10体だが、俺は特別ボーナスまで目指しているのでゴブリンを50体倒すつもりだ。現在は三体目を倒したところだ。
死んだ魔物は時間が経つとアンデッド化するため浄化魔法の《ターンアンデッド》も忘れない。
ターンアンデッドを放つとゴブリンの身体が光り輝いて、まるで空に吸い込まれるように、粒子状となってその場から消えた。
さて、次のゴブリンを探そう。
さらに森の中を歩いているとゴブリン5体を新たに発見した。まだこちらに気づいていないようなので、まとめて一掃するために上級風魔法の《サイクロン》を放つ。
巨大な竜巻が発生してゴブリンたちを巻き込み、木っ端微塵にした。
ちょっとオーバーキルだったかな。まあ倒せたからヨシとするか。
先程同様、魔石を回収していった。
ゴブリン狩猟に費やした時間は20分。
目標のゴブリン50体討伐を達成した。
魔石も85個集まったし、ボーナスクエストも達成できた。
討伐数と魔石の数が若干異なるのは、ゴブリンの他にプラントモンスターもついでに葬ったからだ。
初めての依頼にしては上出来だろう。
森から出たあとは、舗装された道を通ってキャンプ場へと戻った。
キャンプ場の入り口には男性職員が立っており、俺に気づくと笑顔で話しかけてきた。
「あっ、先ほど森に入ったソロの方ですね。
ゴブリン討伐は順調に進んでますか?」
「仕事が終わったからキャンプ場に戻ろうと思ってる」
「も、もう10体倒したんですか? 初めての方なのにすごい早いですね!」
倒した数は10体じゃなくて50体なんだが、わざわざ言葉として伝える必要はないだろう。
キャンプ場へと戻った俺。キャンプ場の広場にはテントがあちこちに点在している。
ここは一種の安全エリアみたいなものなので、ここを拠点として森に潜る冒険者パーティも大勢いる。
俺は一人で来たので全部自分一人でやらなければならない。
しかし、これがぼっちキャンプの醍醐味というものだ。
アイテムボックスからテントキットを出してその場で組み立てていく。
紐を引っ張るとテントが膨らんでいく。これで今日の寝床は完成した。
近くには川もあるし、位置的にも完璧だ。
現在の時刻は朝の10時。
ミネルバへの帰宅は翌日にするつもりなので今日はもう他にやることがない。
大自然の中でのんびりとダラダラ過ごそうと思っている。
これぞ俺が望んだスローライフ。
アイテムボックスの食材と照らし合わせながら作る料理を考えていく。
お昼はシチューでも作ろうかな。
森の中で採取していたラノコスの木の皮を燃やして焚き木をする。
ラノコスの木を薄く剥いだ木の皮は長時間燃えるため焚き木にはぴったり。
この知識はレラから教えてもらったものだ。
知識は実践に生かしてこそ意味がある。
「レラの言うとおり、本当に長時間燃えるな」
これまでは気がつかなかったが、これからは積極的に採取していくか。
リノウサギの肉を捌いて一口大の大きさに切り分けていく。これもアイテムボックスに保管してるやつ。
リノウサギの肉同様に玉ねぎなどの野菜等も一口大に切り分けてフライパンで炒めていく。
その後、鍋に入れてミルクやその他諸々の材料を投入して弱火でコトコトと煮込む。
次第にシチューのいい匂いが漂ってくる。
シチューなので完成までしばらく時間がかかる。
この辺は作り手によって個人差があると思うが、俺は30分程度煮込んでその後一時間ほど放置する。具材に味が染み渡ればより一層美味しくなるからだ。
待ってる間は暇なので紅茶でも飲みながら読書でもしようと思う。
俺は紅茶が好きだ。砂糖は入れたり入れなかったり、正直どちらでも飲める。
ルビーも同様に紅茶が好きで特にアールグレイを好んでいる。
アールグレイとは柑橘類の香り付けがされた紅茶のことだ。王都でもかなりの人気があるため良いものを手に入れようとすると数時間行列に並ばなければならい。
紅茶を飲みながら魔導書を嗜む魔導士の俺。
めちゃくちゃ意識高そう。
周りを見渡してみると、キャンプ場にいるのは冒険者だけではない。
親子連れやカップルなどもいる。
この場所はピクニックとしての価値もあるのだろう。
キャンプ場では新人冒険者が剣の鍛錬をしてたり、子供が追いかけっこしてたり、まあなんというか平和だ。
人気の狩場というだけあって人の手が行き届いているのだろう。冒険者だけでなく一般市民も集まっている。
「ぴえんをこえてぱおおおおおおおおおん!!」
突然、キャンプ場に少女の大声が響く。
ぱおんぱおんと6歳くらいの少女が啼泣していた。
「どうしたんだいお嬢ちゃん」
俺は泣いている少女の所まで歩いていって声をかけた。
「風船がお空に飛んでいっちゃったの」
少女が上空を指差した。
空は雲一つない快晴であり、赤い風船がふわふわと遠くへ飛んで行っている。
「じゃあお兄さんが取ってきてあげるよ」
「ほんとぉ?」
「ああ、約束する。すぐに戻ってくるからここで待ってな」
肉体強化魔法の《グロウ》と中級風魔法の《サイクロン》をかけ合わせ、新しい魔法を構築する。
二重魔法。
俺はこれから使う魔法をそう呼んでいる。
空中三角飛びと言えばいいのだろうか。
サイクロンで一瞬だけ空中の足場を作り、その足場に瞬時に飛び移っていく要領だ。
空中に稲妻の軌道を描くように勢いよく駆け抜けていき、風船を右手でキャッチしたあとは風魔法で減速しながら地面に着地した。
そして、少女に風船を手渡した。
「今度は風船から手を離しちゃダメだよ」
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
風船を受け取った少女は満面の笑みで感謝の言葉を述べた。
「な、なんだいまの魔法!?」
「あいついま空中を飛んでたよな……?」
「あんな魔法、魔導協会でも見たことないぞ!?」
それを見ていた観衆たちが口々に感想を述べた。
なんかこの流れ前にもあったなぁ……。
でも今回は俺をマスター級だと口を滑らせる友達はいないので、何事もなく自身のテントへと戻っていった。
その際、川の上流から美しい銀髪の『偽聖女』が流れていたので、しっかりと回収しておいた。
かわいそうに。
今回もきっと従者と逸れてしまったのだろう。
ブックマークと星5お願いします!
皆さまからの応援は執筆の励みになります!




