第82話:出航
今回はいつもより早めに更新します。
作者ページにて重要告知があります!
追伸
次のルビー回は釣り大会3のあとになります。
「よく来たわね、ミネルバが誇る大魔導士のロイド!」
聞き覚えのある声と共に、客船の甲板から俺達を見下ろす形で、依頼人のノワールが姿を現した。
腕を組んで仁王立ちしており、偉そうな雰囲気が若干漂ってくるが、ミニスカートなため俺たちの角度からだとパンティが見えてしまう。
ノワールに指摘していいのか若干怪しいラインだ。
変に指摘すると変態扱いされそうなので俺はあえてスルーする。
「ノワールさん大変です! 今の角度だとパンツが見えてます! ロイドさんがガン見してますよ!」
「はぁ!? ちょっとアンタ! なんで教えてくれないのよ、この変態!」
これが世の中の理不尽ってやつだ。
悔しいだろうが大人なら耐えなければならない。
ノワールは船を飛び降りて地面に着地する。
その際、ノワールの足からグキッと変な音が聞こえてきた。
右膝を腕で抱えながらノワールは悶絶している。
「ふぅー、しっ、うぐぐぐぎぎぎぎ!」
「の、ノワールさん!? 痛いなら無理しないで下さい! すぐにヒーリングをかけますから!」
俺は慌ててノワールさんに駆け寄って回復魔法をかけてあげた。
「黙って私の下着を見たこと今回は特別に許してあげるわ」
「ありがとうございます」
「今日は私の依頼を引き受けて事、すごく感謝してるわ。大魔導士のあなたがいてくれるなら百人力ね」
「あはは、名前負けしないように精一杯頑張ります」
「期待してるわ」
「今日はその客船でテトラ島に行くんですか?」
「もちろん。 テトラ島までは船を使わないといけないわ。でも、海の上を走っていきたいなら止めはしないわよ、大魔導士ロイドさん」
「流石にそれは遠慮したいですね。俺もみんなと同じように船を使います」
俺の言葉にノワールはくすりと笑みを浮かべた。
「あまり肩に力を入れすぎない程度にのんびりと頑張りなさい」
「はい」
「二日目、お互いに時間が空いたら一緒に釣り対決しましょう」
「ええ、期待してます」
すると、レラが駆け寄ってきて、ノワールに尋ねた。
「あっ、ノワールさん。今日はクロウリーさんいないんですか?」
「クロウリー?」
「ノワールさんの専属魔導士さんです。先日、魔法を教えてもらったので、改めてお礼を言いたいと思ったんです」
「へー。そうなんだ。なあノワール。その人、いまここにいるか?」
「残念ながらここにはいないわ。最近、王都の方が忙しくなったから、陛下に呼ばれてそちらの対応に出向いたのよ」
陛下に名指しで呼ばれるなんてすごい人だな。俺が思っている以上に優秀なのかもしれない。
そういえばルビーも以前クロウリーがどうとか話してたな。流石に同一人物ではないと思うが一応頭に入れておくか。
「その様子だと、先生はまだクロウリーさんにお会いしてないんですね」
とマルスが意外そうな表情で俺に尋ねた。
その様子だと、二人ともクロウリーと一度会ったことがあるみたいだ。
「ああ、まだな。どんな人だった?」
「先生に似てイケメンでしたよ」
「マルスは人を褒めるのが上手いなぁ……」
「お世辞ですよ」
「わかってるっちゅーねん!」
このエルフ娘は本当に失礼ザマスね!
「ちなみにクロウリーさんは私と同じエルフ族なので、私のような清楚でお淑やかなイメージを持っていただけるとわかりやすいかと思います」
「清楚?」
「お淑やか? すまん、ここではエルフ語じゃなくてメルゼリア語で話してくれないか?」
「がるるるる!」とレラが俺の腕にかぶりついてくる。
「いてえええええ! イラついたからって人の腕を噛むんじゃありません!」
本当にお淑やかな要素が皆無すぎる。
むしろ危険な猛獣だ。
「たしかあの時は無詠唱魔法を教わってましたね」
と、マルスが当時の記憶を思い出すように補足する。
「無詠唱魔法? それはすごいな」
他人に教えられるくらい無詠唱魔法に精通しているのか。
俺よりも優秀なのは確実だろう。だが、世界一の魔導士を目指すと決めたからにはクロウリーにだって負けていられない。
実際にお会いするまでに魔法のレベルをさらに高めていきたいところだ。
「たしかロイドさんは無詠唱魔法が苦手でしたよね?」
「まあ、『先日』までは苦手だったな」
「実は、クロウリーさんに教わって以来、私の無詠唱魔法の成功率は80パーセントになったんですよ☆ ロイドさんがよければ私が無詠唱魔法のコツを教えて……って先日?」
「Bランク昇格試験以来、無詠唱魔法の成功率は100パーセントになったんだ」
俺がそう告げると、レラの影が薄くなって、景色と同化して消えてしまった。
さて、お互いの挨拶も済んだところで、ノワールが本日の予定を俺達に伝える。
依頼書にもあったように今日はモンスター討伐が主で、テトラ島の海岸付近に生息している危険なモンスターを退治する内容だ。
「そんな! 罪もないモンスターを討伐するなんて可哀想!」
すると突然、俺達以外にも参加していたミネルバの冒険者が一人感情的に叫んだ。
えーと、たしかあの人はベッキーだったな。トムと一緒によくいる印象。
どうやらモンスターを討伐する事に猛反対のご様子。
言いたいことはわからんでもないが、じゃあどうしてこのクエストに参加したんだよ、キミ。
というか、危険なモンスターを退治するって部分は完全に無視かよ。
「じゃあなんでお前このクエストに参加したんだよ」
と俺と同様の事を考えたトムが俺の代わりに尋ねた。
「他のクエストよりも報酬が高かったからよ!」
「依頼書の作業内容はちゃんと読んだか?」
「馬鹿にしないで。私がそんなものを読むわけないでしょ。ちゃんとトムが私にクエスト内容を教えなさいよ」
「死ね」
「生きる!」
「あー、すいません。この方の意見は無視してもらって結構です」
トムは呆れながらそう伝えた。
「相方が天然だと大変そうですね、マルス君」
「それは俺達にも言えることだな」
「えー、たしかに私も天然ですが、私はとても優秀じゃないですか」
「自分の事を優秀だってふつう言うか? さっきもマウントに失敗してたし」
「マルス君のいじわるー」
隙あらばイチャイチャするお二人さん。
彼らも平常運転のようだ。
すると、ノワールが咳払いをする。
「こほん。モンスターの権利とかそういうのいいから、私の釣り大会のために近辺のモンスターは全員駆除しなさい。私が許すわ」
「容赦なさ過ぎて草」
「決断が早すぎる」
「経営者として完璧だ」
ノワール的にはモンスターに配慮する気はみじんもないようで、とにかく釣り大会を成立させたいというお考えのようだ。
俺も仕事の時はそういう人権的な考えは一切しないようにしている。
大自然の中では、食うか食われるかの弱肉強食こそ正義だからな。
その後、俺達は客船に乗ってテトラ島に向けて港を出発した。
しかし、港を出向して20分後……。
トラブルが発生してしまった。
「ここウチらの縄張りなんだけど?」
「なんで私達に許可なく勝手に入ってんの?」
「やれやれ、これだから人間さんは……。この領域を通りたいなら私たち《七海隊》を倒してからにしてくださいです!」
船の進行方向を塞ぐ形でカレイドマーメイドが三人現れたのだ。
彼らは水面から顔を出して俺達を睨んでいる。
「あれは……ロイドさんが大好きなカレイドマーメイド!? ほら見てください! 衣装がヒラヒラですよ!」
と、レラが目を丸くして海上の三人を指さした。
「レラ! そんな言い方すると俺が変態みたいに聞こえるだろ!」
「自分に正直になるのは悪いことではありませんよ。自分らしく生きる……それが人生の答え」
「お前は逆に自由すぎるっつーの」
「先生。レラと真面目に会話するのは時間の無駄ですので、適度に流しましょう」
「おっ、そうだな。マルス、たしかにお前の言う通りだ」
「ところで先生。このままでは先へと進めませんよ」
「うーん、俺に振られても困るな。フェルメールの知り合いかもしれないから、《ライトニングストーム》を打ち込むわけにもいかないし……」
俺は腕を組んで彼ら三人の対応を考える。
特になにも思い浮かばないので、すぐ隣にいるボスに尋ねる。
「ノワール。ここはいったん港へと引き返すか?」
「うーん、戻るの面倒からこのまま全速前進しましょ♪」
ノワールは満面の笑みでそう告げた。
「「「ふぁ!?」」」
ノワールの口から飛び出してきた衝撃的な言葉に一同驚愕する。
「さ、さすがにそれはやばいですよ! ぶつけたら完全に人身事故ですよ!」
「はわわ!? ノワールさん。相手は生身ですよ!」
「あはははは! 全然構わないわ! 私の釣り大会を邪魔する輩は全員敵よ!」
「「「ひぇえええええ!?」」」
俺達は慌ててノワールの提案を止めた。
必死の説得のおかげで、このまま船で突っ込んでいく強硬策は取らなくて済んだ。
めちゃくちゃビビったわ。
かわいい顔してすごい恐ろしいこと言うんだもん、この人。
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コミカライズも一話目が連載中なのでぜひご覧ください!




